007/慰めの報酬 Quantum of Solace 2008

2009-01-31 23:01:23 | Weblog
007/慰めの報酬 Quantum of Solace 2008

U.S. Release Date: 2008

■監督:マーク・フォースター
■キャスト:ダニエル・クレイグ/オルガ・キュリレンコ/マチュー・アマルリック/ジュディ・デンチ/ジェフリー・ライト
■音楽:デヴィッド・アーノルド
■字幕:戸田奈津子
■お勧め度:★★

 「前作「カジノ・ロワイヤル」に引き続きダニエル・クレイグがジェームズ・ボンド役に扮した人気サスペンス・アクションのシリーズ第22作。本作は「カジノ・ロワイヤル」エンディングの1時間後から始まるというシリーズ中異例の続編。初めて運命を感じた女性を失い復讐心に駆られたボンドが、諜報員である自らの使命との間で揺れながら闇の組織へ立ち向かう姿をリアリスティックに描く。監督はこれが初のアクション作品演出となる「チョコレート」「ネバーランド」のマーク・フォースター。
 何者かの陰謀によって愛するヴェスパーを亡くし、復讐を誓ったボンドは、彼女を操っていたミスター・ホワイトを捕らえ、真相を究明すべく尋問する。そして、彼の背後には世界中の有力者や諜報機関をも取り込む巨大な組織が存在していることを知るのだった。その調査のため、まずハイチに向かったボンドは、そこでカミーユという謎めいた女性と出会う。さらに彼女を通じ、組織の幹部ドミニク・グリーンを突き止めるボンド。グリーンの表の顔は、環境保護のため土地を買収する慈善団体“グリーン・プラネット”のCEO。だがその裏では、ボリビアの土地に眠る貴重な天然資源の独占を目論み、それを機に世界支配を企んでいた。上司Mから、グリーンの陰謀を阻止する任務を私情を挟まず遂行せよ、と念を押されるボンド。ところが、カミーユも実はグリーンと共謀するボリビアの将校に愛する家族を殺され、復讐の機会を窺っていると知ったボンドは、彼女と共にグリーン打倒へ奔走していく。」
(allcinema.net/より。)

これだけワケの分からない「解説」は映画史上にあっただろうか、というのが観る前の感想。こりゃダメだと思って観たら、......。

分からないのは、なんで007を延々と続けなくちゃならないわけ?無理だらけだろうが。そもそも最初の数作がヒットしたのは当時としてはアクションが良かったし、Qの秘密兵器は奇抜だったし、美女、気の効いた台詞、それにもましてショーン・コネリーが演じたからだろう。第一段階として代役を探し、アクションは他の作品に取られ、秘密兵器はオモチャ同然、美女もいなくなって代わりを探し、原作もなくなって適当な筋書きを作り、本作にいたっては、パロディー版で超豪華キャストの「カジノ・ロワイヤル」(1967年)のヴェスパー・リンド(ウルスラ・アンドレス、「ドクター・ノオ」(1962)の「ボンド・ガール」で、パロディー版「カジノ・ロワイヤル」では最大の悪女)が、「女王陛下の007」(1969)の、テレサ(ダイアナ・リグ)との、シリーズ唯一の恋の物語りを借りた?前作の「カジノ・ロワイヤル」なんて誰が覚えているか。その1時間後から物語が?止めてくれ~!シリーズも。結局のところ、本来の007シリーズが面白かった要素を全部、取っぱらって、ボンド役に本物の役者のダニエル・クレイグ、M役に同じくジュディ・デンチを起用、前にも書いたがこのコンビはそれ自体はいいが、本来の面白さを全部、取っぱらって、リアルなスパイアクション物にすると、何も007でなくてもいい事になる。実際問題としても本作で「007」らしいのは「ボンド」と「M」が出てるだけで、後は知る人ぞ知るCIAのフィリックス・レイター。ただの追っかけっこやカーチェイスはつまらないし、ボートチェイスも過去の作品からの借り物。なんらかの理由があってこのシリーズを続けているのだろうし、そのために苦労している事は分かるにしても、結果が伴わない。たとえ初期の頃の作品が売れたにしても、売れなくなったら止めるのが普通だろう。例外的に「寅さん」や「釣りバカ」があるが、これはパターンで続けるという工夫があるから観られる。これが無いと、続けるだけが目的のシリーズとしか言えない。むしろ過去の007シリーズを一つも観たことが無く、最近のアクション、スパイ物作品も観たことが無い人が観れば面白い作品だろうが、そんな人が何人、いるか。居れば多少は面白く観られるだろうが。ネタ(本音)をバラせば、これを観ておけば、今、やってる他の洋画は多分、観ないと思うので、晴れて邦画が観られるという魂胆であった。唯一の救いはやはりダニエル・クレイグとジュディ・デンチの台詞だろう。これはほんと、綺麗。しかし作品とは何の関係も無い。


