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新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

レユニオン島の人々はどうチクングニヤを克服したか

2015-04-04 13:08:40 | チクングニヤ熱

 2006年に人口の38.5%がチクングニヤ熱に感染してしまったレユニオン島(フランス海外領土)。どうやって克服したかのおさらい。

  • 2006年最初の3カ月で人口80万人中38.5%がチクングニヤ熱に感染。同年中盤までの克服、その後は年に数例の発生にとどまっている。
  • フランス当局は多職種タスクフォースを立ち上げ。ICU医、小児科医、産科医、公衆衛生専門家、社会科学者、ウイルス学・免疫学・病理学専門家等
  • 感染者・感染経験者が協会をつくり、感染者の家族支援、治療や休業等に関する要求や提言を出した。
  • 市民がチクングニヤに特化したサイトを立ち上げ(http://www.chikungunya.net/)、FAQsや専門家の意見、感染者のフォーラム運営。
  • 市民が年2回の「蚊を破壊するキャンペーン」実行。
    知識の普及と、周囲のボウフラ繁殖地対策。家庭訪問。60万ドルの予算。

フランスらしい味付けもありますが、デング・チクングニヤといった蚊媒介感染症では、コミュニティ全体を巻き込んでゆくことが成功へのカギであると確認です。

http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/21/5/14-1385_article

Volume 21, Number 5—May 2015

Letter

Citizens’ Actions in Response to Chikungunya Outbreaks, Réunion Island, 2006

 

 


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チクングニヤはあなたの都市にもやってくる

2015-04-02 12:12:57 | チクングニヤ熱

チクングニヤ熱の総説がnejmに載って以来、米の一般報道がわっと引用、かの国の関心ぶりがうかがえています。

  • テキサス大Galveston's Scott Weaver氏。チクングニヤの研究に15年間没頭してきた専門家。
  •  1952年に現在のタンザニアで最初に報告されて以来、現在ではカリブ・南米に流行中の、このイタイ病気はやがて、米国中に拡大すると予測されている。アメリカ大陸中44か国に発生し13000人以上の感染者をだしている。
  • 典型的症状は、3日間の潜伏期ののち激しい発熱と関節痛。全身倦怠感、関節炎、頭痛、筋肉痛、発疹。
  • 1週間以内に治癒することもあるし、何週間何か月と続く関節痛に悩まされることもある。
  • 死亡例はマレだが無いわけではない。ハイリスク群は小児・高齢者・糖尿病や循環器疾患など基礎疾患者。
  • チクングニヤ熱は大きな公衆衛生リスク。治療法やワクチンが開発されるまでは、現在は、蚊を減らす対策と、媒介する2種類の蚊とヒトが接触する機会を減らすことが唯一(唯二)の対策。
  • いまチクングニヤワクチンは第Ⅰ相まで行っているが、これから先多額の投資を要する。もうひとつ難しいのは、臨床試験に適切なチクングニヤ多発地帯はどこかという点である。

一昨年末からのカリブ中南米の、あの爆発的広がり方を見れば、日本でも一旦入り出すとデング熱以上の大騒動になるのが目に見えています。関節痛が無い人と数週間続く人と数か月続く人がいるという点は、会社の休業期間など設定しにくく、産業保健分野でも相当悩ましいことになります。いろいろ覚悟しておかねばならないことが多いですね。

ソースはinfectioncontroltoday
http://www.infectioncontroltoday.com/news/2015/03/chikungunya-virus-may-be-coming-to-a-city-near-you-expert-warns.aspx

Chikungunya Virus May be Coming to a City Near You, Expert Warns

 

元ネタ@nejm
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMra1406035

 


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UKでもチクングニヤ熱感染者が爆増!

2015-03-24 09:36:01 | チクングニヤ熱

UK全体でチクングニヤ熱感染者が爆増!

