コンサルタントのネタモト帳+(プラス)

ビジネスにも料理にも役立つ“ネタ”が満載!社労士・診断士のコンサルタント立石智工による経営&料理ヒント集

どっちを手にとりますか?

2005-10-28 | マーケティング


名古屋市内でタクシーに乗車したときに、ふと助手席の後方が目にとまりました。というのも、珍しくも「冊子広告」が設置してあったからです。

この「冊子広告」、写真の2つがお行儀よく並んでいました。同一サイズで似た感じのデザインイメージです。しかし、この二つでは、「手にとらせる力」が全く異なるのです。さて、あなたならどっちを先に手にとりますか?

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私は、左側の「ヤカンの絵」の方を先に手にとりました。

この2冊の大きな違いは「キャッチコピー」にあります。この2つのキャッチコピーは、単に表現にとどまらない「大きな意味の違い」が隠されているのです。

私が選んだ左側「ヤカンの絵」のキャッチコピーをもう一度読み返してみてください。「週に2回以上社員を怒鳴りつける経営者の皆様へ」とあります。これは「アナタの日々の行動という事実」に対して呼びかけています。このような「事実」に訴えるキャッチコピーは、ひとたびはまれば「強い共感」を呼び起こします。すると、「読んでみようかな?」というキモチが一気に湧き上がり、手にとってもらいやすくなります。実際、この例では、ある程度の社員を抱える真剣な経営者であれば、「週に2回以上社員を怒鳴りつける」こと等は「よくあること」でしょうから、非常に「共感を起こさせやすい」メッセージとなっています。さらに「あなたのことが書いてあります」と追い討ちをすることでより一層興味を持たせ、冊子を手に取らせる力を高めているのです。

一方の「紙頼み」はどうでしょう?ここでは「アナタが持っているであろう悩み」に対する「理由(=答え)」を正面から断定的に提示しています。しかし、この場合は予め「同じ答え」をココロの中に持っていなければ、「本当~?」と懐疑的な感情を持たせかねません。共感が起きるためには「2者が同じことを想う」ことが必要となります。しかし、考えというのは「肯定しながも否定できる」というきわめて曖昧なものであるため、よほど波長が合わなければ相手との想いを重ね合わせることなどは極めて難しいでしょう。そうすると、このようなメッセージでは「共感を呼び起こす」ことは困難である、従って行動にも移りにくくなるといわざるを得ません。

誰かに何かをしてもらうためには、「その人自身が納得できる=理由付けできる」ことが必要なことはお分かりいただけると存じます。そして、その最初のステップが「“共感”という鍵で“ココロの扉”を開く」ことなのです。

たった数十文字というキャッチコピーで「共感」を呼び起こすためには、はじめに「あなた、こうですね」と「同意できる(=否定しがたい)事実」を示すということを強く意識することがポイントです。相手の立場にたって想像力を働かせ、相手が「そうだよね~」
と思えることを見つけられれば、もうシメタものです。それを「端的な表現」で表せば、素敵なキャッチコピーが生まれるでしょう。

ちなみに、このことを最も活用している世界、それは「お笑い」です。典型的なのは「あるあるネタ」と呼ばれるものでしょう。今ブレイク中のお笑いコンビレギュラーの「あるある探検隊」ネタは、思わず「あるある!」と叫んでしまうような「見に覚えのあること」を示すことで、まさに共感を与え、さらには”笑い”まで転化させているのです。