ヒアリング度:★★
感動度:
二度以上見たい度:
劇場で見たい度:★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★
ムカつく度:★★★
考えさせられる度:
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

感染列島 2008

2009-01-24 23:21:51 | Weblog
感染列島 2008

U.S. Release Date:

■監督:瀬々敬久
■キャスト:妻夫木聡/檀れい/藤竜也/佐藤浩市/他
■音楽:安川午朗
■字幕:
■お勧め度:★★★★★

 「新型ウイルスによるパンデミック(感染爆発)の脅威が人類に襲いかかるパニック・ヒューマン・ドラマ。恐るべき致死率の未知のウイルスが日本列島に侵入、瞬く間に全国へと蔓延していく中、極限状況で愛する者を守るために奔走する人々の姿をエモーショナルなタッチで描く。主演は「ブタがいた教室」の妻夫木聡と「武士の一分」の檀れい。監督は「フライング☆ラビッツ」の瀬々敬久。
 新年を迎えた、いずみ野市立病院。救命救急医・松岡剛のもとに、一人の急患が運び込まれてくる。その患者は高熱に痙攣、吐血を催し、全身感染ともいえる多臓器不全に冒されていた。この症状は新型インフルエンザと想定され、治療が進められる。しかし、あらゆるワクチンを投与するも虚しく、患者は死亡してしまうのだった。さらに、正体不明のウイルスは医療スタッフや患者たちにも感染、病院がパニック状態に陥ってしまう。やがて、事態の究明とウイルスの感染拡大を防ぐため、世界保健機関(WHO)からメディカルオフィサーの小林栄子が派遣されることに。そして彼女は、このままウイルスが蔓延し続けると日本は崩壊し、世界へ拡がれば人類は滅亡する、という恐るべき事態を予測する…。」(allcinema.net/より。)

ここまで出来のいい映画作品はいくつあるだろうか。内容的にも感動ものだが、これだけの作品を造れるようになった邦画界に感動。それもTBS。いくつかのテーマと物語りが完璧にシンクロしているし、キャストはあえて無名にして作品自体の出来の良さを自信を持って提示したような作品。ここまで来ると偶然とかマグレとか言えない。はっきり言って今は洋画が落ち目。

