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大雪山

2009-07-20 00:21:30 | 大雪山 遭難


大雪山系遭難:前例ない10人死亡 夏の大雪山系で惨事 /北海道

7月18日11時0分配信 毎日新聞
 ◇日程やガイドなど慎重に捜査--道警
 大雪山系のトムラウシ山と美瑛岳で10人が亡くなった山岳遭難事故は、夏山では前例のない惨事となった。過去の山岳遭難を巡っては、ガイドが業務上過失致死罪に問われて有罪になったケースもあり、道警はツアーの日程が過密でなかったか、ガイドのツアー客引率が適切だったか--など慎重に調べる。
 登山ツアーの遭難事故でガイドの刑事責任が問われた初のケースは、99年9月の羊蹄山(1898メートル、後志管内倶知安町など)遭難事故。男性ガイドが関西の登山ツアー客の女性2人を凍死させたとして業務上過失致死罪で起訴された。
 裁判ではガイドに注意義務違反があったか否か、凍死は予見可能だったか--が主な争点になった。札幌地裁は04年3月、「2人が集団から離れたことに気づいたが、遅れて来ると考えて登山を続け、道に迷わせ凍死させた」として、ガイドに禁固2年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
 また、トムラウシ山で02年7月、台風が接近して風雨が強かったにもかかわらず、男性ガイドが福岡県の女性ツアー客に増水した川を渡らせ、客が凍死した事故も刑事裁判になった。札幌地裁は04年10月、ガイドに禁固8月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
 今回のトムラウシ山の遭難事故では、悪天候にもかかわらずガイドは予定通りに出発し、ツアー客の一人は「無謀だと思った」と話した。美瑛岳でもガイドが同様の判断をしていた。現時点では当時の詳しい状況は不明だが、北海道山岳ガイド協会幹部は「検証は必要」と指摘する。
 ◇本州の登山者は「軽装」 気温急変に対応できず
 遭難者はいずれも本州からの登山ツアー客だった。本州ではある程度の登山経験があったとみられるが、北海道は夏でも気温が氷点下になる。専門家は本州と北海道の夏山に対する認識の違いが遭難につながった可能性もあるとみている。
 札幌市内で登山用品小売業を営む栃内(とちない)譲さんは「道内の登山者ならば、普段の生活で『夏でも寒くなる』ことを知っているので、夏山にもフリースを持っていく。しかし、本州のツアー客の認識は異なる」と指摘。道内の夏山は本州からの登山ツアー客が目立つが、栃内さんは「軽装で出かける人が多いような気もする」という。
 また、北海道山岳ガイド協会の川越昭夫会長は「中高年の趣味として手軽という登山の一面が裏目に出た」と話す。警察庁によると、08年の山岳遭難は1631件(前年比147件増)、遭難者は1933人(同125人増)。年代別にみると、中高年の登山ブームを反映して、60代が576人で最も多く、50代が370人、70代が340人--と続く。40歳以上の中高年は1567人に達し、全体の81・1%を占めている。川越会長は「中高年は『自分はまだ若い』という気持ちを捨てきれない。晴れている時はよいが、天候が崩れると、やはり、体力がなく、低体温症に陥りやすい。中高年の登山は体力的に無理のない計画と十分な事前準備に配慮する必要がある」と警鐘を鳴らす。
 ◇ツアー業者に安全対策求める--高橋知事
