ケンジャチの冒険

金曜日、習字とバレエに通っているムスメ。
オニイと一緒に帰ってくるはずが
教室に迎えにいったオニイから携帯に電話があって

「○ーたん、今日来てないっていってるけど」

迎えに出ようとしていたワタシ、　血がさーーーーっと
引く音が聞こえたような気がした。

「じゃ、とりあえず１人で帰っていらっしゃい
一緒に捜しに行こう」

外に出て、どっちに行こうかと考えていると
暗闇の中から

ケンジャチが現れた。
手にリボンが付いた袋を持ってる。

抱きしめて、心配したよ、といって、
うちに帰ってから
理由を聞いた。

「今日パパの誕生日だから
プレゼントを選んでいたら
遅刻の時間になっちゃって
入っていけなかったの。ごめんなさい。」

「まま、ごめんなさい」

パパ、きっとすごく喜ぶね。
でも、黙っていったらママすごく心配するでしょ。
黙って言ったらダメだよ、約束してね。

通っている教室は、スーパーマーケットの下にある。
女のこの買い物は悩んだり迷ったり
時間がかかるのもわかる。
ほんのちょっとのつもりだったんだよね。
でも、ほんとに心配したんだよ。

パパ、お誕生日おめでとう。

うれしそうに、恥ずかしそうに、渡すムスメは
やっぱりとってもかわいかった。

ちょっとの寄り道が、事件につながる世の中だから
怖いことがたくさんあるから、
でも、内緒でプレゼントを買いたかった気持ちもわかるから

ああ、無事でよかった。