【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「〈性〉なる家族」信田さよ子

2019年12月01日 20時32分10秒 | 読書(家族)
「〈性〉なる家族」信田さよ子

家族の性をテーマにした力作。
長年のカウンセラーとしての経験を基に、DV、虐待の問題を考える。

PC(ポリティカル・コレクトネス)について
P32
ここでいう「ポリティカル」を政治的にと訳すと、誤解を招く。私自身がもっともしっくりくるのは「力関係による」という訳語である。

男性の性的欲望は原子力のようなものなのか?
P68
性犯罪者は性衝動が人一倍強いのではないかという見方もあるだろう。しかし本当にそうだろうか。

性犯罪者について
P72
彼らは目的達成のために膨大なエネルギーを注ぎ、事前の準備を重ね獲物を逃さないように工夫する。一種異様ともいえるこの感覚(モード)はいつも作動しているわけではない。ある時からスイッチが入るのだ。性犯罪の再発予防はこのスイッチが何かということを本人が知ることが第一歩となる。

P88
世間から後ろ指をさされないという一点しか誇れるものがないことがよくわかっているからこそ、足元の脆弱さ、性的に満たされた記憶もないまま老いていく不安などがすべて娘への叱責に集約されるのだ。

P97
支配とは、抵抗や反論、拒否を奪うことであり、抵抗を弾圧したり抑圧したりすることだけが支配ではない。

P100
「男は手のひらで転がせばいいのよ」この日本中に広がってる民間伝承的な格言は、女性たちの「自分が男を動かしている」という権力意識にもつながる。脆弱性の保護を女性が担うということは何を意味するのか。そこから生まれるのは、踏みつけにされた存在による、「男たちを生かしているのは私たち女だ」という転倒した支配意識である。

『戦争とトラウマ』(中村江里)について
P207
しかしこの本を読むと、戦時中、数多くの日本軍兵士が主として満州の戦地で精神を病み、帰国して入院していたということがわかる。それは戦闘というより日本軍内部の私的暴力(リンチ・いじめ)のトラウマが多かったという。

P217
つまり最も私的で最も見えにくい家族で起きていることは、国家のレベルで起きていることと連動しており、容認されているということだ。国家の暴力を規制する法律はないし、日本ではDV加害者を処罰する法律もない。言い換えれば、国家間も家族も、ともに無法地帯になりがちなのだ。

P219
日本の犯罪発生率は減少の一途をたどっているといわれるが、家族による殺人の割合は増えているという。

【参考リンク】
「〈性〉なる家族」信田さよ子

【ネット上の紹介】
家族の基盤にありながら、あえて真正面から対峙しなければ視野に入らないものがある。性虐待、ジェンダー、セクシュアリティ、性差別…。タブー視されがちな問題を、長年のカウンセリング経験をもとに、様々な角度から考察。力関係としての性を明るみにし、家族の今と未来を展望する。
第1章 性虐待の背景にあるもの(娘が「かわいい」と語る父親
少女が支える家族 ほか)
第2章 家族神話を生きる妻(神話を支える妻たち
セックスという名の深い河 ほか)
第3章 不可視化された暴力(加害者を嘲笑せよ
マジョリティであることの恐怖 ほか)
第4章 トラウマと時間(セクハラ元年、メディアの変化
トラウマと引き金 ほか)
この記事についてブログを書く
« 「天秀尼の生涯」三池純正 | トップ | 「わたしの日々」水木しげる »

読書(家族)」カテゴリの最新記事