ウルルの森の物語 (2009)

2009-12-26 08:51:45 | Weblog
ウルルの森の物語 (2009)

U.S. Release Date:

■監督:長沼誠
■キャスト:桑代貴明/北村沙羅/船越英一郎/深田恭子/桜井幸子/大滝秀治
■音楽:久石譲/東京フィルハーモニー交響楽団
■字幕:
■お勧め度:★★★★

 「「マリと子犬の物語」のスタッフ・キャストが再集結、“ウルル”と名付けたオオカミの子との触れ合いや冒険を通して成長していく幼い兄妹の姿と家族の絆を暖かなまなざしで描いた感動ファミリー・ドラマ。主演は船越英一郎。監督はこれまで多くのTV作品で演出を手掛け、本作で劇場映画初メガホンの長沼誠。
 母親の入院を機に東京から北海道へとやって来た兄妹、昴としずく。そこには野生動物救命所で獣医を務める父・大慈が暮らしていた。しかし、5年前の離婚以来、久々に顔を合わせる父親との生活はぎこちなく戸惑うばかり。そんな彼らも、美しい大自然や野生動物たちに囲まれ、周りの人々に優しく支えられながら少しずつ新生活に溶け込んでいく。そしてある日、しずくはオオカミに似た一匹の子犬と出会い、“ウルル”と名付けて飼い始めることに。だが、ウルルとの幸せな日々も束の間、野生動物保護協会の分子生態学者から、ウルルは絶滅したはずのエゾオオカミの子供である可能性が高いため、しかるべき機関へ預けるべきとの指摘を受けてしまう。そこで、昴としずくは自分たちの手でウルルを母親のもとへ返そうと、アイヌ語で“オオカミの棲むところ”の意味を持つ伝説のオオカミの国“ホロケシ”を目指す旅に出るのだが…。」(allcinema.net/より。)

エゾオオカミは実際は絶滅したんだろうか。だとすると登場するウルルとその母親オオカミは保護施設から?テーマ的には、野生動物を保護施設で育てるより自然に返した方が理にかなっているというものなので、少しばかり矛盾を感じるが、しょうがないだろう。それにしても一番、感動的なのは母親オオカミが登場する場面で、描き方からして一種の宗教観すら感じる。実際問題としてもそれがテーマだろう。オオカミというのは人間を発見すると、付かず離れず後を追い、他の動物から人間を守る習性があるらしい。保護神みたいなもの。この事に加えてウルルとの交流を通じて幼い兄妹が成長するというテーマ。それを見て父親失格だった船越英一郎が本当の父親に成長する。表面的には北海道の自然を描いただけの作品ながら、色々なテーマがあって考えさせられる。

出番は少ないながら大滝秀治の台詞で、人間が自然に対して出来ることは、いわゆる食物連鎖を尊重して見守るだけだというのがあるが、昨今の人間の環境に対する行いというのは、開発とかの明らかに反自然行為いがいにも、行き過ぎ、やり過ぎがあるのじゃないだろうか。それも人間の都合を環境保全の美名において。ローカルな話しながら横浜近辺では魚が釣れなくなった。これは東京湾大橋のせいもあるが、港湾や河川を綺麗にしすぎて餌がなくなった事がある。釣りなんか興味ないという人々には関係無いことだろうが、実際問題としては東京湾で食餌していた魚から見れば生存の危機という事になる。魚というのは食餌場が決まっていて、なくなると他を探すという事ができない場合がある。それで減少か絶滅に追い込まれた魚がいる。これはローカル名なので分からないだろうが、10年ぐらい前にギンポという魚が絶滅した。釣り人にはヘピっぽいので嫌われていたが、すごい生命力の持ち主で、白身魚としては最高のうちだった。環境改善といいながら、実際は環境破壊で、あれほどの生命力のある魚すら絶滅に追い込んだ。同じ事をオオカミにしたわけで、この事は人類がいる限り、これからも続くだろう。地球環境保全の最も確実な方法は人類根絶だとは言わないまでも、果たして共存すら出来るのだろうか。森林破壊は加速度的だし、今の北海道は自然豊かにしても、いつまで続くか。温暖化の影響もすでに目に見える形で出始めている。他は知らないが関東地方の気候は完全に変わった。環境保全は、どだい無理だろう。だとすると、上の大滝秀治の台詞に反して、自然動植物は施設で管理した方が、少なくとも絶滅だけは避けられるという事になるが、これも人間の勝手な考えだろう。人類とその悪行も地球環境の一部で、結果的に環境破壊が進んだとしても、それも自然の摂理とも言える。全てのものには終わりがある。地球とて例外ではない。だとしたら人間の勝手にしても、好きなように環境を破壊しても、「自然の摂理」として正当化できる。本作の分子生態学者はウルルを引き取って保護しようとするが、果たしてこれが悪なのか。なんとも言えないだろう。

