読書と著作

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本山 美彦著『金融権力 グローバル経済とリスク・ビジネス』

2008-06-28 03:58:06 | Weblog
本山 美彦著『金融権力 グローバル経済とリスク・ビジネス』

本書の著者である本山 美彦(もとやま・よしひこ )氏は、1943年の生まれ。1969年に京都大学大学院経済学研究科博士課程を中退。その後甲南大学助教授を経て1977年に京都大学に戻り経済学部助教授に就任した。1986年には教授に就任、2000年から2002年迄、京都大学大学院経済学研究科長兼経済学部長を歴任する(2006年に定年退職)。専門は、世界経済論。経済学博士(京都大学、1984年)である。現在は、大阪産業大学経済学部教授(京都大学名誉教授)の職にある。『世界経済論』(同文舘出版, 1976年)、『貿易論序説』(有斐閣, 1982年)等が、著者の若き時代の著書。最近は『民営化される戦争 21世紀の民族紛争と企業』(ナカニシヤ出版, 2004年)、『売られ続ける日本、買い漁るアメリカ』(ビジネス社, 2006年)『格付け洗脳とアメリカ支配の終わり』(同、2008年)等やや過激なタイトルで問題意識が強く感じられる著作が目立っている。本書も、この系列の著作のひとつ。2007年以降世界を揺るがせ続けているサブプライムローン問題は、”カネこそが商品”という現在の投機的金融システムには危機と限界があることを、明らかにする。
 本書の冒頭、プロローグの部分で、著者は鋭い口調で格付会社の化けの皮を剥がす。一見、権威あるかにみえる格付会社。しかし、アメリカ証券取引委員会(SEC)のお墨付きである認定格付会社は2007年11月現在で7社しか存在しない。格付会社は、事実上企業の生き死にを決定する権力を持ってしまった。1997年のアジア通貨危機以降、格付会社が欧米以外だけでなく、世界で広汎に活動を展開し始めた。格付会社だけでなく、米国の金融コンサルタント、米国の大手会計事務所、投資銀行、保険会社が日本はじめアジアに進出してきた。これらの各種金融機関等は”人脈”を通じて米国政府ともつながっている。「アメリカを頂点とする金融権力は、世界の経済体制を根底から変えてしまった」(7ページ)。これが本書のタイトルとなった”金融権力”というコトバの由来である。以下は目次。この目次を見れば、著者の問題意識やスタンスを理解できよう。本書の初版発行は2008年4月22日。以後、サブプライムローン関係の傷は深まっていくばかり。原油高、物価上昇、劣悪な雇用環境と一般市民の未来は暗くなる一方。格差社会は増々進み、その代償として(?)”自殺者の増加”や秋葉原、八王子と”奇怪な事件の発生”が続く。

第1章 サブプライムローン問題が示したものーー金融システムの危機ーー
第2章 金融の変質ーー「金融技術」の仕組み
第3章 リスク・テイキングの理論ーーシカゴ学派の論客たち-ー
第4章 新金融時代の設計者たちーーミルトン・フリードマンを中心にーー
第5章 リスク・ビジネスのはてにーー脆弱な金融ーー
第6章 金融権力に抗するためにーー新たな秩序への道筋ーー
主要参考文献/巻末資料
索引
 第6章を少し補足しておこう。この章では、地域と向き合う銀行(バングラディシュのグラミン銀行、日本のNPO銀行)、イスラム金融、ラテンアメリカの「南の銀行」の事例が紹介されている。「カネこそが商品」という考えに基づく現在の投機的金融システムのカラクリを解明し、金融の進むべき方向を著者なりに提示した”熱い本”である。
                                        (2008年、岩波新書、780円+税)


下山事件、三鷹事件、松川事件ー昭和24年

2008-06-23 04:19:37 | Weblog
下山事件、三鷹事件、松川事件ー昭和24年 

杉並区立中央図書館の産業関係の書架に、興味惹かれる本を見つけた。所澤秀樹(しょざわ・ひでき)『国鉄の戦後がわかる本』(2000年、山海堂)である。上下2巻に分かれており、先ず上巻のみを借りた。上巻が対象とするのは終戦の年1945年(昭和20年)から1968年(昭和43年)までである。