2点に絞って言うと、未知のウイルスと戦うことになったいずみ野市立病院の医師と看護士たちが、患者は後をたたず、医療器機も薬品も欠乏するという極限状態に追い込まれて、いくつかの究極の選択を迫られるなかで、各々が医療従事者としても人間としても成長していく姿が説得力と現実感をもって描かれる。医療器機が足りない、呼吸器をはずせば、すぐに死ぬと分かっている子供がいる。その子供よりも生存の確率の高い大人の患者がいる。子供から呼吸器をはずして大人の方に回す。しかしどちらも死ぬ。こうした選択は理屈では分かっていても、実際に医師や看護士が決断を下さざるを得ない場合は、それほど多くはないのではないか。それでも決断を下すしかない。それに彼等は常にウイルスに感染する危険な状態にある。このウイルスは、はっきり言ってエボラ熱。というようなパニック作品かと思ったら、救命救急医・松岡剛(妻夫木聡)とWHOメディカルオフィサーの小林栄子(檀れい)の、甘く切ないラブストーリーでもある。小林栄子の方は、松岡の大学で助手をしていた、いわば先輩で、その時点では、ちょっとした恋心に過ぎなかったが、松岡の方は、先輩医師(役)の佐藤浩市がまっ先に死んだあと、救命救急のチーフ的な立場になり、ほとんど地獄のような対ウイルス戦で医師としても人間としても成長し、小林栄子の方は、海外留学とWHOのメディカルオフィサーとして各地で医療活動をする中で成長し、成長した二人が地獄の医療現場で再会し、真の恋に目覚める、という段階で止めておくという、ラブストーリーの描き方としては一番、印象に残る方法かもしれない。そして....、松岡は、いずみ野市立病院に残ればいくらでも出世できただろうが、あえて北海道の無医村に。彼は生涯、他の女に惚れることは無いだろう。いつぞやのくだらない邦画と比べると、こうした感染爆発が起った際の厚生労働省の対応とか、ウイルスの発生源を探す部分、後者に関しては日本向けの海老を生産するために環境を破壊し、おそらくは、ウイルスは薬品の乱用で発生したと思われる、南の国の実態も描かれ、この発生源をつきとめるのがウイルス研究者だが癌におかされ、「ウイルスと人は共存できないだろうか」といった意味深な台詞を言う、本作品では唯一のベテラン藤竜也という配役の妙。パニック性、ラブストーリー性に加えてミステリー性もある。最初は、近くの養鶏場で鶏の変死事故が起ったことから、新種のインフルエンザかと思われたが、次第にそうではなく、未知のウイルスである事が分かっていく過程。その事が後になってからしか分からなかったために自殺する養鶏場オーナー。これだけのテーマや内容を詰め込んで、全てを完璧に描き、一つの作品として完成させる能力。たしかにそれほどお金はかかって無いだろうが、むかし、お金が無いからいい映画が作れないとか言っていた邦画界の言い分が全く的外れだった事を証明するような作品、が続いている。


ヒアリング度:
感動度:★★★★★
二度以上見たい度:★★★★
劇場で見たい度:★★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★★★★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

チェ 28歳の革命 Che: Part One 2008

2009-01-18 04:05:06 | Weblog
チェ 28歳の革命 Che: Part One

U.S. Release Date: 2008

■監督:スティーヴン・ソダーバーグ
■キャスト:ベニチオ・デル・トロ他(は、全く知らない)
■音楽:アルベルト・イグレシアス
■字幕:(石田泰子)
■お勧め度:★★(★)

 「「トラフィック」のスティーヴン・ソダーバーグ監督とベニチオ・デル・トロが再びタッグを組み、伝説の革命家エルネスト・“チェ”・ゲバラの人物像とその半生に迫る伝記ドラマ2部作の前編。本作ではゲバラがフィデル・カストロと出会い、キューバ革命闘士として躍進するまでを描く。また、入念な役作りのもと、ゲバラを熱演したベニチオ・デル・トロは、カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した。
 1955年、メキシコ。アルゼンチン人の青年医師エルネスト・ゲバラ。南米大陸の旅を続ける彼は、自らも喘息を抱えながらもラテン・アメリカの貧しい人々を救いたいという志が芽生えていた。そんなゲバラはある日、独裁政権に牛耳られた祖国キューバで平等社会の実現を目指す反体制派のフィデル・カストロと出会い意気投合する。そして、政府軍に無謀とも思えるゲリラ戦を仕掛けようという彼らの作戦への参加を決意するゲバラだったが…。」(allcinema.net/より。)