 高橋はるみ知事は17日、「道内の山は夏でも気象の変化が激しく、十分な装備と経験、体力を必要としている。このことを周知していく必要がある」と述べ、登山ツアー業者に安全対策を徹底するよう通知する考えを明らかにした。
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 ◇遭難・救出ドキュメント
 ■トムラウシ山
 ▽16日
午前5時半ごろ 18人のパーティーが大雪山ヒサゴ沼の避難小屋を出発。トムラウシ山山頂を目指す
同11時ごろ  トムラウシ山頂付近で女性が体温低下で動かなくなる。男性ガイド1人が付き添い、残る16人は下山
正午ごろ    山頂付近で別の女性も体温低下で意識不明。この女性を含む女性3人と男性2人の計5人でビバークを始める
午後3時55分 男性ガイド1人と2人が5合目まで下山。110番で救助を要請
同4時45分  ビバーク中のガイドからツアー会社に「下山できない。救助要請します」とメールが届く
同5時15分  同じガイドからツアー会社に「4人ぐらいダメかもしれないです」とメール
同11時45分 道が自衛隊に災害派遣要請
同11時50分 広島市のツアー客の男女2人が登山口付近に自力で下山
同11時59分 先に下山していた2人が登山口に到着し道警救助隊員と接触
 ▽17日
午前0時55分 仙台市の女性と山口県岩国市の男性が登山口に自力で下山
同3時55分  道警山岳救助隊や自衛隊鹿追駐屯地などの約40人がトムラウシ山の捜索を開始。道警と自衛隊のヘリコプターも出動
同4時35分  トムラウシ山の中腹で倒れている女性を発見。ヘリコプターで収容。後に死亡確認
同4時45分  愛知県清須市の男性が自力で下山
同5時ごろ   中腹で別の女性を発見、ヘリコプターで収容。後に死亡確認
同5時10分  下山中の浜松市の女性を発見し、ヘリコプターで救出
同5時35分  頂上付近で意識不明の男性を発見、収容。後に死亡確認
同5時45分  頂上付近でビバークのためテントを張り、手を振る登山者を発見
同6時半ごろ  頂上付近で女性1人を救助。意識なし
同6時50分  頂上付近で男性3人、女性4人を救助。このうち、男性1人、女性3人が意識なし。後に死亡確認
同9時半ごろ  自衛隊が頂上付近で、単独で登山していた茨城県笠間市の男性の遺体を発見
同10時45分 中腹の残雪地帯で、最後の行方不明者となっていた男性ガイドが倒れているのを別の登山客が発見。命に別条はなし
同11時20分 死者5人と生存者5人のヘリ搬出完了
正午      捜索活動を終了
 ■美瑛岳
 ▽16日
午後5時50分 茨城県つくば市の登山ツアー会社から道警に「美瑛岳にいるパーティー6人のうち、女性客1人が低体温症で動けなくなったようだ」と連絡
同6時     消防防災ヘリ要請
同8時26分  美瑛町役場関係者、消防、警察の計9人の救助隊が登山開始
同9時20分  道警山岳救助隊などが美瑛富士の登山口から美瑛岳へ向かう
 ▽17日
午前0時40分 美瑛富士の避難小屋で、救助隊が美瑛岳で遭難した6人のうち3人を保護。その後、同所から約2キロの地点でビバーク中の3人も発見。避難小屋で兵庫県姫路市の女性の死亡を確認。他の5人は命に別条なし
同3時     救助隊2次隊6人が出発
同5時04分  ビバークしていた男女2人が消防防災ヘリで救出される
同6時33分  避難小屋の女性の遺体をヘリで搬送
同7時10分  残る3人が救助隊とともに下山開始
同9時50分  美瑛富士登山口に無事、到着