音楽は久々の久石譲+東京フィルハーモニー交響楽団ながら、なんの感動も無いという嬉しい状況。少し前の邦画だったら、これは黄金コンビだっただろう。東京フィルハーモニー(東フィル)は名古屋で設立された日本では最高のオーケストラ。小澤征爾が止めた後のボストン交響楽団と比肩する。しょっちゅうコンサートやっているので、バカ高い洋物、聴きに行くのだったら東フィルの公演で十分だろう。

製作は日テレ。もう言うまでもない事ながら、映画としても十分、見応えある。


ヒアリング度:
感動度:★★★★
二度以上見たい度:★★★★
劇場で見たい度:★★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:★★
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★★★★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

スノープリンス 禁じられた恋のメロディ (2009)

2009-12-19 09:56:01 | Weblog
スノープリンス 禁じられた恋のメロディ (2009)

U.S. Release Date:

■監督:松岡錠司
■キャスト:森本慎太郎/桑島真里乃/チビ/香川照之/檀れい/中村嘉葎雄/岸恵子/浅野忠信
■音楽:山梨鐐平/「月の光(Clair de Lune)」(ドビュッシー)
■字幕:
■お勧め度:★★★★(★)

 「「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」の松岡錠司監督、「おくりびと」の小山薫堂脚本で贈る切ないピュア・ストーリー。昭和初期の北国を舞台に、淡い恋の芽生えた身分違いの少年少女が辿る美しくも悲しい運命を綴る。主演はジャニーズJr.の森本慎太郎と「ちりとてちん」の桑島真里乃。昭和11年、雪深い北国の寒村。10歳の草太は両親を早くに亡くし、祖父との2人暮らし。貧しいために学校にも通えない草太だったが、大好きな絵に夢を託し、健気で素直な少年に育っていた。そんな草太と仲良しなのが町一番のお金持ちの家に生まれた幼なじみの少女、早代。彼女の父は2人が一緒に遊ぶことを快く思わず、草太に会うことを禁じられる早代だったが…。」(allcinema.net/より。)

とりあえず、解説の「両親を早くに亡くし」は間違い。

これってラブストーリーでもなければ悲劇でもないんじゃないだろうか。たしかに草太は悲しい運命を辿るにしても、幼いながらも精一杯生き、自分なりの人生をまっとうした姿を描いたように思う。たしかにこの子は父親に捨てられたとも言えるが、それはサーカスの団員である父親が息子を巻き込みたくなかったという事があるし、父親には草太の実際の境遇は分からない。それに捨てた代りに草太には、草太なりの人生の生き方を教えてもいる。

