MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『癒しのこころみ~自分を好きになる方法~』

2020-07-21 00:46:33 | goo映画レビュー

原題:『癒しのこころみ~自分を好きになる方法~』
監督:篠原哲雄
脚本:鹿目けい子/ますもとたくや/錦織伊代
撮影:長田勇市
出演:松井愛莉/八木将康/水野勝/中島ひろ子/秋沢健太朗/橋本マナミ/渡辺裕之/藤原紀香
2020年/日本

スル―されてしまう「トラウマ」について

 主人公の一ノ瀬里奈はCM制作などをてがける広告代理店に就職したものの、激務の上にパワハラに遭い辞職してしまい、その直後に転職フェアで出会ったカリスマセラピストの鈴木カレンの施術を受けたことでセラピストになるのだが、わずか一ヵ月の研修で現場に出るあたりから怪しくなってきて、職場で改めて教えて貰っているような有様なのである。
 一ノ瀬の施術を受けた碓氷隼人はかつて千葉ロッテマリーンズの一軍選手で、頭部にデッドボールを受けたことがトラウマになり戦力外になりプロを目指しながらバッティングセンターで子供に野球を教えているのだが、自ら指名したにも関わらず一ノ瀬の施術に文句をつける。
 碓氷の奇妙な言動はさらにあり、在日米軍チームに頼んで碓氷は自分のバッティングを見てもらうのであるが、初球をヒットして二球目にデッドボールを受けながら三球目はホームランにしてしまい、とてもトラウマを持っているようには思えない。
 碓氷に叱責された一ノ瀬は何としてでも碓氷に認めてもらおうと碓氷を鈴木カレン主催の「森林セラピー」に誘うのであるが、ただ富士山麓あたりの森林を巡るようなもので、セラピーを受けているような感じがしない。
 やがて「トライアウト」のようなものを受けて、四国の独立リーグに誘われた碓氷は家族と共に引っ越すのであるが、「トライアウト」にしては一球で決まってしまい簡素過ぎるのである。
 それではこの作品は何の話なのか勘案するならば、実は碓氷の「トラウマ」ではなく、元の職場で上司からパワハラを受け、さらに碓氷から仕事を否定された一ノ瀬自身の「トラウマ」からの回復が描かれているのではないだろうか。
 藤原紀香が真剣に演じれば演じるほど却ってその一挙手一投足が可笑しくなって仕方がないのだが、それはもちろん藤原の責任ではなく友近の責任ではあるが、明らかに下手な演出だから新人監督が撮ったのかと思ったら、最後のクレジットに監督としてベテランの篠原哲雄の名前を見つけた時には本当に驚いた。脚本に口出しできない契約でもあったのだろうか?


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『誰も知らない』

2020-07-20 00:58:08 | goo映画レビュー

原題:『誰も知らない』
監督:是枝裕和
脚本:是枝裕和
撮影:山崎裕
出演:柳楽優弥/北浦愛/清水萌々子/木村飛影/韓英恵/加瀬亮/平泉成/YOU
2004年/日本

ベテラン映画監督の「熟練度」について

 久しぶりに本作を観てみたのだが、是枝裕和監督のベースとなるドキュメンタリータッチの演出方法は変わらないとしても、2018年に公開された『万引き家族』と比べると明らかに違いがあって、やはり『万引き家族』の方が脚本がしっかりとしているという印象を持ったのだが、それはもちろん優劣の問題ではなく、14年という月日を経た監督の熟練の問題であろう。
 本作の元となる題材は1988年に起こった事件で、さすがに2020年にこのような事件が起こるということは考えにくいとしても、やはり現代社会においても「誰も知らない」、人の目が行き届かない部分は必ずあるとは思う。


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『MOTHER マザー』

2020-07-19 23:49:44 | goo映画レビュー

原題:『MOTHER マザー』
監督:大森立嗣
脚本:大森立嗣/港岳彦
撮影:辻智彦
出演:長澤まさみ/奥平大兼/夏帆/皆川猿時/仲野太賀/土村芳/木野花/阿部サダヲ
2020年/日本

