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新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

夏フェスのささえ方(野外コンサート)続編

2011-08-29 23:32:25 | 雑感/他分野ニュースから連想

夏休み2度目(たぶん今夏最後)の夏フェスのバイト(救護所医師)してきました。freedom2011@淡路島の2日目http://freedom-awaji.com/

今回はナースが(派遣会社でなく)地元淡路島の病院から、さらにベテランの1名は看護大学教員。「変わったことしたくて」と。そう、管理人と似たような立場で似たような思考回路の持ち主みたいで、実際ラッキーでした。

 

前回に続き「夏フェスのささえ方 続編」です。

 

運動会などイベント待機のバイトやボランティアをされる方、何かの参考になれば幸いです。

(前回「夏フェスのささえ方」は
http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/d/20110806
参照ください(末尾にコピペ)。文頭の番号は前編からの続番になっています。

 

6.ミュージシャンの楽屋

救護所医療スタッフの集合時間はおおむね開場の2時間前(≒おおむね開演の4時間前)。舞台ではリハーサルが展開しています。彼らは舞台上か楽屋に待機。救護所スタッフに与えられる身分証は、舞台裏や楽屋まで入れる権限をもったものであることが多い(AAAと書いてあったりする)

 空いた時間があれば、ちょっとのぞいて声かけてまわる。サイン?いやいやそんなものねだるのはNG!。じゃなくて、「元気ですか?何かあったら何でも言ってくださいね。それと『水め!ポカリ飲め!』って叫んでください」と声かけてまわるのです。こちらが白衣着てたら大抵快諾してくれます。

 で、始まってみると・・・

「おまいら~飲んでるか!」とかリズムの合間に本当に絶叫してくれました。次々と!群衆は「うぇーい」と。そう、群衆が一番言う事を聞くのはミュージシャンなのです。彼らの口を借りる。これ最高のリスクコミュニケーションです。

 

7.熱中症

これは開演前からリスクがあがります。

14時開演なら12時開場、すると朝8時とか9時とかいう時間からそれなりの行列が出来ていたりします。行列の場所はたいてい屋根もありませんから、快晴だと(今回は雲ひとつない快晴!)開場の時点ですでに3時間ぐらい直射日光にさらされていたりします。

 開演になると、長い人は6時間も直射日光下ですから即バタバタとやってきます。野戦状態です。

保冷剤は用意されてることが多いですが、100円ショップで売られている霧ふきを持ってゆくと良いでしょう(あるいは主催者のなかで担当者とピンポイントで正確に連絡とれるならリクエストしておくのも良いでしょう。でも主催会社担当者と当日現場担当者は違うことも多いのでそれは期待薄)。ミストをかける。

 

8.急性アルコール中毒。

 今回はこれがちょくちょく出ました。テキーラを○杯飲んだ、ビールを○杯飲んだと。全身状態はまあ悪くないものばかりで低体温やらけいれんやらは無いので救護所限りで。警察官の巡回もかなり頻繁にて荒れる人もおらず。

傾向として、日中は熱中症がメインで夕刻からこちらに移行という感じ。

3人続けて虎がやってきた時には思ったものです。「しまった、楽屋で、水めの次に酒やめろと言ってもらうよう頼んどいたら」と。まあ、今回はちょっと不良ぽいのが持ち味だったりするジャンルだったからそれは気の毒か・・・

 

9.ツイッターが使えることも

 あまり多くはありませんが、コンサートによっては専用のツイッターアカウント開設している場合も。今回はそれに該当したので、しかるべき#(ハッシュタグ)をくっつけて流すとHPに表示される。で、熱中症の話、ORSの話、虫刺されの話、サングラス(紫外線眼炎)・・・、前日夜には「そろそろ寝ましょう」などなど、リスクコミュニケーションに使える道具になりました。 どうやら昨年の医者も同じような事をしていたらしいです(伝聞)。

 

10.スタッフに声かけ

 野外コンサートには、学生バイトやボランティアの子がたくさんいます。その派遣元はいろいろなので、開場前にはいくつかのミーティングがあちこちで。多くはずっと炎天下の任務。こういう人々は概して“頑張り過ぎてしまう”もの。ミーティングの輪を見つけたら入っていって「熱中症は重症化するとオオゴト。気分不良あればすぐ救護所へ。スタッフが救護所のお世話になるのは恥でも何でもない! (不調感じたら)堂々と救護所に気ましょう!」と呼びかけてまわる。ただし彼らもそれぞれに大切なミーティングなので、ディスターブするのは3分以内手短に。

 

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(以下、前編のコピペ)

インフルとは無関係ですが・・・

本日は夏フェス(野外コンサート)の救護所医師のバイトをしていました。
http://www.ktv.co.jp/event/ssc2011/index.html
です。

おそらく、当サイトにおいでいただく常連さんにも、夏のイベント待機のバイトやその後の運動会シーズンには子供の学校で父兄ボランティアされる方もおられるでしょう。

本日のメモ兼ねて“救急のプロじゃないフツウの人々”に贈る「イベント医療の基礎の基礎」。

 

1.野外コンサートではどれぐらいの受診者がでるのか。(この項、スタッフからの聞きかじり)

