雷桜 (2010)

2010-10-31 11:36:19 | Weblog
雷桜 (2010)

U.S. Release Date:

■監督:廣木隆一
■原作:宇江佐真理『雷桜』(角川書店刊)
■キャスト:蒼井優/岡田将生/小出恵介/時任三郎/柄本明/宮崎美子
■音楽:大橋好規
■字幕:
■お勧め度:★★★(★)

 「宇江佐真理の同名時代小説を「ホノカアボーイ」の岡田将生と「百万円と苦虫女」の蒼井優主演で映画化。江戸時代の山あいの村を舞台に、ある事件が原因で深い山の中で野性的に育てられた奔放な少女と将軍の血を引く孤独な青年が繰り広げる身分を越えた純愛とその顛末を描く。監督は「ヴァイブレータ」「余命1ヶ月の花嫁」の廣木隆一。
 将軍家に生まれ、重い宿命を背負いながらも心に病を抱えて生きる孤独な若い殿様、清水斉道。家臣・瀬田助次郎が語る“故郷の瀬田村には天狗がいる”という話に興味を持ち、静養のため瀬田村へと向かう。道中、“天狗の棲む山”にさしかかると、家臣の制止を振り切り、ひとり山へと馬を走らせる斉道。そこで出会ったのは雷という山育ちの若い娘だった。天狗の正体が雷と知り、そのことを助次郎に話したところ、助次郎は乳飲み子の頃に藩の政争に巻き込まれ掠われた妹の遊に違いないと確信する。晴れて村に戻り斉道と再会する雷。身分がどういうものかも分からないことで殿様相手にも心の赴くままに接していく雷だったが…。」(allcinema.net/より。)

小説として何日もかけて読んだら、かなり内容があって、先の展開も分からない部分もあって面白いだろうが、2時間ちょっとの映画作品にするのはちょっと無理があったような。テーマが多すぎる。「純愛」といっても果たしてそうだろうか。主人公(?)の「殿様」は母親が精神障害ぎみだったのだろうか、1シーンだけ(幼児)虐待される部分があって、その悪夢に苦しみ、「雷」の母親の台詞だったかで、「愛情は人を育てる」というのがあって、「殿様」が最初に「雷」に合った時は、おそらくは山育ちで自分には無い強さを感じたのじゃないだろうか。その後で、これが愛情に昇華したような。これで「殿様」の病気が治るという展開。それと運命(さだめ)の問題。「殿様」は運命があることを知っていて、「雷」との関係で自分の運命に逆らおうとするが、山育ちの「雷」は、動植物の死は知っていても、人としての運命があるという事が分からなかったのじゃないか。(最後の別れでそれを知ることになる。)「雷」の育ての親(時任三郎)の問題もある。彼は藩の命令で幼い「雷」を誘拐し、殺すことを命じられるが、雷(かみなり)が落ちても笑顔の「雷」を見て、藩士としての身分(=運命)を捨て、「雷」を自分の娘として育てることにし、そのことで人らしい生き方を見い出す。そして多分、3つ目のテーマは、果たして愛は運命を超えられるか、だろうが、これに対する原作者の考えは、どっちとも取れる。短い期間ではあっても愛情で結ばれた二人、しかし運命のために別れることになる。ラストからすると、運命に従うことで愛を失い、悲しい人生を歩むことになった「殿様」、これに対し「殿様」の思い出を生涯、大事にし、子宝にも恵まれた「雷」。強いていえば、愛を捨てて運命に従ったのが過ちだった、というのが原作者の考えのように思われるが、逆らえない運命もあるという事も、テーマになっている。これは批判ではなくて、最初に戻るが、何日もかけて読めば、考える時間と余裕があるだろうが、2時間ちょっとの映画作品で見てしまうと、その時間も余裕も無い。こうして見るとなんだか小説のプレビューみたいな作品になってしまっている。まあ、そういう映画作品があってもいいのだろうが、もうちょっとテーマを絞ることは出来なかったのだろうか。蒼井優の「天狗」はかなりな見所。馬、乗れるのだろうか、本物っぽい。運命オンリーの柄本明(「殿様」の家臣)の切腹シーンもかなり。ロケ地の山野の風景も。


