言葉って面白い!

この日本語、英語でなんていうの?その奥に深い文化の違いが見えてきませんか。

焼き鳥の話

2008年09月21日 | 食の話し
秋祭りの季節です。
我が家の近所の神社も、秋には境内と地元の商店街に屋台が並び、大勢の人でにぎわいます。
友人らが集まり、夜店を見て歩くのも楽しみの一つ。
お好み焼き、トウモロコシ、焼き鳥、ラムネ、たこ焼き…。
お世辞にもおいしいものではありませんが、祭りの夜店で買うと独特の郷愁を感じます。
21世紀の東京にも、200年前の江戸情緒が辛うじて残っている時間かもしれません。

焼き鳥食べよう!と、友人と繰り出した秋祭り。
最近英会話を始めたそうで、何でも英語にしてみたい時期のようです。

「焼き鳥って何ていうの?」
「英語でYakitoriで通じるんじゃないの?」
「でもあえて英語でいえば…」

友人は、少し考えてからこう言いました。
「burning bird…かな」

「焼き」をburn、「鳥」をbirdと直訳したのです。
それを聞いたみんなは大爆笑。
burning bird、というと、羽や胴体に火がついて慌てて羽をバタバタ羽ばたかせている鳥を想像します。
漫画の一コマのような滑稽な絵です。
おかげで愉快な秋祭りになりました。

ところで、ちょっと立ち止まって考えてみると、この誤訳には、背景に面白い東西の食文化の違いが二つ、見て取れます。

一つは「焼く」という言葉。
日本語では、料理でなく「火をつけて燃やす」ことも「焼く」と言いますし、料理で魚や肉に熱を入れることも「焼く」と言います。
非常に広い意味を持たせています。

一方英語では、調理の用語としてburnは使いません。
何かに火がついて燃えること一般を指し、料理でburnを使うと「焦がしてしまう」という意味になってしまいます。
片や、料理の時には、grill、toast、roast、fry、bakeなど、実に多くの単語を使って「焼く」を言い分けます。

もう一つは、「鳥」という言葉。
日本語では、飛んでいる鳥も、皿の上に乗った鳥も同じく「鳥」と言いますが、英語では、鳥肉のことをbirdとはいわず、chickenと別の言葉を使います。
同じ現象は、牛肉や豚肉などにも見られます。
cowとbeef、pigとporkは使い分けられています。

「焼く」と「鳥」。
二つの言葉の日本語と英語の違いは、肉食文化の西洋とそうでない日本の違いを端的に表していると思います。

西洋は古くから「肉を焼く」ということが料理の根底にありました。
一方、仏教を導入した日本では肉食は長い間禁じられ、魚や野菜を煮たり炊いたりして食べる食文化が基本でした。
そのため、言葉が英語ほど細分化されていないと思われるのです。

食文化は、人間の生活の最も基底にあるものです。
そこから生まれる言葉が、国によって大きく異なるのも不思議なことではないでしょう。










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