 イベント会社の方によれば、平均して「客数の1%」とのこと。1000人入ったら10人、1万人入ったら100人。これはあくまで標準。本日、管理人が担当したsummer sound carnival20113500人入場で受診者16人。かなりラッキーでした。救急車コールもゼロ。急性アル中もゼロ。

 対して、1週間前に同じイベント会社担当のコンサートは1万5千人入って170人救護所へ。かなり高率です。救急車1名、急性アル中もぞろぞろ。

 こういう違いはコンサートの客層によるのだそうです。先週のは「観客賑やかでもう・・女性なんかみんな水着で・・(担当者談)」。はい、ここでビキニ姿が1万人騒いでる光景想像してニヤリとした人、早計です。そういうコンサートはヤンチャな人が多く急性アル中もゴロゴロ。救護所も大変なことになります。(でも、結局誰かがやらねばならないのですから、活きがよくてビキニの好きな若い先生に思い切り働いてもらいましょうw)

さて、どちらのパターンになるかは「音楽のジャンル」で違ってくるそうです。J-popsなどは前者、レゲエやロックは後者と。バイト引き受けるときの参考になるかもしれません。

 

2.熱中症

 この時期の野外イベントで起こることナンバーワンはこれでしょう。

熱中症Ⅱ度以上は必ず医療機関へ・・・とはどこにも書いてあるところですが、まあ、Ⅰ度でも、飲水をすすめて自分で飲みにくかったら医療機関へ送る・・・ってことでよいでしょう。(点滴の用意までされてたりすれば別ですが、普通のイベント会社ならそこまでない)

 さて、実際に救護テント訪れる大部分は、救急搬送かギリギリの判断・・というレベルではなく、意識レベルクリア、会話も混乱せずちゃんと成立が大部分。簡易ベッドに寝ていただき経口補液にクーリングということになります。
 ここでちょっと困るのがOS-1の不評。経口補液ORLWHO基準はNa 75mEq/L。米国小児科学会基準が同40~60。大塚のOS-1Naが50mEq/Lですから理にかなっている。(スポーツドリンクは20前後だからNa足りない)。が、実際はなかなか飲んでもらえない。出して10分たってもそのまま。で「(ふつうの)お水もらえます?」なんて言われちゃったりします。管理人的にはソリタT3顆粒よりマシと思うけど現実には。

 先般の渡航医学会の講演であったのですが、「スポーツドリンクに少量の昆布茶を混ぜる」「梅干しを一緒に出す」といった生活の智恵は試す価値ありかも。

 

3.野外コンサートの醍醐味は大自然=動物に囲まれている

 緑に横になったりとび跳ねたりが醍醐味の野外コンサートですが、そこには色々と。

「横になってたら毛虫に刺された!(緑色の2cmぐらいだったとか)」というお兄さんも。
今年はなかったですが、昨年の申し送りではヘビに咬まれた人もいたとか(同じく万博公園の話です)。ちなみに本州内にいるヘビで毒をもっているのはマムシとヤマカガシです。前者は頭が三角形してるので判別、咬まれた人にどんな形してたか問診すれば(理論的には)良いはずですが、でも、ヘビの鑑別なんて、シロウトには困難です。管理人はセネガル在勤中、大使館敷地内でヘビ出没という事件があったとき、セネガル在住のフランス人ヘビ学者のところへ話を聞きに行ったことがあります。多くの標本とアトラスをもとに○○種、○△種、×○種・・・と頭部のカーブだとか鑑別点らしきことを懇切丁寧に知識を授けていただけたのですが、管理人の目にはどれも同じ「不気味なヘビ」にしか見えませんでした。蛇咬傷の人をみたら、すぐ医療機関に送りましょう。当直医マニュアルをお持ちの方はp507です。

 

4.女性のうったえ

 テントにやって来て、看護師さんにそっと言ってものを受け取るだけ・・・という人もいます。そのほとんどが「バンドエイド」か「生理用ナプキン」です。前者は靴づれ。夏フェスでは、観客がミュージシャンに合わせてピョンピョン跳ねる・・・ということがデフォになります。が、慣れていない人はパンプスなんかで来てしまいます。よって靴づれが頻発します。後者については、男の私は本日初めて知りました。野外コンサートでは生理用ナプキン求めて救護所に来る人が結構いる。ひとつ勉強になりました。

 月経痛が主訴の人も来られます。頭痛より多い。動けなくなってたのをスタッフに救出されてきた人まで。脱水あるいは“飛び跳ね”で増強するのでしょうか。

 

5.寝不足

 熱中症で来られる方にお尋ねすると、前の晩寝てない、寝不足という人が結構います。

寝不足は敵です。といってどうするわけにもゆかないのですが、ひとつのアイデアとして、コンサートによってはツイッターアカウント開設してる所もありますので、主催者にかけあって、数日前から情報発信というのも良いかも。ポカリ買ってきましょうとか、ポカリにこぶ茶混ぜたら強力ですとか、前日22時頃にはそろそろ寝ろとか・・・

 

当管理人、前職外務省時代には、イベント医療的なこともちょくちょくやっていました。天皇皇后両陛下の欧州ご訪問や、森・小渕元総理のパリ訪問、ナショナルデーほか外交行事等々。邦人保護では98年仏W杯のリヨン出張とか。

 

でも、今回は初めて知ったことも色々あり、若い熱気に元気ももらい、とても楽しい一日でした。

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