  • UK全体のチクングニヤ熱、2013年24例に比べ2014年295例。12倍増。
  • 88%が、カリブおよび南米への渡航がらみ。
  • St.Martinで最初の国内感染例(autoctone)発生が報告されたのが2013年12月。それから、カリブ海・中南米地域でまたたく間に130万例になった。米フロリダでも。

渡航先で爆増すれば、輸入例も爆増するという、わかりやすい話です。
ネッタイシマカもヒトスジシマカも、分布図を見ればUKは真っ白ですから、国内発生に火が付く・・・なんてことにはならないにせよ、これが媒介蚊飛び回るニッポンなら(昨年代々木公園で突き付けられたような)別のストーリーになるわけで、「よその先進国でこういう事も起こっている」と認識しておくのは重要なことです。

図:上がネッタイシマカ、下がヒトスジシマカ

ソースはoutbreaknews

http://outbreaknewstoday.com/united-kingdom-huge-increase-in-chikungunya-due-to-caribbean-and-south-america-travel-13860/

United Kingdom: Huge increase in chikungunya due to Caribbean and South America travel

Posted by on March 22, 2015 // Leave Your Comment

 

 

 


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チクングニヤ熱は日本人に人気リゾートにも

2015-03-23 09:19:37 | チクングニヤ熱

130万超えになってしまったカリブのチクングニヤ熱。コロンビアの激増が話題になっていますが、メキシコにも注目。日本人によく知られた地名が登場しています。

  • メキシコGuerrero州で少なくとも79例のチクングニヤ熱確認。うち70%以上が、国際的リゾート、アカプルコで発生。
  • アカプルコ以外の発生地は15 in the region of Costa Chica, six cases in Zihuatanejo and two more in Petatlán。
  • 沿岸部で啓発キャンペーン、蚊対策キャンペーンを展開予定。
  • メキシコでチクングニヤ熱の国内感染は2014年10月から発生している。
  • PAHO報告によれば、メキシコ全体で国内感染例405例、輸入例21例報告。

チクングニヤ熱、日本では4類感染症に指定され、先週〆切の媒介蚊対策パブコメにもしっかりその名が入り現実の脅威として扱われています。
しかし、現実には、その国内拡大の確率は、日本に”タネ”となる輸入例がどれぐらい入るかに左右されます。デング熱が昨年(おそらく今年以降も)燃え上った(燃え上がる)背景には、経済界の「チャイナ・プラス・ワン」の潮流により、さらにビジット・ジャパンキャンペーン、相次ぐLCCの新規就航等々により東南アジアとの行き来が激増していることが背景にあります。

そんなことを考えると、ほとんとの日本人が聞いたことのない地名で起こっているのに比べ、「地球の歩き方」で推奨されている人気リゾートで多発しているのは、日本発生への距離がぐっと近づく事象なわけで、非常に気になります。

 ソースはoutbreaknews
http://outbreaknewstoday.com/mexico-chikungunya-cases-top-400-dozens-reported-in-acapulco-15359/

Mexico chikungunya cases top 400, dozens reported in Acapulco

Posted by on March 21, 2015 // Leave Your Comment

Guerrero, Mexico map/Yavidaxiu

アカプルコ案内
メキシコ観光局
http://www.visitmexico.com/ja-jp/acapulco

地球の歩き方
http://www.arukikata.co.jp/city/ACA/

 


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チクングニヤとリウマチは鑑別困難?