リアリズムのジレンマについて

 主人公の三隅秋子は息子の周平が小学5年生頃までは、別れた夫からの月五万円の養育費や両親と妹の援助で生計を立てていたが、秋子に働く様子が見えず貸した20万円を返さずにさらに借金しようとしたことで家族と縁を切られてしまい、ゲームセンターで出会った川田遼と同棲を始め、市役所勤務で秋子の生活の相談にのっていた宇治田守を脅してお金を巻き上げるようになる。
 やがて秋子が妊娠したことを知ると遼は行方をくらまし、秋子は一人で楓を産んで、さらに5年の月日が流れ3人はホームレスとして暮らしている。児童相談所の職員である亜矢たちに見つけられたことで簡易宿泊所で暮らせるようになるが、再び遼が転がり込んできて生活は荒れだして、中学生であるはずの周平はフリースクールに通いだしていたがすぐに秋子に止めさせられる。
 ついに「事件」が起こり、秋子は執行猶予付きの判決だったが、周平は懲役12年の実刑だった。つまり母親と祖父母や勤め先の社長などの間に立たされて両方から一身に罵詈雑言を浴びせられてきたにも関わらず、自ら全ての責任を背負った周平の秋子に対する愛情は本物だったのであるが、周平を「失った」ことで秋子はようやく現実を知るのである。
 しかし本作には致命的な欠点があると思う。秋子を演じた長澤まさみほどの美貌の持ち主ならば「男性」に困ることはないはずだから、お金に逼迫することもないのであるが、例えば、秋子の役を富田望生のような「絶妙」な俳優が演じるならば、リアリズムは増すとしても興行的には厳しいはずで、やはり長澤まさみくらいのスターを主役としてキャスティングしなければ制作そのものが難しくなってしまうというジレンマは理解できる。


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『私がモテてどうすんだ』

2020-07-18 00:58:05 | goo映画レビュー

原題:『私がモテてどうすんだ』
監督:平沼紀久
脚本:平沼紀久/吉川菜美/福田晶平/渡辺啓/上条大輔
撮影:鈴木雅也
出演:吉野北人/神尾楓珠/山口乃々華/富田望生/伊藤あさひ/奥野壮/ざわちん
2020年/日本

時代を牽引する2人のタレントについて

 高校二年生のBL好きの腐女子である芹沼花依は、現実の高校生活は肥満気味ということもあって目立たずに親友の七島希と一緒に学校のイケメン男子を使って妄想で楽しんでいるのであるが、お気に入りのキャラクターが死んだショックから一週間寝込んだ後に、痩せたことで学校の生徒全員が注目する美少女に変身するという話しである。
 本作はやはり富田望生という俳優無しには制作できなかったと思う。美人ならばたくさんいるが、富田望生という存在の「絶妙さ」はなかなか見つからないからである。
 腐女子に関しては詳しくはなく、腐女子がモテてもやはり腐女子としてやりたい放題するというオチはその通りなのかもしれないが、芹沼花依が4人の美男子に同時に告白されるというシチュエーションは考えさせられるものがある。そもそも男性アイドルの先駆けとなった「ジャニーズ」というアイドルグループは4人編成だったし、その後もジャニーズ事務所からデビューするアイドルはほとんどグループとしてで、本作に関わっているEXILE系もグループが主だから、別に今どきの話ではなく昔からそうやって女子たちの脳内でいじられていたんだろうね。
 久しぶりにざわちんを見たのだが、よくよく考えるならばこのコロナ禍こそ「ざわちんの時代」ではないだろうか?


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『一度も撃ってません』

2020-07-17 00:38:03 | goo映画レビュー

原題:『一度も撃ってません』
監督:阪本順治
脚本:丸山昇一
撮影:儀間眞悟
出演:石橋蓮司/大楠道代/岸部一徳/桃井かおり/佐藤浩市/豊川悦司/江口洋介/妻夫木聡
2020年/日本

つまらない小説の映画化について

 主人公の市川進はデビュー当時は小説家として生計を立てていたものの、その後はハードボイルド小説シリーズ「サイレントキラー」を書いて、光文社の担当編集者の児玉道夫のところに持って行っても採用されることはなく、児玉が定年退職した後の後任の若い編集者である五木要にははっきりダメ出しをされて、今は妻の弥生の年金で生活している。
 しかし市川の殺人現場の描写に妙にリアリティがあるのは、市川の友人で元検事である石田和行から依頼された暗殺を本職のヒットマンである今西友也に頼み、その過程を事細かに教えてもらっているからである。
 一見面白そうなのであるが、タイトルに掛かっているオチが弱いと思うし、そもそも観客が観させられているのは、小説として出版を断られている売れない物語なのであるが、ストーリーの弱さを俳優陣の豪華さでカバーしている感じがしてならない。