メインのテーマは雪かもしれない。エンドタイトル部分以外は雪景色で、雪の冷たさ、過酷さ、しかし時として暖かさを描いて、そうしたものに勝ったり負けたりしながら自分の人生を歩んだ草太を描いたような。最後にしても悲劇とか悲しさよりは、草太なりの素晴らしい人生を歩んだ事が印象に残る。人間の友達には恵まれなかったものの、犬のチビと、早代との出会いと付き合いがあったし、祖父の教えを忠実に守って生きた草太は、純粋無垢のピュアな少年として描かれる。草太と早代の関係というのは「僕の初恋をキミに捧ぐ」の幼い頃の関係と同じで、幼馴染み。草太の早代に対する気持ちというのは恋や愛以前のものだろう。むしろ早代が草太を好きだった事は間違いない。こういう関係に描いたのも、この年頃の少年が恋心を抱くかどうかという問題は別にして、恋とか愛を、ある意味で取り去って「雪」というものを描きたかったのじゃないだろうか。そうでなければ全編、雪景色にする必要は無いし不自然だっただろう。そして一番、重点を置いたのは雪の暖かさだろう。この点はしかし雪自体ではなく、人物に投影して描いているように感じられる。かなり難しいテーマを描いたように感じられるが、観ててものすごくいい感じがするのは、ピュアさと暖かさを描いたからだろう。草太は絵が好きで、絵の具になる土を探しに行き、父親に教えられた通り、自分が一番、描きたかったものを描く。それはピアノを弾く早代と、自分が出会った人々全部。草太にとって早代の父親は悪者っぽい人間ながら、この絵には早代の父親も描かれている。これはどんな事があっても人を憎んだり恨んだりするなという祖父の教えがあったにしても、教えを守るというより純粋無垢の草太にしてみれば、そもそも人を憎むとかは出来なかったのじゃないだろうか。というように考えると、作品が描きたかったのは、いわゆる生善説に元づく人の生き方。これがあるせいで、実際は悲劇的な作品ながら、むしろ逆の印象を受けるし、それが狙いだったのじゃないか。というのはあくまでも推測にすぎないが、テレビ局(朝日)作品でこれだけ深いテーマを効果的に描けたのは、これだけでも感動もの。同じように雪を題材にしてノーベル文学賞を取った下らない作品があって、原作の人物とは似ても似つかない松坂慶子を起用した駄作があったが、テーマの深さと作品の出来からすれば「おくりびと」とも月とスッポンだろう。しかしこれの主題歌はひどい。ドビュッシーの「月の光」というピアノ曲をメインテーマにして、最後にフルバージョンを流すが、ここでやめとけばいいものを、ムードぶちこわし。ジャニーズ事務所の横やりか。テレビ局作品としてはしょうがないか。暖かいといっても見る限り寒いことは間違いないので、観るなら映画館の暖房は期待しない方がいいだろう。


ヒアリング度:
感動度:★★★★★
二度以上見たい度:★★★★
劇場で見たい度:★★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:★★
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★★★★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

ゼロの焦点 (2009)

2009-12-12 09:52:51 | Weblog
ゼロの焦点 (2009)

U.S. Release Date:

■監督:犬童一心
■キャスト:広末涼子/中谷美紀/木村多江/市毛良枝/鹿賀丈史
■音楽:上野耕路/「オンリー・ユー」
■字幕:
■お勧め度:★★★★

 「松本清張の傑作ミステリーを豪華女優陣の競演で映画化した松本清張生誕100年記念作品。敗戦直後の混乱期を経て復興へと向かう昭和30年代初頭の日本を舞台に、結婚間もない夫の謎の失踪を発端として不可解な連続殺人事件に巻き込まれていく若妻が、やがて隠された衝撃の真実に直面していくさまを描く。出演は「おくりびと」の広末涼子、「嫌われ松子の一生」の中谷美紀、「ぐるりのこと。」の木村多江。監督は「ジョゼと虎と魚たち」「グーグーだって猫である」の犬童一心。
 妻・禎子と結婚式を挙げて7日後の新郎・憲一は、仕事の引き継ぎで以前の勤務地・金沢へと旅立った。ところが、憲一はそのまま帰ってこなかった。見合いのため、夫の過去を全く知らなかった禎子には、失踪の理由も皆目見当がつかない。夫の行方を追って金沢へと向かった禎子は、そこで得意先会社の社長夫人・室田佐知子と受付嬢の田沼久子という2人の女と出会う。一方、時を同じくして憲一と関わりのある人物が被害者となる連続殺人事件が発生するが…。」(allcinema.net/より。)

