大川渉著『文士風狂録』
本書は、作家青山光二の“インタビューによる回想録”といった性格の本である。語り手の青山光二は、一九一三年(大正二年)神戸に生まれた。十代後半で文学に目覚め生涯作家活動を続け、二〇〇三年に「九〇歳で川端康成文学賞を受賞した」と話題になった”現役最長老作家”である。一九三三年(昭和八年)、青山光二は神戸二中(現兵庫高校)を卒業、旧制三高(現京都大学)に入学した。三高で織田作之助と出合い、織田の死(一九四七年一月十日)まで親密な交友が続く。青山の名は、織田作之助の評伝等には必ず出てくる。本書は、その織田作之助を冒頭の章に置き、続いて太宰治、坂口安吾、林芙美子、田中英光等戦前から終戦後にかけて活躍した作家の名が並ぶ。殆どの読者にとっては、これらの作家は「過去の人」であろう。しかし、青山光二にとっては、彼等は友人であり、同時代を共に生きた仲間たちである。田宮虎彦も、その中のひとり。田宮は神戸一中(現神戸高校)から青山と同じく三高・東大に進んだ文学仲間。本書の最終章では「五〇年来の友人」として田宮も登場する。焼け跡、闇市、ヒロポン・・・。写真も多く挿入され、時代の雰囲気を濃厚に伝えてくれる好著だ。
(二〇〇五年・筑摩書房・一七〇〇円+税)
本書は、作家青山光二の“インタビューによる回想録”といった性格の本である。語り手の青山光二は、一九一三年(大正二年)神戸に生まれた。十代後半で文学に目覚め生涯作家活動を続け、二〇〇三年に「九〇歳で川端康成文学賞を受賞した」と話題になった”現役最長老作家”である。一九三三年(昭和八年)、青山光二は神戸二中(現兵庫高校)を卒業、旧制三高(現京都大学)に入学した。三高で織田作之助と出合い、織田の死(一九四七年一月十日)まで親密な交友が続く。青山の名は、織田作之助の評伝等には必ず出てくる。本書は、その織田作之助を冒頭の章に置き、続いて太宰治、坂口安吾、林芙美子、田中英光等戦前から終戦後にかけて活躍した作家の名が並ぶ。殆どの読者にとっては、これらの作家は「過去の人」であろう。しかし、青山光二にとっては、彼等は友人であり、同時代を共に生きた仲間たちである。田宮虎彦も、その中のひとり。田宮は神戸一中(現神戸高校)から青山と同じく三高・東大に進んだ文学仲間。本書の最終章では「五〇年来の友人」として田宮も登場する。焼け跡、闇市、ヒロポン・・・。写真も多く挿入され、時代の雰囲気を濃厚に伝えてくれる好著だ。
(二〇〇五年・筑摩書房・一七〇〇円+税)