7月18日朝刊

出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090718-00000001-mailo-hok


社説:大雪山系遭難 ツアーの安全徹底を

 北海道大雪山系のトムラウシ山と美瑛岳で登山者の遭難が相次ぎ、10人が死亡した。山岳史上に残る記録的な惨事である。遭難時の山系周辺の天気は大荒れで、冷え込んだ上に強風が吹いていたという。犠牲者は雨にぬれて体温を奪われ、低体温症などに陥ったとみられる。

 遭難したのは計25人。このうち単独行の死者以外は、別々の観光会社が募集した2組のツアー登山者のパーティーだった。道警も関係者の事情聴取を始めたばかりで、具体的な登山計画や遭難時の状況などについてははっきりしていないが、荒天下で避難小屋から出て遭難したとの証言もあり、同行していたガイドの判断や計画にミスや無理がなかったかどうか、今後の教訓とするためにも、慎重に見極める必要がある。

 ツアー登山は、最近の登山ブームを背景に人気を呼んでいる。複数の観光会社が競い合うように企画、募集しており、インターネット上には広告があふれている。登山口の最寄りの空港や駅前などで即席のパーティーを組み、ガイドが引率する。下山後は温泉に泊まる企画も目立つ。同行者を見つけにくい登山ファンには便利で、仲間を見つける楽しみもあるという。

 旅行会社側は参加者の登山経験や体力に応じたコースを設けたり、装備や服装などについても事前に指導している様子だが、気心が知れず、体力差もある参加者が寄り集まったパーティーならではのハンディは否めない。慣れぬ仲間と同行すれば、余分な体力も消耗する。ツアー参加費を徴収し、下山後の宿舎まで予約している場合、ガイドらが天候の急変などに即応して計画を変更できるかどうかにも疑問なしとしない。同種のツアーを運営する旅行会社には、安全を徹底する義務と責任がある。企画の総点検を求めたい。

 警察庁によると、昨年中の山岳遭難は1631件、1933人で記録が残る1961年以降の最悪となり、死者・行方不明者も281人を数えて最多となった。遭難者の8割以上を40歳以上の中高年が占めているだけに、今回の遭難を機に中高年の登山の危険性を指摘する声が高まる可能性もあるが、だからと言って、中高年がことさら萎縮(いしゅく)する必要はあるまい。登山には危険が伴う。若者だって遭難する。最近の遭難者に中高年が目立つのは若者層のファンがめっきり減っているせいだ。

 ただし、山を愛するならば、これまで以上に慎重に計画し、入念に準備し、体力も見極めてから山に向かいたい。登山の喜びを多くの若い世代に伝えるためにも、中高年の登山者には率先して事故のない楽しい登山を心掛けてもらわねば困る。

出典:http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20090718k0000m070128000c.html?inb=yt


北海道・大雪山系遭難:「収容者、意識なし」/本州の客、目立つ軽装(その1)
 ◇ヘリ無線、切迫の声
 ◇救助の男性「寒かった」

 北海道大雪山系トムラウシ山と美瑛岳の遭難は2パーティー、1個人の計10人の死亡が確認され夏山としては過去に例がない大規模遭難となった。夏でも水が凍るといわれる大雪山系で、助かった男性は「寒くて死にそうだった」と振り返る。悪天候の中で予定を強行した判断に疑問を呈する声も上がる中、大雪山をよく知る地元の山岳関係者ですら「これほどの事故は記憶にない」とうめいた。

 「午前4時36分、道警ヘリが男女2人を発見」「ヘリに収容、女性は心肺停止、男性は意識不明」--。

 遭難の一報から12時間余りが経過した17日午前4時40分。前日の暴風雨が静まったトムラウシ山登山口(新得町)の現地対策本部では、無線から切迫した声が次々と流れた。「これはダメかもしれない」。救助隊を指揮する西十勝消防組合の幹部がつぶやいた。

 約10分後、無線で伝えられた男女2人のうち、女性を収容したヘリが登山口の空き地に着陸。ヤッケを着て、フードを頭からスッポリとかぶった女性が道警の機動隊員に抱きかかえられて降ろされ、救急車へ運ばれた。

 続いて別のヘリが、登山道で救助した女性を乗せ着陸。女性は報道陣のカメラの放列を避けるように顔を手で覆い、小走りで道警が用意したワゴン車に乗り込んだ。最終的にトムラウシでの死者は、パーティー8人、個人1人の9人に達した。

 大雪山系は標高2000メートル級が続く。1500メートルを超えると大きな木は生えないため、強風が吹くと遮るものがない。今回のツアー客も強い風雨にさらされ、体感温度が一気に低下したとみられる。