1949年(昭和24年)6月1日、運輸省から分離された公共企業体「日本国有鉄道」(略称「国鉄」)が発足した。1878年(明治5年)に、品川ー横浜間の官営鉄道が開通した時は、工部省鉄道掛が運営母体。その後、紆余曲折を経て、1920(大正9年)から1943年(昭和18年)迄は鉄道省が運営母体だった。これが「省線」というコトバの由来である。「国鉄」発足直前まで官営鉄道の時代が続いたということだ。前年12月にGHQ、米国務・陸軍省の共同声明による日本復興の9原則が発表され、マッカーサー元帥から日本国政府に通達された。これが、所謂「経済安定9原則」で、予算の均衡や金融引締を主内容としたものである。官営鉄道を国から分離し合理化をはかる。これが「国鉄」をスタートさせた目的であった。

初代国鉄総裁となったのは下山定則(しもやま・さだのり)。1925年(大正14年)に東京帝国大学機械工学科を卒業して鉄道省に入省した技術畑の人物である。下山総裁の初仕事は、60万人をこえる職員の人員整理。着任間もない7月4日に第1次人員整理として約3万7000人職員削減を発表、労働組合との間に激しい対立を生む。この直後に「下山事件」が起きる。

国鉄労働者の大量首切り計画発表直後の1949年(昭和24)7月6日、初代国鉄総裁下山定則の轢断死体が、東京・足立区内の常盤線北千住ー綾瀬間の線路上で発見された。下山総裁は、前日5日の朝、自宅を専用車で出て日本橋の三越本店に入ったまま行方不明となっていた。政府は当初「他殺と推定される」との見解を発表する。人員整理に反対してストをつづけていた労働者側を暗に牽制したのだ。一方、慶大医学部の中舘久平教授の意見などに基づいて自殺説をとったのが警視庁。捜査を早くに切りあげ、結局政府も自殺説に傾いた。これに対して東大医学部の古畑種基教授は「死後轢断」すなわち他殺説を主張。法医学論争がマスコミをにぎわせ、作家の松本清張は他殺説をさらに発展させ、下山総裁は米軍に謀殺されたと推定、松川事件(後出)などとともに占領軍政下の謀殺事件の一つに位置づけた。この説には同調者も多かったが、下山が自殺であったか他殺であったかは、結局迷宮入りとなってしまっている。下山総裁の死により、加賀山之雄副総裁が総裁代行をつとめ、人員整理は強行される。7月12日には約6万3000人のぼる第2次人員整理を労働組合に通告した。

ところが、その直後に発生したのが「三鷹事件」である。7月15日、午後9時24分、中央線三鷹駅車庫から無人電車が暴走する。車止めを突破、三鷹駅本屋改札口と階段をぶちぬき、駅前の巡査派出所を全壊させ、民家に突入した。駅にいた乗降客6人が死亡、十数人が負傷。国鉄八王子管理部では、人員整理に反対、辞令返上闘争をしていた三鷹電車区の国労の共産党労組員が故意に起こした事故として調査をおこなった。容疑者として竹内景助ら10人が電車転覆致死罪の共同正犯として起訴された。事故を起こしたモハ63形電車は、戦時中の設計で故障が多かった。事故の翌日、吉田茂首相は、最近の社会不安は共産党の宣伝が源、過剰人員整理は国家再建のため必要だ、として共産党を社会不安の扇動者と断定するという発言をする。その直後の7月18日に、国鉄は鈴木市蔵副委員長らの国鉄労組中闘の共産・革同派の14人を免職処分としている。7月21日には、国鉄は9万6千人の人員整理を完了。国鉄労組中闘が分裂し、以後合法闘争を主張する民同派が主導権を握る。一方、三鷹事件被告の竹内景助の供述は単独犯、共同犯と揺らぐ。一審無期懲役、二審死刑、他の9人は一、二審とも無罪。竹内は最高裁で死刑が確定したが、1967年(昭和42年)に再審請求中に病死した。

