新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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大野病院事件に想う(新型インフルエンザへ連想)

2008-08-21 17:56:18 | 政策提言/政策への疑問

今朝の報道各紙、大きく載っていたのが大野病院無罪判決。

あの逮捕事件(身を削り最善を尽くした医師に手錠をかけた事自体が事件)が起こったとき、私は北京にて在勤中。それに先立つセネガル・仏・スーダン勤務と計12年間で”浦島太郎状態”だった私が打たれた衝撃は誇張でなく”雷で打たれた”ものでした。当時、在外公館を職場としていた私は、某MLに「最善の努力を払い外交交渉に臨んだが、相手国に一歩利益をとられた・・のを理由に警察が土足で踏み込んできて外交官に手錠をかけ連行してしまう・・それに等しいことが祖国で行われている!」と書いたことがいまでも鮮明に覚えています。そして、当時北京に駐在しているいかなる国の大使館医務官たち(米・独・仏・加・・大使館)にも、祖国で展開している「最善を尽くした医師に警察が踏み込んできて手錠をかける」事件を説明のしようもなかったことも覚えています。海を隔てた北京の地では出来ることは限られ、MLの情報にしたがい署名をし、手持ちの少ない日本円を封筒にねじり込んで義援金を送ったことぐらいしか出来なかったのですが・・

 今、2年半の歳月を経て、何とか裁判所が、先進国の人間に対しても説明可能な判断を出してくれて一息です。

報道各紙の社説もおおむね好意的ながら、医療崩壊を加速させてしまいお産難民大発生させてしまった結果を考えたとき、私としてはもう一息「冤罪事件並み」の非難はしてほしかったような気もします。
報道で一味違って目を引いたのは、産経が裁判所幹部からとってきたコメント。27面連載「医療と刑事捜査ー上」で「文科系と理科系のエリートたちの互いへの不信感が全面対決した構図だな」と・・ 敵意をむきだしにする検察官がいるとか・・

前置きが長くなりましたが、ここから本論新型インフルエンザの話。

ヒトーヒト感染が日本でも始まり(フェーズ4ぐらいの初期)、浮き足立った受診者が押しかけて病院の機能を上回ってしまったとき、あるいは、発熱外来受診が指定される発熱患者が、新型インフルエンザ医療体制の整っていない医療機関にやってきて「われ、つべこべ言わんとちゃんと診んかい! わしゃ、いつもの下痢の熱や!!」来られた時、診察室に通さなかったら・・ ここで問題が出てくるのが「応召義務」というやつです。基本的に断ることが出来ない・・ でも、体制がないから受けられない・・ 「応召義務は果たせない」・・
 あるいは、人工呼吸器が3台のところに4名の重症患者が入ってきたときに・・ 

 ここで「使命に駆られた文系エリートの暴走」を抑えられる仕組みを整備しておかなければ、それこそ日本各地で混乱増幅の輪が展開してしまいそうな気がしています。

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