ヒアリング度:
感動度:★★★
二度以上見たい度:★★
劇場で見たい度:★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★★★★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

エクスペンダブルズ (2010)

2010-10-23 15:33:15 | Weblog
エクスペンダブルズ (2010)
The Expendables

U.S. Release Date: 2010

■監督:シルヴェスター・スタローン
■キャスト:シルヴェスター・スタローン/ジェイソン・ステイサム/ジェット・リー/ミッキー・ローク/ドルフ・ラングレン/エリック・ロバーツ/ランディ・クートゥア/スティーヴ・オースティン/ジゼル・イティエ/(ブルース・ウィリス)/(アーノルド・シュワルツェネッガー)他
■音楽:ブライアン・タイラー
■字幕:林完治
■お勧め度:★★★

 「監督・主演を務めるシルヴェスター・スタローンが、ハリウッドのアクション映画を彩ってきたビッグ・スターたちを一堂に結集して撮り上げた痛快アクション大作。自ら消耗品“エクスペンダブルズ”と名乗る命知らずの最強傭兵軍団が陰謀渦巻く軍事独裁政権の転覆に乗り出し、壮絶な死闘を繰り広げるさまを怒濤の超絶アクション満載で描き出す。ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ミッキー・ローク、ブルース・ウィリスの豪華出演に加え、カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガーが久々にスクリーン復帰を果たしたことでも話題に。
 軍用銃のエキスパートであるバーニー・ロス率いる少数精鋭の凄腕傭兵軍団“エクスペンダブルズ”。ソマリアでの人質救出作戦を鮮やかに成功させた彼らに対し、さっそく新たな依頼が舞い込む。それは、南米の島国ヴィレーナを牛耳る独裁者ガルザ将軍の抹殺というかつてない困難な大仕事だった。すぐさま現地へ視察に向かったバーニーは、ガルザの実の娘でありながら民衆の苦境を見かねて反政府活動に乗り出したサンドラと出会う。その後アメリカに戻ったバーニーは、次第に見えてきたCIAの薄汚い思惑に嫌気がさして仕事から降りてしまう。その一方で、気丈に戦い続けるサンドラのことが放っておけず、単身でヴィレーナへ乗り込もうとするバーニーだったが…。(allcinema.net/より。)

上の「解説」はちょっと。ある男(ブルース・ウィリス)の依頼で「軍事独裁政権」のボスを殺す事を依頼されたエクスペンダブルズは、スタローンが副官のジェイソン・ステイサムと偵察に行き、現地のコンタクトの代わりの女(ジゼル・イティエ)、これが後で将軍の娘である事が分かる、と出会う。だが敵に見つかって帰る途中、港の敵を粉砕し、女も連れて行こうとするが断られる。この女のことが気になる(べつに惚れたわけではない)スタローン、単身で彼女を救いに島に戻ろうとするが、仲間もついてきてしまう。あとは将軍の背景に居る元CIA局員で、将軍を利用して麻薬で稼ごうとする本当のボスを殺すまで。アクションは凄い。コマ落としで撮ったのだろうか、アナログ的で迫力十分。武器も凄い。バズーカ砲なみのマシンガンとか。筋書きが適当なだけに、マジなアクション作品というより、コミカルさとスタイリッシュさに重点を置いた作品だろう。ジェット・リーは自分は小さいので、人の何倍も働かなくてはならない、だからもっと報酬が欲しいとか、居るのか居ないのか分からない家族の話しばかりしたり、アーノルド・シュワルツェネッガーは一場面だけ出演。スタローンの台詞で「あいつは大統領になりたいのだろう」。テーマやら考える部分は無し。観るだけ作品とも言えるが、アクションは見る価値ある。思えば殺しまくる(だけ)の作品というのはスタローンの「ランボー」が最初だったかもしれない。それ以降の戦争アクション作品をずっと見てきたスタローンとしては、特撮だらけの作品のつまらなさを見て、本作品を作ったのかもしれない。少なくとも、そのような感じがする。それにテーマが無いといっても、「ランボー」の場合のようなベトナム帰還兵「問題」を入れて、作品を変に難しくするより、観る価値のあるアクションだったら、本作品のような物の方が面白いかもしれない。しかしどっちにしろ劇場で観る価値十分、テレビで観る価値は無いだろう。