2015-03-22 10:03:24 | チクングニヤ熱

将来の日本国内感染も懸念されているチクングニヤ熱、その症状はリウマチの診断基準を満たしてしまっていて、鑑別はよっぽど注意しなければならないとの報告。

  • ワシントン大チーム@Arthritis & Rheumatology
  • St.Louisからハイチに旅行後、チクングニヤ発症した10例の検討。
  • 10例中7例が、米国リウマチ医学会の診断基準を満たしてしまっていた(=なにも考えずに診断基準にあてはめて診断すると、誤診してしまう)。リウマチの症状とは、圧痛・関節腫脹・数時間継続する朝のこわばり・結節・疲労・発熱・体重減少
  • したがって、渡航歴の聴取が重要になる。カリブ・南米・アフリカ・インドなど流行地への渡航歴聴取は必須。
  • また、突然の関節痛発症や高熱など、リウマチでは典型的でない症状があれば要注意。
  • チクングニヤ熱は米国でも3州25例の報告がCDCにあり今後米国中に拡大してゆくと予想される。だからもっと良い診断・予防・治療法を開発しなければならない(“We’re anticipating that Chikungunya virus will spread broadly in the United States, so it’s important to develop better tools for diagnosis, prevention, and treatment,” )

たしかに、関節痛をうったえて一般医療機関を受診したら、まず多くの整形外科医やプライマリケア医の頭にうかぶのはリウマチでしょう。ここらへんの情報発信、日本でも求められてゆきます。

ソースはinquisitr
http://www.inquisitr.com/1938890/rheumatoid-arthritis-symptoms-mimicked-by-mosquito-born-chikungunya-virus/

Rheumatoid Arthritis Symptoms Mimicked By Mosquito-Born Chikungunya Virus
Rheumatoid arthritis symptoms
 

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カリブのチクングニヤ大流行から教訓いろいろ

2015-03-19 15:36:56 | チクングニヤ熱

 カリブ海諸国で一向におさまらずコロンビアで20万人突破してしまったチクングニヤ熱。気候変動も一因と。

  • 61歳女性の述懐。ある日、寝ていると、突然片膝の痛みで目が覚めた。数時間中には反対側の膝、そして手足の関節へと広がった。
    あの痛みは本当に激しかった。いま、子供を出産したときの痛みと、チクングニヤの痛みとどちらかひとつとれと言われたら、出産の痛みをとる。出産の痛みより激しかった
  • カリブ海諸国のチクングニヤは、この15か月ほどの流行。おそらく、アジアからやって来た感染者から感染が拡がったものと思われる。
  • 気候変動も一因と思われる、雨量が増え、洪水が起こった。特に、2013年12月の東カリブのクリスマス大洪水。
  • 雨季には特に増える。水がたまった容器があちこちに出現し、媒介蚊も増え、多くの人々が(天気がこんなだから)そういう事に気を配らなくなる(a lot more people not taking care of the environment because of the weather)。
  • 一般的に、気温が高いほど蚊は早く成長し、雨がふれば、よりたくさんの蚊が生まれてくる。いま、チクングニヤの発生は少し減っているが、5〜6月に雨が降るようになってくると蚊にとって好適な環境になる。
  • いまやるべきことは、蚊の個体数を少数にとどめること。乾季のあとには雨季がくることを考えれば、移行期のいま、集中的に蚊対策をしなければならない。雨季が始まり最初の2週間にボウフラが増える前に、蚊の卵を処理しなければならない。それが出来れば蚊の個体数は増えずに感染が防げる。
  •  多くの国による媒介蚊対策は、ボウフラと成体に対する殺虫剤使用に頼っているが、これに懸念する。殺虫剤の長期使用の結果、多くの殺虫剤の効果が減弱する可能性があるから。蚊の棲息地をなくすことに焦点をあてるべきである。
  • カリブ諸国での流行はまだ1年目なわけで、どのような疫学パターンになるのか把握するにはまだ数年かかる。

 チクングニヤに必要なことがコンパクトにまとまった良記事ですね。

チクングニヤの関節痛は陣痛より苦痛である。
アジアからやって来た感染者からあっという間に100万越え、国家非常事態宣言までいってしまう
雨季がはじまり最初の2週間が勝負
殺虫剤ばかりに頼るのは危険

教訓は多いです。

http://www.caribbeanlifenews.com/stories/2015/3/2015-03-11-ips-chikungunya-cl_2015_3.html

