言葉って面白い!

この日本語、英語でなんていうの?その奥に深い文化の違いが見えてきませんか。

凜とした

2008年09月23日 | 言葉
「凜とした」という言葉があります。
態度や姿がきりりとしまっていて、一本筋が通ったような厳しさを兼ね備えている様子です。

ただ漫然と与えられた仕事をするのではなく、自分の信念と誇りと目的意識を持って、打ち込む姿は「凜とした」人でしょう。
他者におもねることなく、かといって自己顕示を強くするわけでもなく、筋を通す生き方も「凜とした」生き方と言えるでしょう。

もともと「凜」という漢字に、氷や冷水を表す「二水」が使われているように、「凜と」は、氷に触った時のような身の引き締まる思いが元の意味です。
男性にも女性にも使い、単に顔や姿の表面的な様子を言うのではなく、多分に内面的な精神を重んじた単語です。
近い言葉である「凛々しい」が男性的な勇ましさを強調しているのに対し、「凜とした」はむしろ女性に使う方がその意味が際立つかもしれません。

さて、この言葉、英語にはとても訳しにくい言葉です。
和英辞典を引いてみると、例文の中で、
Commanding and imperious 
などと訳されていますが、「凜と」という日本語のニュアンスに比べると高圧的なイメージの言葉で、かなり表面的な表現に留まっています。
親戚語の「凛々しい」を引くと、manly と訳されていました。
「男らしい」というわけです。

どれも訳としては不十分です。

例えばcommandingは、他者に命令する、という意味から派生して「威厳のある」などの意味が出ています。
他者との関係性の中で、他者を圧倒するような強さを持っている、という意味合いです。
Manlyは、当然女性との比較の中で「男らしい」という言葉が出てきたわけで、これも他者との比較の産物です。
日本語の「凜とした」という言葉は、内面的です。他者との関係や比較ではなく、自分がどう生きるか、という姿勢を表す言葉です。

「禅」や「武士道」といった精神性を生み出した日本ならではの言葉かもしれません。
コメント
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