知るということ(2021.5.27日作)
茶の湯など 様々な習い事で
型から入って 基本を学ぶ
型によって 日常生活で身に付いた
汚濁 染み 汚点 などを払拭して
その ものの 本質に到達する
だが 到達した その型に拘り
囚われていては いけない
型にこだわり その型に止(とど)まっている限り
本物 とは言えない 繰り人形 にしか過ぎない
身に付けた型を 脱ぎ捨てる 型を超え
ものの 本質を捉える それが
出来た時 習った事が
身に付いた 自身のものになった
と言える
宣言 出来る
人間は 自分の思考の範囲内でしか
動けない
知ったかぶり 物知り顔 必ず
ボロが出る 人としての
品格を貶(おとし)める
物知り顔は 損得 損の
愚かな行為
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白い霧の夜(1)
白い霧が一面に北の街を覆っていた。
篠田次郎は霧の中に海の匂を嗅いだように思った。
遠くで霧笛が鳴っていた。
一メートル先は霧に閉ざされた白い世界だった。
時折り 光りの眼玉を浮かび上がらせてのろのろと車が現れては、また、霧の中へ消えていった。
この通りが北の街のメインストリートであるのを篠田は知っていた。
歩道には大きなプラタナスの美しい並木が続いているはずだ。
霧の中ではそれも見えなかった。
篠田次郎は少し、酒に酔っていた。
O市主催のシンポジューム「都市の現状と未来」に出席したあと、招待された料亭で注(つ)がれるのをいいことに飲み過ぎていた。
「編集長、車でお送り致しましょう」
主催者側の男が申し出るのを篠田は断った。
「いや、二十六年ぶりに来た北の街です。少し歩いてみましょう」
篠田の他に東京から来た二人の出席者は、仕事の都合で会場から直接、K空港へ向かった。
篠田も初めはそうする心算でいた。
それがそうならなかったのには訳があった。
今日の午後、空港に降り立って一歩街へ出た時、篠田は思い掛けない北の街への懐かしさに捉われていた。篠田にしてみれば思い出したくもない過去であったが、その過去が何故か、会場へ向かうタクシーの中でしきりに浮かんで来ては篠田の心を郷愁へと誘った。
篠田の意識の中に浮かんで来ては消えない、郷愁の因(もと)となるその女性の名は敬子と言った。
篠田は、その敬子との恋を彼女の父親に「身の程を知れ !」と罵(ののし)られ、野良犬のように追い払われて断ち切られていた。
その時受けた心の痛手で篠田は大学生活も途中で捨てて、東京へ走っていた。
女性は、このメインストリートのはずれ、港の入口近くにある料亭<香月>の長女だった。実家が貧しかった篠田は<香月>でアルバイトをしながらの学生生活を送っていた。
東京へ出てからの篠田は様々な職業を転々としながらも、今では著名な出版社の看板とも言える雑誌の編集長という立場に身を置く事が出来るようになっていた。その間、二十六年、篠田は苦い思い出を避けるように過去に思を馳せる事もなく生きて来た。
そんな篠田だったが、こうして久し振りに北の街へ来てみると二十六年という歳月は、二十一歳で失った恋の痛手も、その時味わった苦い思いも、総て、遠い彼方へと押しやっていた。思い掛けない懐かしさだけが篠田の心を掴んで来た。
篠田は霧の中で立ち止まった。
霧に滲む街灯の明かりだけが頼りの歩行には、思いの外の困難が伴った。
酔いのために覚束ない足取りの篠田は疲れ果てて、ホテルに宿を取る事だけを考えていた。深い眠りが欲しくなっていた。
<香月>のある辺りへは、明日にでも行ってみようと考えた。
敬子に会いたいとは思わなかったが、その消息だけは気になった。
幸福な結婚生活を送っているのだろうか。
長い歳月を経た今でもなお、評判だった美貌は衰えていないのだろうか。
篠田は不意に可笑しくなって笑い出しそうになった。
奇妙に感傷的なっているのは、酔いのせいなのか、それとも、この深い霧のせいか。
篠田はホテルへ向かうはずの足を止めたまま、ポケットから煙草を取り出した。
奇妙に感傷的になっている心を鎮めたかった。
深い霧の中で何度も搔き消されそうになるライターの火をようやく煙草に移すと、大きく吸い込んで一気にその煙りを吐き出した。
気を取り直すと再び歩き始めた。
篠田は何度か眼を瞬(しばた)いた。
白い霧の彼方にぼんやり見えるのはなんだろう ?