三鷹事件から約1ヶ月後を経た1949年8月17日。この日の午前3時9分(当時は米軍占領下でサマータイムが実施されていたため現在時刻にすると午前2時9分)頃、福島県松川町を通過中だった東北本線上り列車が、突如脱線転覆する事件がおこった。松川事件である。この事件による死亡者は3人、いずれも列車を牽引していた蒸気機関車の乗務員で、発足したばかりの日本国有鉄道公社(国鉄、現在のJR)の職員だった。事件が起きたのは東北本線松川駅-金谷川駅間のカーブの曲がり鼻の地点。検証の結果、転覆地点付近の線路継目部のボルト・ナットがゆるめられ、継ぎ目板がはずされていた。さらにレールを枕木上に固定する犬釘も多数抜かれており、25mのレール自体、ほとんどまっすぐなまま13mも移動していた。明らかに何者かによる意図的列車妨害であった。増田官房長官は「三鷹事件をはじめ・・・・思想的底流については同じ」と発言。政府は、これらの事件を労働運動弾圧に利用しているとの批判もあった。松川事件でも、多数の容疑者が出て長い裁判が続いたが、結局1961年8月になって最高裁による差し戻し審の結果「全員無罪」の判決が下り、1963年に無罪が確定した。

「主婦の友」終巻に寄せて

2008-06-22 09:00:04 | Weblog
5月10日(土)、雑誌「主婦の友」終刊号(6月号)が発売されていることを思い出し、国分寺駅ビルの紀伊国屋書店で立ち読みを試みる。ところが、無い。店員に聴いてみると「売り切れ!」。

それではと、自宅の最寄駅である西武国分寺線鷹の台駅前の書店(松明堂)で聴いてみると、ここも「売り切れ!」。

午後になって出直し、中央線吉祥寺駅ビルの弘栄堂書店で尋ねると、またもや「売り切れ!」。

続いて、吉祥寺駅北の商店街の比較的大きな書店ルーエでようやくGET!。
立ち読みする予定だったが購入する。定価は税込みで560円だった。原稿料の代わりに貰った図書券で支払う。

本体(実につまらん・・・当然!)はさておき、付録がすばらしい。
別冊付録1 「主婦の友」大正6年創刊号抜粋
別冊付録2 「主婦の友」91年にみる大正、昭和、平成「暮らしの知恵」総集編

この付録は、次の原稿を書く時のネタとして有用だ。「椎名誠と「主婦の友」終巻号」といったテーマで5000円から1万円ぐらいの原稿料は稼げそうだ。

先頃終刊号を出した「主婦の友」。その創刊は、1917年(大正6年)2月のことである。以前、この雑誌のデータベース化(タイトルと広告)を少し手伝ったことがあり、多少の資料を所有している。それらは「主婦の友」という名称のファイルとして我が書棚に収まっている。

このファイルのなかの”珍品”をご紹介しよう。これは、創刊当時の「主婦の友」に掲載されたコーヒーの広告に書かれていたものである。

鬼の如く黒く
恋の如く甘く
地獄の如く熱き
コーヒー

広告主は株式会社カフェパウリスタ。南米ブラジル国サンパウロ州政府専属コーヒー発売所という肩書きが付されている。東京に卸小売部、焙煎所、喫茶店(広告では”喫部”と表示)があるほか、神戸、大阪(建築中)、名古屋に支店や喫茶店を持っていたようだ。

それにしても、コーヒーを売り込むための宣伝コピーとして、上記の文章は極めて斬新、モダンでかっこいい。こんなコピーを考えだしたのは、いったい誰だろうか。多くの人は、そう思うに違いない。大正時代にしては、随分しゃれた広告コピーだと思うのが、一般的な感想であろう。私も「流石、モボ、モガの時代」と感心したものだ。

ところが、この広告コピーには、オリジナルがあることが判明した。

悪魔のごとく黒く
地獄のごとく熱く
天使のごとく清らかにして
恋のごとく甘きこと

これがオリジナルの文である。原文はフランス語。私の手元にある(注)が、それは省略しておく。
このフレーズは、フランスの外交官タレーラン(1754ー1839)のもので、”コーヒーはこうあるべき”として、「悪魔のごとく・・・」ということを述べたそうだ。

