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「神も仏もありませぬ」佐野洋子

2018年05月02日 19時39分33秒 | 読書(エッセイ&コラム)


「神も仏もありませぬ」佐野洋子

佐野洋子さんのエッセイ。

P36
ある日、おじいちゃんが、「体をふいてくれ」と突然云ったので、何だろう、不思議だなと思って、体をきれいにふいてやった。ふだんと変わりは何もなかったそうだ。しばらくすると、「何かスカッとするもの」と云ったので、吸い口にサイダーを入れて飲ませた。それからすぐ、ヒクッとしてそのまま死んでしまったそうだ。
「自分で湯灌して、末期の水も飲んで大往生で、すごいだろう」。まるで、どこかの民話の様ではないか。


P102
別の友人は、徘徊する母親の腕と自分の腕とをひもでまきつけて、何年も看護をし、あびる様に酒を飲んでいた。そして母の通夜の晩、脳出血で自分も死んでしまった。その時も私は感想を持てなかった。どんな感想も言葉もその事実の前に無力だった。

解説をニコニコ堂の店主・長嶋康郎さんが書かれている。(つげ義春さんの「無能の人」のモデルと言われている)
古道具屋さんである。いろいろエピソードが書かれている。(P158)
それもおもしろいんだけど、注目すべきはその息子さんが芥川賞作家・長嶋有さん、ということ。更に言うと、ブルボン小林氏と同一人物である。(知ってた?)

P164
「表紙を絵描いてくれますか」と云うではないか。「うそーっ、私でいいの」。私はうれしくて仕方なかった。本になったら、なんと芥川賞をもらってしまった。

【参考リンク】
「マンガホニャララ」ブルボン小林


【ネット上の紹介】
呆けてしまった母の姿に、分からないからこその呆然とした実存そのものの不安と恐怖を感じ、癌になった愛猫フネの、生き物の宿命である死をそのまま受け入れている目にひるみ、その静寂さの前に恥じる。生きるって何だろう。北軽井沢の春に、腹の底から踊り狂うように嬉しくなり、土に暮らす友と語りあう。いつ死んでもいい、でも今日でなくていい。
これはペテンか?
ありがたい
今日でなくてもいい
虹を見ながら死ね
声は腹から出せ
フツーに死ぬ
そういう事か
それは、それはね
そうならいいけど
納屋、納屋
フツーじゃない
じゃ、どうする
何も知らなかった
山のデパートホソカワ
出来ます
他人のウサギ
謎の人物「ハヤシさん」
金で買う
あとがきにかえて

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