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『SPINNING KITE』

2020-07-16 00:57:10 | goo映画レビュー

原題:『SPINNING KITE』
監督:加瀬聡
脚本:加瀬聡
撮影:袴田竜太郎/横山公亮
出演:中村倫也/内野謙太/伊藤友樹/醍醐直弘/藤間宇宙/三村恭代/田中隆三/山中崇
2011年/日本

誰にも理解されない「孤独」について

 主人公は中学二年生の時に転校してきて千葉県木更津市に住む古籐ジュン(純)で、1996年当時は予備校に通いながらバンド活動をしている浪人生である。中学生からの友人である小川ブンジ(文次=ふみつぐ)、キド(城戸)、マキ(真木)たちとラフィン・ノーズのカヴァーをしながら、出来る事ならプロとしてデビューしようという密かな夢を持っているのだが、最後のライブにキドは来なかった。キドは暴走族の連中と乱闘騒ぎを起こして警察に捕まってしまったのである。
 ところがストーリーは意外な展開を見せる。そのキドが少年院で知り合った仲間たちと「ELBOW」という名前のバンドを組んでメジャーデビューすることになったのであるが、凱旋公演目前に「自滅」してしまう。
 この作品の見所は登場人物たちに何かが起こることではなく、主人公のジュンに何も起こらないことにある。例えば、ジュンは家族と一緒に住んでいるのだが、母親が喫煙者であることを知らなかったし、カップラーメンを食べている父親を見た時に、ドアにはめ込まれているガラスが割れている原因も知らないのである。
 家族のことも知らなければ、バンド仲間たちのことも知らない。キドがバンドを組んでいたこともジュンだけ知らなかったが、マキの母親が倒れ、マキが相談した相手は医師の兄を持つブンジで、ジュンは何も知らされないのである。ジュンが転校生で完全な幼なじみではなかったということは多少は影響しているのかもしれないが、この寂寥感を一軒家のアンテナに糸が絡まり「一人」でスピンしている凧にダブらせているのである。
 このようなほとんど誰にも理解されない「孤独」を描いたことは監督の慧眼と言っても良いと思うが、9年後のブンジの結婚式にバンドを再結成して演奏して祝福することでハッピーエンドになるこの作品を観たからといってこの種の「孤独」が解消されるわけではない。


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『水曜日が消えた』

2020-07-15 00:58:28 | goo映画レビュー

監督:吉野耕平
脚本:吉野耕平
撮影:沖村志宏
出演:中村倫也/石橋菜津美/中島歩/休日課長/深川麻衣/きたろう
2020年/日本

オチが弱いSF作品について

 『ウルトラQ』や『タイム・トラベラー』のようなSFテレビドラマを映画化したような趣を感じる。それは妙に登場人物が少なく、例えば、主人公の「火曜日」が行きつけの市立図書館の司書の瑞野と映画を観に行った帰りに2人以外に誰も登場しないなど、まるでミケランジェロ・アントニオーニ監督作品に感じる寂寥感を醸し出している。
 交通事故で割れた車のサイドミラーに映る1羽から7羽に分かれる、あるいは2羽から1羽に戻る鳥のイメージなども良い味を出してはいるが、結局、最後に残った「月曜日」が何をしたかったのか分からなかった。「月曜日」のワイルドな性格からするならば自分が6人を支配してやりたい放題したいはずなのだが、穏やかな性格の「火曜日」ならともかく「月曜日」が各曜日の著名を集めて「結合」手術を決断するというオチには動機の弱さを感じるのである。


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『ソニック・ザ・ムービー』

2020-07-14 00:52:00 | goo映画レビュー

原題:『Sonic the Hedgehog』
監督:ジェフ・ファウラー
脚本:パトリック・ケイシー/ジョシュ・ミラー
撮影:スティーヴン・F・ウィンドン
出演:ジェームズ・マースデン/ベン・シュワルツ/ティカ・サンプター/ジム・キャリー
2020年/アメリカ・日本