「伝記ドラマ」というより、ゲバラという一人の男を通じて、ある種、男のロマンみたいなものを描いたフィクションに近い作品だろう。たしかに作品全体を通じて1950年代の革命当時のことと、革命が成功してゲバラがカストロのブレインとして国連で演説したりするシーンが多くてノンフィクションっぽい部分は多いが、こっちの方がむしろ隠れ蓑みたいなもので、キューバで革命を起こそうとした男が辿った道のりを細かに描くことで、信念に生きた男の生き様を描いた作品。そしてそうした男に惹き付けられる「同士」や普通の人々、あるいはそれとは対照的に旧政権の元で「仕事」として働く兵士や将軍の生き方の違い。たしかにノンフィクションっぽい部分で当時の政治情勢とか、詰め込み過ぎのような感じはするが、むしろこれがあるおかげでロマンっぽい部分が印象に残る。意識操作みたいなもので、ノンフィクションっぽい部分で意図的につまらなくして、それを我慢させておいて、ゲバラの生き様をそれこそ伝説っぽく描き強調した。テーマ的にはキューバ革命にしても、そうした見方をすると、何かこう男、あるいは女でも、こうした生き方ができれば最高に幸せかもしれないというような、憧れというか嫉妬に近いものまで感じる。普通の人間は仕事とか毎日の生活に追われて生きているわけで、それに比べるとゲバラは自分の信念の通りに生き、回りの人々もそれを分かってくれて、あらゆる意味で支持してくれて、その結果としてキューバ革命という偉業を成し遂げた。これほど幸せな人間はそう居ないだろうと思うほどで、そうしたゲバラに共感できれば作品は印象深く観れるだろうが、そうでない場合、最後の方の市街戦が「コンバット」(大昔の戦争テレドラ)風で楽しめるものの、途中で帰っても損の無い作品。というか最後まで我慢できない作品だろう。ここらへんがまさに「カンヌ国際映画祭」で賞を取るための作品造りで、前にも書いた賞取り作品である事は明らか。とは言ってもベニチオ・デル・トロの主演男優賞は分かる。いわゆる実際の、あるいは歴史上の人物になりきるタイプの演技や作品は過去にもいくつかあったが、本作品のベニチオ・デル・トロは、ゲバラになりきる、あるいは描くというより、その生き様を、一つの理想の生き方として描いた、演じた感じがする。演技が嘘っぽくない。というかそもそも演技っぽくない。演技の巧い下手ではなくて、歴史的な裏づけのある一人の男の生き方を描きながら、実はもっと普遍的な理想の生き方を描いたような。普通の人間から見ると、革命はおろかそんな生き方すら出来ないわけで、こんな生き方もありかな、と感じられれば観れるが、現実というものにどっぷり浸かっているような場合は、観ても何も感じない作品かもしれない。かなり大きな賭け。造った方も観る方も。それとほとんど全編、「メキシコ語」なので注意。


ヒアリング度:
感動度:★★
二度以上見たい度:★★
劇場で見たい度:★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

K-20(TWENTY) 怪人二十面相・伝 (2008)

2009-01-11 06:13:36 | Weblog
K-20(TWENTY) 怪人二十面相・伝 (2008)

U.S. Release Date:

■監督:佐藤嗣麻子
■原作:北村想『完全版 怪人二十面相・伝』
■キャスト:金城武/仲村トオル/松たか子/國村隼/鹿賀丈史/高島礼子/大滝秀治他
■音楽:佐藤直紀
■字幕:
■お勧め度:★★★★(★)

 「江戸川乱歩が生み出した希代のダーク・ヒーロー怪人二十面相を巡る様々な謎をユニークな解釈で解き明かす劇作家・北村想の同名ミステリーを、金城武と松たか子の共演で映画化した痛快冒険活劇。第二次世界大戦を回避した架空の日本を舞台に、二十面相に嵌められ、濡れ衣を着せられた曲芸師の男が、自らの汚名をそそぐべく奔走する姿を、レトロな味わいの中、ユーモアを織り交ぜつつアクション満載に綴る。監督は「エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS」の佐藤嗣麻子。
 1949年、第二次世界大戦を回避した日本の都市、帝都。そこは、19世紀から続く華族制度により極端な貧富の格差が生まれ、ごく一部の特権階級が富を独占する社会となっていた。折しも巷では、そんな富裕層だけを狙い、鮮やかな手口で窃盗を繰り返す怪人二十面相、通称“K-20”が出現し世間を騒がせていた。ある日、サーカス団に所属する天才曲芸師・遠藤平吉は、見知らぬ紳士から羽柴財閥の令嬢・羽柴葉子と名探偵・明智小五郎の結納の儀を写真に撮ってほしいとの依頼を受ける。しかし、それは二十面相の罠だった…。」(allcinema.net/より。)

