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続・年金分割:やっぱり「離婚手続」に大きな影響が・・・

2006-07-31 | オボエガキ
(8.2 一部訂正しました。)

先日のエントリ「」の続きです。「離婚時の年金分割制度」について、さらに詳しく資料を読み込んでしました。

まず、離婚時の年金分割制度のおさらいから。一般には「年金分割」と呼ばれていますが、ここで分割される年金とは「厚生年金」や「共済年金」の「報酬比例部分」が対象となります。基礎部分である国民年金は分割の対象とはなりません。(以下、単純に「年金」と言います。)

また、今回議論となっている「年金分割」には次の2種類あることをご理解頂きたいと存じます。

○離婚時の厚生年金分割制度(平成19年4月施行、以下「通常分割」といいます)
○離婚時の「3号被保険者期間」にかかる厚生年金分割制度(平成20年4月施行、以下「3号分割」といいます。)


さて、ここからは資料を読み込んで気づいた重要点について整理します。

まず第1のポイントは

○年金分割を受けるためには請求が必要

という点です。特に、「通常分割」を行う場合には、離婚する当事者間で「按分割合」について合意するか裁判手続による決定が必要とされています。このことは、パブリックコメントの募集案内ページにある制度説明資料にも次のように記載されています。

2.離婚分割制度の基本的な仕組み


「離婚時の厚生年金の分割制度」や「離婚時の第3号被保険者期間についての厚生年金の分割制度」とは、いずれも、離婚することによって、自動的に「年金額」が分割されるものではありません。
(中略)

5.標準報酬額の按分割合


婚姻期間中の標準報酬額をどのように分割するかは、離婚する当事者間の合意又は裁判手続により定められた「按分割合」によって決められます。離婚する当事者は、この按分割合をもって社会保険庁に対して分割改定の請求をすることにより、婚姻期間における離婚する当事者それぞれの標準報酬額が分割・改定されます(これを法律上「標準報酬分割改定」といいます。)。離婚することにより、当事者それぞれの標準報酬額が自動的に分割される訳ではありません。
(前述資料より一部改変、傍線は筆者による)


以上のように、「通常分割」の場合には厚生年金の分割を受けるためには、社会保険庁(実際には社会保険事務所)に「分割改定の請求」を行う必要があります。

なお「3号分割」の場合は、離婚する当事者のどちらか一方からの請求(つまり、3号被保険者となっていた側だけ)があれば、婚姻中に3号被保険者だった期間について、2分の1の分割が受けられるようになります。(但し、後述する「対象となる期間」について十分な注意が必要です。


また、第2のポイントは「通常分割」の際の分割改定の請求には、「公正証書か公証人の認証を受けた私署証書が必要となる点です。

先にも紹介したとおり、「通常分割」の場合には、離婚する当事者の双方の話し合いか裁判手続によって「按分割合=どのような割合で納付分の年金を分け合うか」を決めます(ただし、法律で制限があり、「それぞれが納めた分ずつ」から「二人で半々に分け合う」までの間で決めなければなりません。)。そして、分割請求の際にはこの「按分割合」を定めた書類を提出しなければならないとされています。

ここで、前述の資料を確認すると「按分割合を定めた書類」として認められるものは以下のものとなっています。
按分割合については、当事者間の合意又は裁判手続により定めることになりますので、実際に分割改定の請求をする際には、社会保険庁に対して按分割合を明らかにしていただく必要があります。具体的には、按分割合が記載された次に掲げる書類を社会保険庁に対して提出していただく必要があります。
(1)公正証書又は公証人の認証を受けた私署証書
(2)按分割合を定めた確定審判の謄本又は抄本
(3)按分割合を定めた調停調書の謄本又は抄本
(4)按分割合を定めた確定判決の謄本又は抄本
(5)按分割合を定めた和解調書の謄本又は抄本
なお、公正証書又は公証人の認証を受けた私署証書については、按分割合のみならず、分割改定の請求についての当事者間の合意が記載されていることが必要であり、また、審判又は判決については、これらが確定した審判又は確定した判決であることが分かる書類を添付する必要があります。


このため、「通常分割」を受けようとするのであれば、協議離婚であれば「公正証書」の作成を行う必要があり、調停離婚であれば「調停調書」へ按分割合の記載を求めなければならないということになります。

また、第3のポイントとして「通常分割」と「3号分割」が影響を与える対象期間の範囲の違いが上げられます。

「通常分割」では、施行日(平成19年4月)以前の婚姻期間についても、按分の対象とすることができます。しかし、「3号分割」の場合には、「3号分割」は施行日である平成20年4月以降の婚姻期間部分しか部活の対象期間とはなりません。

したがって、現在夫がサラリーマンで妻が結婚後ずっと専業主婦であるような場合で、たとえ平成20年4月以降に離婚したとしても、「3号分割」では平成20年4月以降の1年分だけしか2分の1分割を受けられないため、平成20年3月前の期間について分割を受けようとするなら、結局「通常分割」の手続を行わなければならないことになります。

これをまとめると、現時点で結婚している人が離婚後に年金分割を受けようとするならば、相手方との協議 or 調停 or 裁判が必要になる ⇒ 「年金分割」が離婚時の交渉材料として使えてしまうといえるのではないでしょうか?現在はまだ「省令案」の段階ですが、このまま省令として成立した場合には、個人的な意見としてはかえって離婚時の「揉める要素」が増えてしまう結果になりかねないのではないかといささかの危惧を覚えます。

なお、離婚後の「通常分割」で按分できる年金額は、個々のケースで年金加入状況が異なるため相当慎重な計算を必要とします。このため、社会保険庁では平成18年10月より「必要な情報の提供」を行うとしています。

この情報提供の請求は、離婚したいと考えている当事者のどちらか一方からでも請求できるとされていますが、現時点では提供する情報は、請求した本人のみならず、他方の離婚当事者に対しても通知されることになっており、相手方に“交渉の手の内”を知られる危険性があります。したがって、この点についてもこのまま省令が成立した場合には十分な注意が必要となると思われます。(8.2訂正しました。詳しくはこちら)

この「離婚時の年金分割」につきましては、当事務所でも積極的にご相談に応じさせていただきたいと思っております。社会保険労務士は、他の士業同様「法律上の守秘義務」を負っており、また、当然のことながらご相談内容を他に漏らすということは決してありません。

離婚時の年金分割についてご不明点やご質問のある方は立石智工事務所 メールホットライン(info@awingms.jp)までお気軽にご相談ください。(一般論の内容であれば、このブログへのコメントでのご質問でもお答えいたしますのでお気軽にコメントをお寄せください。)


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