「青」と「赤」が占拠する画面について

 ソニックがハリウッドで映画化されると聞いた時、アメリカにはソニックの代わりにロードランナー(Road Runner)がいるではないかと思った。

 最初は版権の問題なのかと思ったのだが、久しぶりにロードランナーを見て見ると、このカッコウ科のオオミチバシリはかなり貧相な相貌で、だから映画化しても映えないかもしれない。ロードランナーは1948年に創作されたキャラクターだから時代遅れの感は否めない。
 ところで本作の興味深い点はソニックではなく、ソニックに関わることになる保安官のトーマス・マイケル・“トム”・ウォシャウスキーと妻で獣医のマディである。何故白人の男性と黒人の女性のカップルを登場させたのか? 実際にマディの姉のレイチェルがトムを毛嫌いしている理由は、トムが白人だからだと思う。
 本作はソニックと天才科学者のドクター・ロボトニックの争いが描かれているのだが、もはや当人ではなくソニックの「青」とドクター・ロボトニックの「赤」の画面全体を巡る群雄割拠の様相を呈する。そうなると「白」と「黒」は作品後半のカラフルな画面の見栄えを良くするための「モノクロ」の役割を果たしているように見えなくもないのである。


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『ペイン・アンド・グローリー』

2020-07-13 00:58:20 | goo映画レビュー

原題:『Dolor y gloria』 英題:『Pain and Glory』
監督:ペドロ・アルモドバル
脚本:ペドロ・アルモドバル
撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ
出演:アントニオ・バンデラス/ペネロペ・クルス/レオナルド・スバラグリア/セシリア・ロス
2019年/スペイン

「痛み」の取り除き方について

 主人公で世界的な映画監督のサルバドール・マロは30歳ころから脊椎に痛みを感じ、コカインのようなドラッグで痛みを凌いでいた。ある日初期の作品である『Sabor(フレーバー、風味)』の再上映を期に、作品の主演を担い、それ以来32年間絶交していたアルベルト・クレスポと再会する。撮影中にヘロインを吸っていたことが原因でアルベルトと大喧嘩した末に関係を断っていたのであるが、久しぶりに再会したアルベルトが吸っていたヘロインを吸ったことでサルバドールも中毒になってしまう。
 サルバドールはアルベルトの一人芝居を観に来ていた昔の恋人であるフェデリコとも再会する。フェデリコは結婚して子供もおりアルゼンチンで暮らしていたのだが、たまたま仕事で訪れていたマドリッドでサルバドールが脚本を書いた芝居を知って観に来ていたのである。
 サルバドールはさらに子供の頃に洞窟で家族と暮していた頃を思い出す。洞窟の壁に絵を描きにきていたエデュアルドに読み書きを教えていたのであるが、彼が全裸で水浴びをしているところを見てしまったことでサルバドールは自分がゲイであることを知るのである。
 母親のジャシンタが病院で亡くなり、長年の友人のスレマの勧めもあってサルバドールはようやく脊椎の手術を受ける。それならば早く手術を受ければ良かったのではないかとも思うのだが、マリリン・モンロー出演の『ナイアガラ』(ヘンリー・ハサウェイ監督 1953年)やナタリー・ウッド主演の『草原の輝き』(エリア・カザン監督 1961年)のフッテージも交えることでタイトルにある「痛み」とは脊椎の痛みのみならず、最愛の母の死や仕事仲間との喧嘩や恋人との別れなど全てに掛かっており、その全ての痛みを乗り越えた先に「栄光」は待っていたのである。


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『グッド・ボーイズ』

2020-07-12 00:57:17 | goo映画レビュー

原題:『Good Boys』
監督:ジーン・スタプニツキー
脚本:ジーン・スタプニツキー/リー・アイゼンバーグ
撮影:ジョナサン・ファーマンスキー
出演:ジェイコブ・トレンブレイ/ブレイディ・ヌーン/キース・L・ウィリアムズ
2019年/アメリカ

成人保護者が躊躇うアドバイスについて

 小学校6年生で主人公のマックスは同級生のブリクスリーに好意を持っており、仲間のソーとルーカスと共にゲームに勝つと好きな人とキスが出来るパーティーに招かれることになるのだが、そこに至るまでに大人のおもちゃやダッチワイフ、さらには近所に住むハンナとリリーが使用しているMDMAなどが扱われていて大人は楽しめるが主人公と同世代の子供たちは見ることができないPG12指定なのである。もちろん成人保護者の助言があれば見られるのであるが、大人のおもちゃとダッチワイフの使い方を説明しながら観賞できるだろうかという疑問は残る。
 マックスと、ソーとルーカスの2人の違いはマックスは既に精通しているということで、それだけで女性に対する情熱が全く違い、そのギャップが面白みを生み出すのである。


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