こんな所にホテルがあるはずはない。
それとも自分が居ない間に新しく出来たのだろうか ?
深い霧の中に見える明かりはなんとなく、自分を誘っているように思えて篠田は興味をそそられた。
篠田はゆっくりと近付いて行った。
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takeziisan様
有難う御座います
毎度ながらの美しい山々 風景写真堪能しました
それにしても方々の山々 よくお歩きなっていらっしゃいます
今では 良い思い出なのではないでしょうか
わたくしなども地方へ旅した折りの 美しい自然の景色を
懐かしく思い出す事がありますが 残念ながら
山旅の経験はないのです 危険な登攀 見ている方が心配になりますが
本人にしてみれば それ程とは思っていないのではないか と思ったりしています
それにしても自然に咲き誇る草花の美しさ 山旅をする方々は
この美しさにも惹かれるのでしょうね
インゲンマメ一本 傑作
雑草は本当に困りもの 根競べですね
「あさはんまえ」「かいど」
東北 北陸 あちら方面の言葉には何処となく 優しい響きが込められています
関東の人間にはちょっと分からない所もありますが
その響きは好きです 憧れに近いものがあります
「青い鳥」何処にも居るのに気付かない
それが本当の幸せなのかも知れません
「青い鳥」を求め続ける生活 辛い日常なのではないでしょうか
カントリーソング 懐かしいですね でも なんだか
みんな遠い過去になってしまったような気がします
今回も美しい写真 楽しい言葉や風習 楽しませて戴きました
有難う御座います
桂連様
新作 拝見しました
トランプ 困ったものです 世界がおかしくなったのも
トランプのせいではないかとわたくしは思っています
あの男が出て来て 滅茶苦茶にした 今でもよく思うのですが
何年か前の選挙でもし クリントンさんが勝っていたら
今 世界はどうなっていたのだろう としばしば考えます
もっと世界の秩序は保たれていたのではないか
トランプの悪人ぶりが酷くなればなるほどもっと好きになる
言い得て妙です
それにしても こちらではトランプの再登板があるのでは
などと言う声も聞こえて来たりします 他所の国の事ながら
わたくしは本気で心配しています
どうか そんな事の無いようにと願わずにはいられません
二つのコメント 有難う御座います
前作の死の謎 分からない 作者にも分かりません
海に異変が起きた事や 見知らぬ男が何処かから現れ
遂には死体となって浮かんでいた事 ここに何か関係があるのか
そうです 想像して戴くより他ありません
お読み下さる方が 男が来た事と海に異変が起こるようになった
その間の関係を自由に想像して下されば それが作者の望むところであり
狙ったところでもあります あとはお読み下さる方が物語を作って戴ければと思います
その為 最終行に語り継がれる伝説と書き添えてあります
伝説にはしばしば 想像裡にその物語を理解するよりほか仕方がないものが
数多くあります
そこを狙いました
ハチャメチャジョーク
笑いました ここに拝見する旦那様のお姿 つくづく
良い方なのだと思わずにはいられません お二方の
お幸せそうな日常が想像出来ます
それにしても何かの世界で抜きん出た人の中には
ジョークの好きな人が多いようです
日本のテレビ番組などでも その道の一流と思われる人達がしばしば
愚にもつかないジョークを連発しているのを見ると
その人達にとっては そんなジョークも日頃の緊張した時間の中の
束の間の息抜きなのかとも思ってしまいます
旦那様もお忙しい時間をお過ごしの御様子 そうしたジョークで束の間の
息抜きをしているのかも知れません
それをバカバカしいと相手にもしない御様子の桂連様の御様子もまた眼に浮かんで来て
思わず笑い出しました
楽しいコメントでした
車で二時間 アメリカの広さを実感させられます
日頃 映画で観ている世界そのままですね
お忙しい中 どうぞわたくしのこの文章も軽く
読み流して戴ければ結構ですので 余り お気遣いのないように
お願いします
何時も楽しいコメント 有難う御座います