Chikungunya thrives with climate variability in the Caribbean


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米国チクングニヤの現状@2015.3

2015-03-16 11:12:36 | チクングニヤ熱

米国のチクングニヤの現状。
2015年に入ってから55例。
報告されている州は下の地図のとおりです。今のところ全部輸入例。

昨年2014年は、2481例で、うち11例が国内感染@フロリダ州でした。

ソースはoutbreaknews
http://outbreaknewstoday.com/us-reports-55-imported-chikungunya-in-2015-to-date-89590/

US reports 55 imported chikungunya in 2015 to date

Posted by on March 12, 2015

 


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チクングニヤ熱、昔の名前は・・・

2015-03-12 11:01:13 | チクングニヤ熱

いくつかの国家非常事態宣言をふくめ人類を悩ましているチクングニヤ熱。
これまでの経緯を紹介するペーパーです。

  • チクングニヤ熱はアメリカ大陸に200年ぶりに戻ってきた。
  • このウイルスはアフリカの動物環のなかで生き延びてきたが、40〜50年サイクルでヒトの世界でパンデミックを起こしてきた。
  • 1823年にアフリカのザンジバルで発生し、1827年にはカリブ海諸国から、北米南米へと拡がった。ザンジバルでは、悪霊によるけいれんを意味するスワヒリ語のkidenga pepoという名前で知られた。
  • キューバでは「(旧)デング」と呼ばれた。
  • 18世紀中に、「(旧)デング=チクングニヤ」は、「(現在の)デングであるbreakbone fever」と区別されるようになった。
  • 20世紀になり、実験の成功、「(現在の)デング」の名前づけがなされた。
  • 1952年にタンザニアの流行で、チクングニヤウイルス再現。元の「(旧)デング」の名前を失い、「(現在の)デング」にその名を明け渡した。

かように、チクングニヤ熱とデング熱は名前を交換までしながら近親関係を続けてきたようです。今夏の日本では、デング熱再来とともに、チクングニヤ熱の国内感染を懸念する声もちらちら聞いたりします。セットで追いかけてゆきましょう。

ソースはCDC
http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/21/4/14-1723_article

Volume 21, Number 4—April 2015

Perspective

Reappearance of Chikungunya, Formerly Called Dengue, in the Americas

Author affiliation: Uniformed Services University of the Health Sciences, Bethesda, Maryland, USA
 
写真ソース:フォト蔵

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チクングニヤ熱増えてるのはホンデュラス・プエルトリコ・パラグアイ

2015-02-28 21:11:45 | チクングニヤ熱

チクングニヤ熱27日付 WHO PAHO報告。猛烈なペースではなくなりつつありますが、依然として増加国。

国内感染(autoctonous case)に限ってみると

2/20⇒2/27比較(suspect+confirmed)

ホンデュラス 5347⇒6903例
プエルトリコ 29016⇒30716例
パラグアイ  36⇒129例

カリブ全体で、それぞれの国内感染合計 1244622⇒1247400例。

マレーシアのデング熱増加とともに気になるところです。

ソースはPAHO
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_topics&view=article&id=343&Itemid=40931&lang=en

 


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気温と降水量からチクングニヤ熱の流行が予測できるかも

2015-02-28 19:13:10 | チクングニヤ熱

カリブ海諸国でなお感染者数増加がとまらないチクングニヤ熱。

これからどう展開してゆくのか。

降水量と気温の変化をプロットして数値モデルにあてはめて・・・とやってゆけば、予測できるかもしれないという報告。

全文アップされているので理解できる方はどうぞ。

URL
http://currents.plos.org/outbreaks/article/estimating-drivers-of-autochthonous-transmission-of-chikungunya-virus-in-its-invasion-of-the-americas/#ref20

Estimating Drivers of Autochthonous Transmission of Chikungunya Virus in its Invasion of the Americas

February 10, 2015·

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