(注)神戸にあるUCCコーヒー博物館から提供を受けた。この博物館は一見の価値あり。

武田竜弥編著『日本全国 産業博物館めぐり』

2008-06-13 00:05:20 | Weblog
武田竜弥編著『日本全国 産業博物館めぐり』

本書の編著者である武田竜弥(たけだ・たつや)氏は、名古屋工業大学工学研究科準教授。本書は、編著者に全国の10人執筆者が参加して出来上がった。”産業観光”、”産業博物館”をテーマとしたユニークな著作である。しかも、”新書”の体裁をとっているので、低廉な価格で全国の主要な産業博物館にアクセスすることができる。
本書は、タイトルが示すとおり、観光ガイドブックとしての性格を持つ本である。日本政府では、"観光立国”をスローガンにして、地域の観光資源の掘り起こし、広報・アクセス手段の改善などに様々な施策を進めている。そのような中で、「わが国の特性を生かす新たな観光のあり方」として注目を集めているのが、”産業観光”である。”産業観光”とは「産業に関する施設や技術等の資源を用い、地域内外の人々の交流を図る観光」とされている(2003年発表の「観光立国行動計画」)。具体的には、工場見学やモノづくり体験、あるいは過去に使われた機械や建造物などいわゆる産業遺産の見学を柱とする観光が、これに当てはまる。中でも産業に関わる資料を系統的に収集・保存・展示する”産業博物館”は、”産業観光”の目玉ともいえる。”産業博物館”の面白さは、何よりもまずその地域性にある。釜石の鉄(岩手)、配置売薬(富山)、灘の酒(兵庫)、赤穂の塩(同)など、多くの伝統産業にはそれを生み育てた地域の個性が集約されている。地域の発展を支え、またそれとともに成長していった企業の歩みも同じである。開拓使麦酒醸造所をルーツとするサッポロビール(北海道)、常滑焼の伝統から生まれたINAX(愛知)、社名に地域発展の願いを込めたグンゼ(京都)、それらのあゆみには地域と企業の結びつきを物語る様々なエピソードが凝縮されている。産業という切り口から見えてくる地域の営みとその中で培われてきた感性に触れる。このことは、一般の科学博物館とは違う、”産業博物館”ならではの楽しみといってよかろう。
本書は、そんな「面白くてためになる」全国の産業博物館から94館を選び、その概要を関連する産業史や企業史とともに紹介したものである。博物館の選定に当たっては、できるだけ多くの地域や業種を取り上げること、それぞれの地域に根ざした産業を重視することが心がけられてできあがった。
例えば、損害保険業界に極めて関係が深い自動車産業について、本書をながめてみよう。北から南まで、自動車に関係の深い博物館をリストアップすると、次のようになる。

北海道  男爵資料館(注)
東京   物流博物館(トラック輸送等)
愛知   産業技術記念館(トヨタグループゆかりの繊維・自動車)
愛知   トヨタ博物館
広島   マツダミュージアム
(注)食品主体の博物館であるが明治時代に輸入された蒸気自動車が展示されている。

この他、自転車(大阪)、鉄道(埼玉、東京)、造船(東京、広島、長崎)等交通関係の産業博物館が収録されている。インスタントラーメン発明記念館(大阪)、グリコピア神戸(兵庫)等は、子供連れで行くと楽しそうだ。もちろん、酒、ビール、ワイン、焼酎の産業博物館も登場している。

(2008年、PHP新書、860円+税)

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日本ペンクラブ編『災害と文化 - 叫ぶ、生きる、生きなおす -』

2008-06-10 20:54:47 | Weblog
 日本ペンクラブ編『災害と文化 - 叫ぶ、生きる、生きなおす -』(保毎用、インシュアランスの後)

