新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

”あの日”から約半年経った被災地で考えた

2018-12-16 18:20:52 | 洪水・水害・震災・津波・噴火・戦乱

倉敷豪雨災害から約5か月半。被災地にて徒然なるままに。

いつもと同じ倉敷市社協の医療ボランティア。前日までにHPからカチャカチャと若干の個人情報を入れて手軽に登録できます。出来る手技を細かく聞かれたりは一切ありませんから管理人みたく本職文系大学の先生でも入れます。ボランティアセンターは10月に移転して駅のド真ん前、便利になりました(井原鉄道川辺宿駅)。
https://peraichi.com/landing_pages/view/kuravol

【概況】
被災当初~秋にかけての「熱中症と砂塵との闘い」「蚊との闘い」から一転、「ストーブの世界」です。しかし日中は車の温度計で9℃、インフルエンザもようやく定点あたり1を超えたところで注意報や警報の色はついていなくてまだ嵐の前の静けさです。輸送ボランティアさんの運転で被災者宅をまわりますが呼吸器症状も見かけず、また、ノロの流行もないのはご同慶の至り。
レジオネラとかマイコプラズマとかSFTSとか、専門家がメディアで懸念を表明してきたものも(まったく無いわけでもないのでしょうが)とりあえずお会いした皆さんおよびその近所の人・知人や噂話の範囲内では聞こえてこないようです。

【みなし仮設住宅は有効だった】
被災者宅の多くでは、転居せずとどまる選択をされた方も、週末に戻ってきてボランティアとともに運び出しや清掃にあたる方々が多数。では普段どこにいるかといえば、さほど遠くない倉敷市中心部~水島までのあたり。みなし仮設住宅です。集合住宅の空室などを行政が借り上げて、そこに住むもの。すでに存在する物件に入るので、新たに仮設住宅を建設するよりも圧倒的に早く入居することができます。これが良かったと話してくれる被災者のみなさん。

【メンタルヘルスを分けるもの】
感染症が何も流行っていませんということになると、次なる関心はメンタルヘルス。ちょっと興味深いことを話してくれた被災者さんがおられました。自分はOKですと。それは息子が友達からのSNSで情報を得て、水が入ってくる前に自宅を出て避難できたからだと(水を見なかったからと表現された)。でも、水が入ってきてから2階にあがって命からがらの知人有人は、夜にうなされたりフラッシュバックとかありますと。当日に水を見たか見なかったかが大きな分かれ目のようです。

そしてペットロスの有無。自分はたまたま、大型犬を他所に預けていたから良かった。でもペットが流された知人は・・・と。

【歯科は難題】
メンタルヘルスとも関連しますが、夜間に悪夢や歯ぎしりで、歯からくることが多いと複数から証言。歯からくる人が多いのに、(歯科機器は高価なもの多く)歯科医院はなかなか再開できない。実際、半年近く経った本日現在も閉まったままの処を多く目にしました。

【慢性疾患はおおむね医療とつながれている】
高齢者はほとんどが、糖尿病だ高血圧だということになりますが、聞いた範囲ではその全員が「先週受診してきた」「次の受診は〇曜日だ」という具合。病院の方は(さすがに歯科医院よりも)経済力もあり診療を提供できているようです。そして医療ボランティアの巡回も医師・保健師・看護師といろいろやってきて、普段以上に目が届いています。生活習慣病のコントロールはかえって良好!

【流言・デマが生まれる瞬間を目撃した】
道へだてた処に大阪観光神戸支社と書いた観光バスが停まっています。ボラセンのおばちゃんたちが、なにやらテンション上がっています。聞くと「灘高校がボランティアにやって来たバスだ。すごい優秀な子たちが、こんな事してくれるんじゃあ・・・」と。???天下の灘高校が、このインフルかつ期末試験の時期に修学旅行みたくバス連ねて半年も経った被災地に来るもんかねと、どうも腑に落ちないので、わざわざバスのところまで行ってみました。本当に「灘高校御一行様」と書いてあるのかと。結果はこの通り。


神戸の高校生有志の集まりがやって来ていて(KOBE高校生ですから、神戸高校ということでもなく、神戸の高校各校からの有志。実際にこれで検索したら出てくる https://activo.jp/articles/72080)、そのうちの一人におばちゃんが聞いてみたら(自分は)灘高校生だと答えたので「灘高校がバス仕立ててやってきた」となって、それを皆が疑いなく信じてその場で確信になっていったと。

流言が広がる要素に「身近さ」「もっともらしさ」があります。これが無いと、たとえば開成だラサールだという話なら「(地理的に考えて)もっともらしさ」がありませんから、こういう展開にはならないでしょう。真実とはちょっとだけ違う話、その危険性というお話。

【ボランティアは良い雰囲気】
全国からほんわか集まって、細かい事いわずに入れてもらえて、無理なく頑張りすぎず活動する場は良い雰囲気が持続しています。寄せ書きもいくつかあって、出色はこれでしょう。トラック1台まるごとそのまま寄せ書き! 管理人もとっさにひとこと(笑)

【支援物資のミスマッチ(ボランティア対象も)】
被災者だけでなく、全国から集まったボランティアに対して何かしようと考える人々もおられます。今回は近くの川でとれたフナめしをふるまっていただいた方がおられ、お心遣い感謝でした。でも、?なものも。突然、2019年5月に期限が切れる(つまり、来夏までもたない)OS-1が1000本送られてきてボラセンの倉庫に積んであるそうです。冬を迎える今、ストーブの前でOS-1を飲んでうまい訳もなく、いや、それどころか、血圧をあげてしまうので、(それでも多少はご自由におとりくださいと並べているけれど、基本的に)苦慮されています。
 これは前回の件ですが、作業から戻ってきたボランティアに、にこやかに何か手渡してくれる人がいました。管理人もうっかり受け取ってしまいました。首からかけて空間除菌するというアレ。何とも情けない気持ちになって、管理人の不覚です。ニコニコ配ってる人は、いかにも悪気なさそうでしたが(本人自身が本気で信じて首からぶらさげているんだろなあ・・・)。

 

【ボランティアを騙るケシカラヌ輩】
こんな人もいますご注意と。朝集合時間に軽トラでやって来て、ビニールシートを受け取る。そのままドロン(ビニールシート泥棒)が一番単純なパターン。もうちょっと込み入ると、ビニールシートを受け取り活動しにゆくような顔して走り去るけれど、終了時間近くに戻ってくる。その荷台には自分とこの(プラスα)ゴミが。ボラセンのゴミ捨て場にちゃっかりタダで捨ててゆく。。。orz

まあ、色々な人々の色々なお話をうかがうだけでも行った甲斐あるかもしれません。

 


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