まさか過去に散々書いた日テレの悪口を読んでたとは思わないが、ここまで来ると何らかの理由があったのだろう、テレビ局製作とは思えない秀作。「怪人二十面相」というのは全く知らないが、ジャパコミの映画化作品風の娯楽度満点の作品。筋書き的には最後までラスボスの正体が分からないというスリルとミステリーがあり、アクションは香港・中国レベルでは無いものの、仕掛に現実味があり、アメコミをはるかに超えている。スパイダーマンとバットマンの美味しい部分を拝借して、より効果的にした作品。キャストがまたいいし、ミステリー性に貢献している。前者に関しては特に仲村トオル、鹿賀丈史、高島礼子あたりの過去の作品を彷佛とさせるし、仲村トオルの明智小五郎(これは読んだ記憶がある)役は、ラストを示唆していて面白い。鹿賀丈史は偽の怪人二十面相役で、これはちょっと無理だろうと思っていたら、やはり偽者だったというのも、ラストまで引き付けられる。高島礼子は出番は少ないものの、金城武のQ(「007」)役の國村隼(これがまたいい)の女房役で、また惚れ直した。過去の作品を思えば出番は少なくても十分。これに大滝秀治(今だ健在)、小日向文世もいい。単に豪華なだけではなく、役にマッチしているし、使い方が巧い。一番、問題なのは松たか子だろうが、ここんとこテレビは見てないので分からないが、少しは心のこもった演技ができるようになったようだ。前にも書いたが松たか子は表情作りは巧いが演技や歌(ライブ盤DVDを持っている)に心が感じられなかった。セットも、前に悪口として書いた「博物館」風と違って、かなり良くできている。ロケ地が上海になっているのはどういう理由か分からないが、この時代の実際の東京とはかなり違う感じで、異世界感を巧く造り出している。というような感じで表面的には単なる娯楽作品かもしれないが、これは果たして原作がそうだったのか映画化する段階で加えたのか分からないが、「第二次世界大戦を回避した日本」というのにかなり深いテーマがあると見たい。この場合は伊(イタリア)は別としても、日独伊の三国同盟が続いたという設定で、出て来る横文字は全てドイツ語。問題の装置、「最終兵器」もドイツ製。もし第二次世界大戦がなくて、アメリカ式の民主化がなかったなら、日本はどういう社会になっていただろうか。階級社会は果たして悪なのか、悪であるとすればそれを打破するためにあの戦争は必要だったのだろうか。本作品ではサーカスの一座が描かれるが、いわゆる下層階級に属すから分かる人間の暖かみとか人情とかが描かれ、彼らが次の日本を造るという台詞とテーマがある。戦争のせいで無差別的に「民主化」して、暖かみも人情も吹っ飛んだ実際の戦後日本を考えると、まさにアメリカに強制された民主主義の弊害を問う部分がある。この橋渡し的な役を演じるのが(演技の下手な)松たか子で、かなり難しい役だが、他の豪華キャストの助けもあってどうにかこうにか、という部分も、本人には悪いが面白い。筋書き良し、キャスト良し、アクションもまあまあ、テーマ有りの、ほとんど非のうちどころの無い秀作。あの過去の駄作の数々は一体何だったのだろうか。


ヒアリング度:
感動度:★★★★
二度以上見たい度:★★★
劇場で見たい度:★★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:★★
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★★★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

ワールド・オブ・ライズ Body of Lies 2008

2009-01-04 05:42:23 | Weblog
ワールド・オブ・ライズ Body of Lies

U.S. Release Date: 2008

■監督:リドリー・スコット
■原作:デイヴィッド・イグネイシアス『ワールド・オブ・ライズ』(小学館刊)
■キャスト:レオナルド・ディカプリオ/ラッセル・クロウ/マーク・ストロング
■音楽:マルク・ストライテンフェルト
■字幕:松浦美奈
■お勧め度:★