 無線は「収容者は意識なし」と最悪の事態を告げる内容ばかり。救助に出動した新得山岳会の小西則幸事務局長は「テントを持たず、山小屋を利用する縦走では小屋の設置場所が限られ、どうしても行程に無理が生じる。こうしたことに悪天候が重なり、事故を招いてしまったのではないか」と推測する。

 悪天候の中で登山に踏み切ったガイドの判断ミスを指摘する声も上がった。午前4時半ごろに下山したツアー客の戸田新介さん(65)=愛知県清須市=は15日の晩に泊まったヒサゴ沼避難小屋を出発する時、風が強いと感じたといい、「ガイドは出発すると判断したが、無謀だと思った」と話す。遭難時の様子については、「寒くて死にそうだった。ガイド1人が付き添って下山を始めたが、ペースが速すぎてちりぢりになってしまった」という。こうした判断について北海道山岳ガイド協会の幹部は「ガイドはツアー客を目的地まで安全に連れていくことが務め」と前置きした上で、「本州からのツアー客を案内する場合、旅程が詰まっており、帰りの航空便の時間にプレッシャーを感じる。16日朝、出発時に悪天候の空を見上げて、難しい判断を迫られたはず。現段階で判断の良い悪いを問えないが今後の検証は必要だ」と指摘した。

 一方、美瑛岳では午前6時半、1人の遺体がヘリで収容された。その後、下山した女性は「とにかく寒かった」とぽつり。

 ツアー客のポーターを務めた男性は「十勝岳を越えたあたりからだんだん風が強くなった」と話す。ツアー客が寒がり始め、動きが鈍くなり、夕方前にはガイドも低体温症の症状を訴えるようになったという。予定を続行したことについては「視界は悪くなかった。ガイドの判断なので……」と言葉少なだった。
 ◇「最後の登山」暗転 名古屋・川角さん、年齢制限前に

 大雪山系トムラウシ山の登山には東海地方では、愛知県から5人、岐阜県から1人がツアー客として参加していた。うち2人は無事が確認されたが、60歳代の記念に参加、悲劇に見舞われた人もいた。

 ツアーを企画したアミューズトラベルの名古屋支店(名古屋市中村区)の井上高広支店長によると、同支店から申し込んだのは愛知県や岐阜県の8人。ツアーは上級者コースで、70歳以下の年齢制限と過去に同社のツアーに参加した登山歴などが参加条件になっていた。井上支店長は「主催者として大変残念で申し訳ない」と話した。

 遭難した名古屋市守山区の味田久子さん(62)方では、夫が「先ほど北海道警から死亡連絡があった」と声を詰まらせた。味田さんは一緒に遭難した、名古屋市緑区の川角夏江さん(68)と登山仲間。夫によると、川角さんが間もなく70歳になるため「最後の山登りをしたい」と話していたといい、「自分も体力のあるうちに」と同行を決めた。夫は「13日に元気に出発していった。16日深夜に旅行会社から遭難を伝える電話があり『状況が分かり次第、連絡する』ということだったが、朝まで何も言ってこなかった。17日夜には戻るはずだったのにとても残念だ」と話した。

 川角さんは長男修一朗さん(34)と次男(34)の3人暮らし。夫と事故で死別し、幼いころから2人を育て上げてきた。

 登山を始めたのは10年以上前。北海道での登山は初めてで、出かける前に「年齢的にこれが最後の大きな登山になる」と話していたという。川角さんは、23日には69歳の誕生日を迎えるはずだった。修一朗さんは「亡くなったと連絡があった時は頭が真っ白だった」と口元を押さえた。

 一方、岐阜市から参加した野首功さん(69)、愛知県清須市の戸田新介さん(65)は無事が確認された。野首さんの妻(62)は「一緒に登っていて亡くなった方が本当にお気の毒です」と話した。野首さんはトムラウシ山はあこがれの山だったといい、「70歳になる前に」と今回のツアーに参加した。【中村かさね、稲垣衆史、石山絵歩、飯田和樹】

出典:http://mainichi.jp/chubu/newsarchive/news/20090717ddh041040007000c.html

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