ヒアリング度:★★
感動度:★★★
二度以上見たい度:★★★
劇場で見たい度:★★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:★
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★
ムカつく度:
考えさせられる度:
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

ナイト&デイ (2010)

2010-10-16 16:33:25 | Weblog
ナイト&デイ (2010)
Knight and Day

U.S. Release Date: 2010

■監督:ジェームズ・マンゴールド
■キャスト:トム・クルーズ/キャメロン・ディアス/ピーター・サースガード/ヴィオラ・デイヴィス/ポール・ダノ
■音楽:ジョン・パウエル
■字幕:松浦美奈
■お勧め度:★★★

 「トム・クルーズとキャメロン・ディアスが「バニラ・スカイ」以来の再共演を果たしたアクション・エンターテインメント。平凡なヒロインがスパイの男と出逢ってしまったことから世界中をめぐる壮絶な逃走劇に巻き込まれていくさまと、2人の間に芽生えるロマンスの行方をコミカルかつスタイリッシュに描く。監督は「17歳のカルテ」「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」のジェームズ・マンゴールド。
 カンザスから住まいのボストンへの帰路に発とうとしていたジューンは、空港でロイと名乗る男性とぶつかる。彼とは機内でも近くの席になり、そのハンサムな笑顔に胸をときめかせるジューン。しかし、彼女が化粧室に入った瞬間、ロイは機内に潜んでいた敵一味と大乱闘を繰り広げる。そして、何も知らず席に戻ってきたジューンにパイロットを殺したことを告げると、パニックに陥る彼女をあやしながら見事に飛行機を不時着させるのだった。それ以来、ジューンが危険な目に遭うたび、どこからともなく救出に現われるロイ。そんな中、ジューンは彼がカンザスの研究所から重要な試作品を盗んだとしてCIAに追われる身であると知らされる。それでも彼女は自分の身を守ってくれるロイと行動を共にし、世界各地で過激な局面を切り抜けつつ事の真相を追究していくのだが…。」(allcinema.net/より。)

ミステリー的な部分としてはロイというCIAエージェントというか工作員はいいヤツなのか悪いヤツなのか、誰が本当に悪いヤツなのか、だろうが、これはほとんど最初から分かることで、雰囲気としてはドタバタ・コメディー。それに主演はキャメロン・ディアスで、彼女に合う相手役は誰かと探したら、最近、マジな役でも成功しているトム・クルーズだった、というのが本当の所だろう。「バニラ・スカイ」のキャメロン・ディアスは無表情の役でつまらなかったが、地だろうか、美人でスタイル抜群なのにも係わらず、こういう役は合っている。「イン・ハー・シューズ」だったか、「ホリデイ」だったか、コメディーっぽいロマンス物も良かったような記憶がある。アクションとしては「バイオハザード IV」が特撮だらけでつまらなかったのに比べると、アクション女優じゃないキャメロン・ディアスのアクションがかなりいいし、オリエント急行とかの、過去の(名)作を思わせるような、アナログ・アクションで、今、こういうのは、むしろ新鮮な感じがする。オマケ的な部分もかなりあって面白い。車の事は分からないのでなんだが、なんとかGTOをチューンアップしたやつは、今どきの日本式の丸型車に比べると、少し角っぽくて、車に興味がなくてもカッコいい。この車は今でもホットロッドで使われているのじゃないか。あるいはロイは工作員なわけだから、死んだ事になっている。最後の方でキャメロン・ディアスは、ある家を訪れるが、そこが実はロイの実家(Knight家)で、老いた両親は、なぜか懸賞やらによく当たる。実際のCIAもこういう形で職員の関係者の面倒を見ているのかもしれない。他に正式、合法的な方法は無いだろう。ラストがまた何となくいい。それまで助けられてばかりのキャメロン・ディアスが仕事に嫌気がさしたロイを助け出して、ロイの夢だったケープ・ホーンに向かい、ロイの両親にもケープ・ホーン行きのペアチケットが当たる。コメディーと言っても、こういう雰囲気。はっきり言ってテーマやらは何も無いが、ただ観るだけなら十分、楽しめる。

ヒアリング度:★★★
感動度:★★★
二度以上見たい度:★★★
劇場で見たい度:★★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:★★
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★
ムカつく度:
考えさせられる度:
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