ミャンマーのサイクロン、中国四川省の大地震等、超大規模の自然災害が地球を襲っている。この2つの巨大な災害発生の直前、今年の2月22日(金)から25日(月)にかけての4日間、東京・新宿の全労済ホール:スペースゼロで『世界P.E.N.フォーラム「災害と文化」- 叫ぶ、生きる、生きなおす -』が開催された。主催は日本ペンクラブ(阿刀田高会長)。このイベントは、国際ペンが後援、全労済が特別協賛し、国際交流基金、全日本社会貢献団体機構が協賛している。日本ペンクラブ会長はじめノーベル賞作家大江健三郎(基調講演)等多数の会員が講師や朗読者として生出演した。また、中国、米国、インドネシア等海外からの参加者も多く、”国際シンポジウム”の要素もプログラムの重要な核となっている。期間中は、講演、小説・詩の朗読、映画上映、音楽演奏、朗読劇等多彩な催しものが目白押し。その概要が、このたび1冊の本にまとまり、日本ペンクラブから刊行された。以下は、その目次である。

1. はじめに
 日本ペンクラブ「災害と文化」企画実行委員会
 「人と災害、社会と自然環境のあらたな展開を切り開くために」
2. 挨拶
 日本ペンクラブ会長 阿刀田高 「なぜ災害と文化なのか?」
 全労済理事長 石川太茂津 「次の50年に向けて」
3. 基調講演
 大江健三郎 「意識的な楽観主義」に向けて
4. 俳句と短歌
 阪神淡路大震災を詠む
5. 朗読劇「リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン」
 井上ひさしへの電話インタービュー
6. 映画「そして人生はつづく」
 アッバス・キアロスタミ監督からのメッセージ
7. 小説
 出久根達郎「安政大変」台本
8. エッセイ
 クワイユーン・ルークジャン「黄金色の女たちの石」台本
9. 小説
 劉震雲「温故1942」台本
10. ライブ・コンサート
 新井満「傷心癒すも自然」(エッセイ)
 吉岡忍「カトリーナ後の街とミュージシャンたち」(紀行)
11. ドキュメンタリー映画「生命」解説
12. 小説
 アルバート・ウェント「サラブレッドに乗った小悪魔」台本
13. 小説
 立松和平「浅間」台本
14. 小説
 リンダ・クリスタンティ「スルタンの杖」台本
15. エッセイ
 高田宏「火山列島に生きる」台本
16. 出演者及び制作関係者一覧

今般刊行されたのは、このイベントを集大成した冊子。邦文135ページに、英文の抄録25ページを加えてられている。本書の総てを紹介する訳にはいかないが、例をあげてみよう。イベントの初日には、阪神淡路大震災を詠んだ俳句や短歌を舞台で紹介した。先ず俳句について紹介してみよう。選者の黒田杏子(くろだ・ももこ)は、あらかじめ『阪神大震災を詠む』(1995年、朝日新聞社)、『悲傷と鎮魂ー阪神大震災を詠む』(1995年、朝日出版社)、『現代俳句の展開 俳句阪神淡路大震災』(1998年、現代俳句協会)等多数の関連文献を読む。その中から15句を選んでいる。以下は、その抄録である。これらの作品は下重暁子(アナウンサー、エッセイスト)により朗読された。

マスクして即死の額囲みたる  宇多喜代子
白梅や天没地没虚空没      永田耕衣
人小さく凍てて地の揺れ思ふまま  桂信子

今般のイベントは”国際的”なものである。中国の作家・劉震雲による作品『温古一九四二』は、日中戦争の最中、中国河南省を襲った大旱魃、とその前年のイナゴの大発生。戦争で混乱していた中国。河南省では人口3000万人のうち300万人が餓死するという悲惨なものであった。劉震雲は、当時の新聞報道を丹念に追い、被害の状況をルポしている。

本書は、日本ペンクラブ宛注文すれば入手可能。
【申込方法】
ゆうちょ銀行(郵便局)備え付けの払込用紙(青色)にて、通信欄に「ブックレット希望」と明記に上、以下の口座まで払込む。入金が確認され次第、払込用紙記入のご住所宛に送られる。払込手数料は、申込人が負担。
○(郵便振替口座番号) 00190-3-22767 (郵便振替加入者名) 社団法人 日本ペンクラブ
【価 格】
1冊1580円(送料・税込)