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報道に見る:村上氏の『置き手紙』

2006-06-05 | イッポウ
今日はニュースに驚かされる一日でした。

他のブログでも既にエントリが上がっていますが、“MACアセットマネジメント”の村上氏が、ライブドアのニッポン放送株取得に関連するインサイダー取引の疑いで逮捕されました。

また、もっと驚きだったのがその前に行われた村上氏の会見。会見が行われるにせよ「強気の反論」をイメージしていましたので、あたかも「降伏」のような印象を受ける会見が行われるとは思ってもいませんでした。

これらの一連の動きは既に各メディアで報道されていますが、その中でも毎日新聞が早い段階でまとめた「会見の要旨」が私の目を引きました。

村上ファンド証取法違反疑惑:インサイダー認める(その2止) 「業界の憲法破った」

なお、この会見の内容については、村上氏個人名で出されたリリースでも同様の内容が確認できます。

さて、この問題については既に多くの法律・会計系ブログにて取り上げられており、それぞれ分析が行われています。「インサイダー取引」の刑罰としての法的構成要件や、実務への影響などについては、以下のエントリをご覧頂ければ大変よく理解できるのではないかと存じます。

村上氏、インサイダー取引認める(どうなる、投資実務の今後?)(isologue)
村上氏が残すもの(ふぉーりん・あとにーの憂鬱)

村上氏に違法性の認識はあるか(3)(ビジネス法務の部屋)

今回の一連の動きを見て、私は村上氏のリリースにある以下の文章に注目しました。


しかしながら、上記のライブドアによる株式取得の意向は、証券取引法167 条、同法施行令31 条に規定するインサイダー情報としての5%以上の株式買い集め行為についての決定であると解釈されるものであり、このような情報を知った以上は、MAC アセットマネジメント社の実質的なオーナーであり、非常勤取締役である私は、同社によるニッポン放送株式の買付けを停止させる義務がありました。
(傍線部は筆者による)

この文章に含まれる「解釈されるものであり」という部分は、たった10文字のことですが大変深い意味を持っています。この解釈はもともと検察が行っていたものであり、少なくとも上記でご紹介したエントリをはじめ、法律・会計系の各種ブログを見比べている中では「議論の余地がある部分」と思われる部分でした。それをあえて受け入れてしまった今回の村上氏の発言・行動は、表面的に見れば「あれっ」と思わざるを得ないかなと感じます。

このような「受容」という行動の真意がどこにあるかは正直言って分かりませんが、自分なりになんとか解釈してみると、次のような仮説が立てられるかな?とは感じます。

【仮説1】争うリスクを避けて『実』をとる作戦
村上氏も会見で発言しているようですが、裁判で争うとなると大変長い期間にわたって拘束を受けることになり、勝算にも不透明な部分があります。
このため、あえて争わずに短期間で決着をつけることで、自分自身が次のステップへ進みやすくしようとしているということが考えられます。
さらには、あわよくば「起訴猶予」などという方向性も考えているかも知れません。

【仮説2】「判例」となることを避けた
今回の動きがこのまま続くとすれば、裁判の場面でも先ほどのような論点を「争点」として争うものにはならないと考えられます。つまり、「裁判上の先例」にはならないことになりますので、後から続く人たちへ道を残すことに繋がります。つまり、大変良く解釈すれば、「後に残る人たちの悪しき前例を作らないように、自ら泥をかぶった」・・・なんてことはないでしょうか?

【仮説3】実は『日本(の市場)』を見限った
一方実際問題として今回のケースが「実務上の先例」となるとすれば、M&Aやファンド運用上の実務は大変な混乱をきたすことが予想されています。それを見越した上で、「だったら、好きにすれば」というような形で、あたかも『置き手紙(最後通牒?)』のように今回の会見・リリースを行ったということも考えられます。


今後注目したいのが、裁判所の判断です。刑事裁判の流れは十分理解していないのですが、今回のように「本人が事実を認めている場合」で「犯罪の構成要件に該当するかどうか争いがない」場合であり、さらに「犯罪の構成要件に該当するか否か少なくとも論点になりうる」といった場合に、裁判ではどのような判断が行われるのか大変興味深いところです。

元経済産業省の官僚であった村上氏であれば、日本の「構造」というものを嫌というほど知っているのではないかと思います。これをあわせ考えると、今回の村上氏の会見やリリースは、実は村上氏が残した『日本への三行半』であるような気がしてなりません。個人的には、これが『海外投資家から日本へ突きつけられた三行半』とならないことを祈っています。


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