「万葉恋づくし」梓澤要
梓澤要さんには良い印象を持っている。
「恋戦恋勝」がとても面白かったから。(文庫本は「ゆすらうめ」)
「恋戦恋勝」は江戸時代が舞台の短編集。
今回は、奈良時代を背景にした短編集である。
予想通り、レベルの高い内容で面白かった。
次の7編が収録されている。
紅はかくこそ
弟
年下の男
おその風流男
醜の丈夫
しゑやさらさら
恋の奴
万葉集に収録されている歌を題材にして、膨らませ、物語にする技術はさすが。
大伴家持をはじめ多くの有名人が登場し、
歴史上有名な事件も、さりげなく挿入される。
わが背子が来むと語りし夜は過ぎぬ しゑやさらさらしこり来めやも
P203-204
今夜はかならず来るというから寝ないで待っているというのに、もうこんなに夜が更けてしまったじゃないの。ええいッ、こんちくしょう!いまさら来るもんですか。どうしてくれよう、あのスカタン!
われながら、なかなかいける歌だと思います。
【参考作品】
【ネット上の紹介】
我知らず、恋の奴(やっこ)―奴隷―になってしまった万葉の名歌に秘められたドラマ。いつかは都へ帰る人――。赴任先の現地妻を自認していた遊行女婦が、かりそめの恋の終わりに流した涙。若き日の穂積皇子と異母妹・但馬皇女との伝説の許されざる恋。そして万葉集の編纂者・大伴家持が自らうたった、ひと回り以上年上の紀女郎への募る思い。身も心も焦がす恋を描く連作短編小説集。