大奥 (2010)

2010-10-09 16:29:59 | Weblog
大奥 (2010)

U.S. Release Date:

■監督:金子文紀
■原作:よしながふみ
■キャスト:二宮和也/柴咲コウ/堀北真希/大倉忠義/中村蒼
■音楽:志田博英
■字幕:
■お勧め度:★★

 「よしながふみの大ヒット少女漫画を“嵐”の二宮和也と「食堂かたつむり」の柴咲コウ主演で映画化した歴史改変時代劇絵巻。謎の疫病で男の数が激減し、男と女の立場が逆転した江戸時代という架空の設定の下、美男ばかり3000人が1人の女将軍に仕える女人禁制の男の園“大奥”を舞台に繰り広げられる愛憎渦巻く禁断の人間模様を緻密な考証で絢爛豪華に描き出す。監督は「木更津キャッツアイ」シリーズの金子文紀。
 正徳6年。謎の疫病で男子が激減し、男女の役割は逆転、将軍職も女子によって引き継がれている江戸時代。女人禁制の大奥では、3000人の美男が、将軍の寵愛を勝ち取るべく熾烈な競争を繰り広げていた。そんな大奥に足を踏み入れた青年、水野祐之進。この時代にあっても武士道を追い求める希有な彼は、困窮する家を救うため、そして身分違いゆえに叶わぬ幼なじみ・お信への愛を断ち切るため、大奥への奉公を志願したのだった。水野が大奥へあがって間もなく、八代将軍徳川吉宗が誕生する。不況の世を憂う吉宗は、質素倹約を進め、政治の大改革を断行していく。そんな中、吉宗初の大奥へのお目見えとなる“総触れ”の日を迎えるが…。」(allcinema.net/より。)

これを観ても原作がどうだったのか、なぜヒットしたのか分からない。推測としては男も女っぽく描いて、宝塚的な面白さがあったのだろうが、映画で男優が演じてしまうと、この面白さはなくなるし、趣味の問題もあるが、男同士の絡みなんて見ても気持ち悪いだけ。筋書き的にも何か変。水野祐之進(二宮和也)は最初から町人っぽく描かれていて、最後は町人で...。この「最後」というのも何か適当に考えたようで面白くない。原作とは全く違った風に映画化したような。これは期待に過ぎなかったが、いわゆる「大奥」物の面白さというのは、絢爛豪華な衣装と、女が男まさりの権力闘争を繰り広げる点だが、男がそれをやっているのを見ても何の面白さも無い。単なる当たり前。それも女っぽくやる訳だから、さらに気持ち悪いしつまらない。「お信」(おのぶ)とのラブストーリー性も中途半端な感じ。唯一盛り上がるのは、女将軍(柴咲コウ)の「寵愛」を受けて、その後で殺されるシキタリになっていた事を知った、その「夜」の時点で、将軍の名前もやはり「おのぶ」だと知って、それがきっかけ的に「お信」への思いを再認識する部分。これがクライマックスかと思ったら、その後で...になって「お信」とめでたく再会という無感動もの。それもこの時点では祐之進はすでに町人なわけだから、「病死」と告げられた両親と姉との関係はどうなるのだろうか。原作は分からないが、映画化しない方が良かったか、別の方法でやった方が良かった、というような印象しかしない。それと原作はシリーズなのだろうから、一方で「お信」への恋心を抱く祐之進と、彼を選んだ女将軍との間に、なんらかの「関係」があったのじゃないだろうか。これが数秒の会話で終わりになっている。


ヒアリング度:
感動度:★
二度以上見たい度:
劇場で見たい度:★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★
ムカつく度:
考えさせられる度:
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

十三人の刺客 (2010)

2010-10-01 08:12:23 | Weblog
十三人の刺客 (2010)

U.S. Release Date:

■監督:三池崇史
■(原作:池宮彰一郎)
■キャスト:役所広司/山田孝之/市村正親/松方弘樹/伊原剛志/平幹二朗/稲垣吾郎/松本幸四郎
■音楽:遠藤浩二
■字幕:
■お勧め度:★★(★)

