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「生と死の分岐点」ピット・シューベルト/黒沢孝夫/訳

2017年10月05日 20時58分00秒 | 読書(山関係)


「生と死の分岐点」ピット・シューベルト/黒沢孝夫/訳

1997年、日本で出版された作品。
(今ごろ、と言われそうだけど読んでみた)
様々な山の事故を取り上げている。
トラブル百科全書と言ってもいい内容。

感想だけど、「思い込み、勘ちがいの事故が多い」、ってこと。
冷静に考えたら、「そんなことせんやろ」ってのも少なからずある。
これは防ぎにくい。
セルフ解除の順番を間違えたら命取りだけど、起きている。
地上にいるなら、ビレイヤーとクライマー両者の相互チェックで事故はかなり防げる。
二人が同時に勘違いする事は、まず無いから。
でも、終了点に着いて、残置カラビナがなく、リングに通して懸垂となった場合、一人でチェックして降りなければならない。(海外の岩は、残置カラビナが無い場合が多い)
念には念を入れて、指さし、声出ししても良いだろう。

P77
ロープにバッテリー液がかかって、簡単に切れてしまった話が載っている。
化学物質にロープは弱い、と。

P112
ブーリン結びがリング負荷に適していない、と。

P115
1992年にザンクト・ペルテンで行われたワールド・カップで起きた。
イタリア人の競技者が8メートルの高さから落ち、そのまま床まで墜落(グランド・フォール)したのだ。ロープは中間支点から中間支点へと蛇のようにうねうねと落ちてきた。またもやブーリン結びがほどけてしまったのである。墜落者は両足に複雑骨折を負った。
 これを受けて競技審査員会は以後の参加者に8の字結びでアンザイレンするよう義務づけた。するとフランス人クライマーの間からそんな結び方は知らないとの抗議が出たため、ワールド・カップで何回も優勝し、世界選手権とヨーロッパ選手権で2位になったイザベル・パディシェや、世界選手権、ワールド・カップ、ヨーロッパ選手権の総合チャンピオンに何度もなっているフランソワ・ルグランなどの男女クライマーのロープを審査員が結んでやらなければならなかった。その後国際的クライミングコンペで「8の字結びに限定する」と決められた。(私も、この頃からブーリンから8の字に変えた記憶がある。今も8の字だ。負荷がかかると解きにくい欠点があるが、解けやすいより良い。それが最優先事項だから。結びに対する強度は、体重に対してだから、一般のフリーに対してのフォールでは、特に問題はないと思う。関連図書として、山岸尚将さんの「教科書になかった登山術」のP27を読んでみて。著者は、それでもブーリンを使っているそうだ。人それぞれこだわりがある。関係ないけど、ルグラン、パティシェも懐かしい名前だ。昔、パティシェが岩場で登っているの見たことがあるが、超巧かった)

P135
ロープメーカーのエーデルリット社の調査によると、トップロープによるロープの消耗と損傷は、普通の登り方と比べると何倍も(ことによると10倍も)激しいとのことである。

落石に関して、Ⅲ級以上のルートでは、単純過失はその責任を問えない、と。
P200
山と岩壁で行動中の登山者やクライマーは、安全な平地を去り、自らの意志で山に付属する危険を受け入れたのである。落石もその1つであり、これには他者によって誘発された落石も含まれる。なぜならどれほど注意深くロープ操作をしていても、石を落としてしまうことがあるからである。したがって落石の危険に対しては各自がその責任を負うことになる。あるルートを後続パーティとして登っていく場合には、この原則は特に重要である。(もし、子どもを岩場につれていくなら親はヘルメットを用意した方が良い。なぜなら、「ラクッ」と叫んでも、子どもは状況判断できないから。連れてこないのが一番だけど)

【疑問】
本書では『エクスプレス・スリング』という言葉が何度も登場する。
日本では、あまり一般的ではない。
『ヌンチャク』あるいは『クイックドロー』と訳した方が分かりやすい。
厳密には、両者は異なるけど、ボルトにエクスプレス・スリングだけセットして登る人いる?
第一セット出来ないし。

【ネット上の紹介】
山岳遭難の数々を詳細なデータ分析と用具・技術の検証を通じて赤裸々に再現し、その予防策と対処の方法を提言する。
天候悪化―急変したときの危険性
落雷―自らが避雷針にならないために
ロープ―ハイテク時代とはいえ、なお切断の危険が
化学薬品―犯罪事件の謎解きのような事故
カラビナ―なぜ簡単に壊れるのか
アンザイレン―ハーネスがかかえる構造上の問題点
ブーリン結び―どうして使われなくなったのか〔ほか〕

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