 「「ブラックホーク・ダウン」のリドリー・スコット監督、「ディパーテッド」のレオナルド・ディカプリオ、「グラディエーター」のラッセル・クロウという豪華タッグが実現した緊迫のアクション・サスペンス。危険な現場で使命を帯びる凄腕の工作員と安全な場所から冷酷に命令を下すベテラン局員、対照的な2人のCIAエージェントを軸に、それぞれ重要任務を遂行するため味方をも欺く巧みな“嘘”の応酬で熾烈な頭脳戦を繰り広げていくさまをスリリングに描く。原作は中東問題に精通するベテラン・ジャーナリストにして作家のデイヴィッド・イグネイシアスが手掛けた同名小説。
 世界中を飛び回り、死と隣り合わせの危険な任務に身を削るCIAの工作員フェリス。一方、彼の上司はもっぱらアメリカの本部や自宅など平和で安全な場所から指示を送るベテラン局員ホフマン。そんな生き方も考え方も全く異なる彼らは、ある国際的テロ組織のリーダーを捕獲するという重要任務にあたっていた。しかし、反りの合わない2人は、フェリスがイラクで接触した情報提供者をめぐる意見でも対立。やがて、命懸けで組織の極秘資料を手に入れ重傷を負ったフェリスに、ホフマンは淡々と次の指令を出すのだった。フェリスは強引かつ非情なホフマンに不満を募らせながら、資料による情報のもと、次なる目的地ヨルダンへ向かうのだが…。」(allcinema.net/より。)

これまた、三文小説として読んだら面白いかもしれないが、とてもじゃないけど映画として観たら、007の出来損ない。テーマがあまりにも勝手すぎる。「テロリスト」と言うけど、実際は1000年も前から続いている宗教戦争だろう。イスラム教徒を「テロリスト」と言い、世界を「テロ」から救うというのは、アメリカ帝国主義が自らの悪行を正当化するための口実に過ぎない。キリスト教もイスラム教も元は同じ。それをコーランに書いてある事は誤訳で、聖書の方が正しいとかいう台詞があるが、聖書自体、後の世の聖職者が勝手にでっち上げたという事実を知らんふり。CIAの描き方にしても、自分らの利権確保のために世界経済を破壊したブッシュ親子とネオコンの腰巾着のそれで、9.11はCIAの謀略だったという事を裏付けるような描き方。それが意図なら成功していると言えるが。フェリスは下っ端の工作員だし、一応の上司のホフマンは無能。人物およびキャスト的に一番、印象的なのはヨルダン諜報部の長官役のマーク・ストロングだろう。しかしこれにしてもどうなのか。イスラム国の取り締まり機関がテロ組織を撲滅するといっても、体裁上のことで、実際は西側の政府や企業に対する見返り的なものに過ぎないのじゃないか。それと映画ではCIAの対テロ工作がメインになっているが、小説ではアメリカのイラク侵攻に批判的な要素があったのじゃないか。侵攻が長引けば、相手(イラク)が消耗するのではなく、逆に侵攻に適応して勢力を拡大するという台詞に端的に表れている。日本との戦争で原爆を落として成功していながら、朝鮮とベトナムでまさにこの過ちを犯して負けたアメリカ。そのマヌケさの自覚無しに中東で「テロリスト」狩りを続けるCIAの実録っぽい物語りを見ても、何の面白さも無い。少し前の作品(「グッド・シェパード」)でも描かれたが、そもそもCIA設立の理由は旧共産圏対策で、それがなくなった今、代りの敵として「テロリスト」を選んだに過ぎない。いわゆる制度化の問題で、ある制度(組織)ができると、その設立の目的がなくなった場合、代りの目的を探すかでっち上げるという構造がある。簡単に言うと、CIA自体が「テロリスト」がいるおかげで存続できているわけで、その勢力を拡大維持するために世界中で「テロ」をでっち上げ拡大しているとも言える。小説はおそらくイラク侵攻の批判、映画化するなら、むしろ「グッド・シェパード」のパート2的なものにして、この問題を描いた方が面白いし現実味があっただろう。現状では、それこそフィクションの相手としては全く相容れないイスラム「テロリスト」。これなら出来損ないの007の方がマシ。ついでにロケ地は全部モロッコで予算節約。


ヒアリング度:★
感動度:
二度以上見たい度:
劇場で見たい度:
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:
ムカつく度:(呆れてムカつきもしない)
考えさせられる度:
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)