 「63年の傑作時代劇を「クローズZERO」「ヤッターマン」の三池崇史監督が豪華キャストでリメイクした時代劇エンタテインメント大作。権力を笠に言語道断の蛮行を繰り返す将軍の弟を暗殺すべく集められた13人の刺客が、300人を超える軍勢を相手に壮絶な戦いに臨む姿を描く。主演は「パコと魔法の絵本」の役所広司、共演に山田孝之、伊勢谷友介、市村正親、稲垣吾郎。
 江戸時代末期。将軍・家慶の弟で明石藩主・松平斉韶(なりつぐ)の暴君ぶりは目に余った。斉韶は近く、老中への就任も決まっている男。幕府の存亡に危機感を募らせる老中・土井利位は、かねてより良く知る御目付・島田新左衛門に斉韶暗殺の密命を下す。さっそく、甥の新六郎をはじめ十一人の腕に覚えある男たちを集めた新左衛門は、後に加わる山の民・木賀小弥太を含む総勢十三人の暗殺部隊を組織、入念な計画を練り上げていく。しかし、斉韶の腹心・鬼頭半兵衛もまたその動きを抜け目なく察知し、大切な殿を守り抜くべく周到な準備を進めていた…。」(allcinema.net/より。)

最後のテロップでちょっと見たが、本作品の原作と言っても63年に脚本が書かれただけかもしれない。いわゆる小説とかではなく。その後、ボツになったのかもしれない。理由は分かる。筋書き的に問題がある。「暴君」と言っても松平斉韶はむしろ虐待マニアの精神異常者だろう。女の手足を切って、なぐさみものにするとか、意味もなく一家を、わざわざ弓矢で殺すとか。63年当時は、こうした事は単なる「悪者」と看做されたのだろうが、今では福祉関係の制度が充実したため、いわゆる精神異常は、むしろ病気として保護の対象となっている。「悪者」とは言えない。それを本作では無理矢理「悪者」としてしまっている。今の感覚からすると、むしろ何故、斉韶がこうした精神異常になったか、この事の方が興味の対象になるのではないか。したがって今的な感覚からすると、決して「悪者」とは言えない精神病者を殺すという、「問題」作品になってしまう。確かに筋書き的には、たった13人で200人の敵と対決するというのは面白いにしても、上記の事を考えたのだろうか。しかし考えたにしても他にやりようが無かったかもしれない。悪く言うと、いわゆる精神異常、精神病に無知な人々の無知さ加減につけ込んだ作品。作品としての出来はいい。最初の釣りのシーンが「静」で、次第に盛り上がり、最後の決戦シーンへと繋がる。ただし悲しいかな、日本的なチャンバラというのは、あまり見る所が無い。中国とかの決闘シーンだと、武術自体がダンスっぽいので、武術というよりダンス的に見て面白いが、日本(刀)だと、これは出来ない。結果的に月並みなチャンバラに終わってしまう。それも松方弘樹と市村正親以外は殺陣の経験はあるのだろうか。剣術自体、はっきり言ってハンパもの。それを意図的なリアルさとグロさでカバーしたきらいがある。決してつまらない作品ではないにしても、原作がボツになった理由を考えるか、大幅に「暴君」の性格なりを変えるべきじゃなかっただろうか。なんとなく「七人の侍」的な描き方がされているので、これのリメイクが目的だったのかもしれない。果たして作って良かったのかどうか、この点、一番、考えさせられる。まさか「13人対200人」が作品のキャッチフレーズとは思いたくない。それといつも思う事は、血筋さえ良ければ幕府の要職につけるという制度。こういう制度は普通、機能しないだろう。それの代わりに参勤交代やらの制度を設けたわけだが、これらは地方の大名の力を削ぐためのもので、幕府自体の強弱とは関係ない。それでも徳川幕府が250年(?)だかもったというのがミステリー。この点、なんとかして松平斉韶の性格なりに盛り込めなかっただろうか。むしろ単なるバカ(無能)殿の方が良かったような。まさか老中になってから「蛮行」を繰り返したら、それこそ幕府上部に暗殺されていただろう。なお本事件の20年後に徳川幕府は滅んだらしい。何もこの時に斉韶を暗殺する必要は無かった事になる。


ヒアリング度:
感動度:★★
二度以上見たい度:★★
劇場で見たい度:★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★★★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)