ミステリーというより、戦後の日本の時代背景ないし時代観と、戦後を生きた3人の女たちの生きざまを描いた社会派ヒューマンドラマだろう。原作は知らないので、この点は映画化する上で改作したのかもしれないが。広末涼子は主演ながら、生きざまを描くというよりか筋書き上の主人公で、テーマからした主人公は、むしろ佐知子(中谷美紀)と久子(木村多江)だろう。後者二人の人物像が、かなりな説得力で描かれる。その意味では脚が綺麗なだけの広末涼子は傍役、適役だろう。一番、感心したのは戦後の日本の街並と、これは今でもそうかもしれないが金沢を中心とした日本海側の風景で、日本海側、金沢は一度、行ったことがあるが、風景が物語りとすごくマッチしていて感慨深い。街並にしても、かなり良く再現されていて、エンドタイトルで韓国の人名が多く出ていることから、韓国に当時の日本の街並に似た町や場所があるのかもしれない。結果的にテレビ局作品と比べると映画らしさが出ていて、これだけでもかなりな感動もの。製作は東宝。原作は知らないのでなんとも言えないが、映画化するに当ってかなり付け加えた部分があるかもしれない。ノリが往年というより昔の角川映画風なところがあって、これは松本清張のものでは無いだろう。松本清張のテレビドラマは見たことはあるが、はっきり言ってつまらない。映画化するに当って、そのつまらない部分をカバーしたのかもしれない。

主なテーマは戦中、戦後の混乱期を生きた二人の女の、その後にかける夢とその結末。新しい自分に生まれ変わりたいというのは3人に共通ながら、広末涼子のそれは時代に関係無い形で描き、他の二人のそれを時代に左右された、決定づけられたそれのように描いたところは松本清張だろう。新しい時代というのはもちろん今のことで、果たして今の日本や日本人が戦中、戦後の人々が抱いた夢を実現できたか、それを問うのが作品のメインテーマだろう。佐知子と久子は同じ「パンパン」(アメリカ軍用の売春婦)出身で、その過去が暴かれることが作品の筋書きになっているにしても、作品が描きたかったのは、その事ではなくて、この二人(と広末涼子の夫)が、新しい人生を始めたい、その思いが結果的に悲劇を生み、思いは叶わなかった、という事を描くことで、現代の日本人の生き方を問うた作品だろう。

戦後の混乱期というのは、知る限り、野坂昭如や藤本義一の小説でも見られるとおり、何でも出来る、何をやっても構わない自由な時代として描かれることが多いが、実際は悲惨な時代で、松本清張としては二人の後輩(1930年代生まれ)の批判の意味もあったかもしれない。時代背景と時代観を現実のそれに戻したという意味で。

キャストが面白い。広末涼子は演技力の無さを生かしてストーリーテラー役に徹しさせ、中谷美紀は悪者役。一番人間的で印象に残るのは木村多江で、彼女は実際は傍役ながら、ヒューマンドラマの主人公だろう。学が無く中谷美紀に利用されて広末涼子には夫の仇という濡れ衣を着せられる。果たして原作がこうだったのか分からないが、映画として見た場合は、人間味あふれる女を演じている。これに鹿賀丈史が、一代で富を築いた悪者役。他にもチョイ役ながら左時枝が目立つ。

しかしミステリー性や物語りの内容よりは、人物像、街並、風景を描くことに重点を置いた作品だろう。これは成功している。冬の日本海側は行ったことがあるが、ほんとにストーリーにマッチしていて、これだけでも見る価値はあるかもしれない。例によって蛇足ながら、長いスカートで脚を見せない広末涼子だったら、他の誰でもよかっただろう。


ヒアリング度:
感動度:★★★★
二度以上見たい度:★★
劇場で見たい度:★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★★★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

2012 (2009)

2009-12-06 01:44:39 | Weblog
2012(2009)
2012

U.S. Release Date: 2009

■監督:ローランド・エメリッヒ
■キャスト:ジョン・キューザック/アマンダ・ピート/ダニー・グローヴァー他
■音楽:ハラルド・クローサー
■字幕:松崎広幸
■お勧め度:★★★

 「「デイ・アフター・トゥモロー」「紀元前1万年」のローランド・エメリッヒ監督が放つパニック・サスペンス巨編。2012年12月21日に地球滅亡が訪れるというマヤ文明の暦にヒントを得た終末説を基に、世界中で怒濤のごとく発生した未曾有の天変地異に人類が為す術なく襲われていくさまを驚異のスペクタクル映像で描く。出演は「ハイ・フィデリティ」のジョン・キューザック、「“アイデンティティー”」のアマンダ・ピート、「キンキーブーツ」のキウェテル・イジョフォー。
 ロサンゼルスでリムジン運転手をしている売れない作家ジャクソンは、別れた妻ケイトのもとに暮らす子供たちと久々に再会し、イエローストーン公園までキャンプにやって来た。彼はそこで怪しげな男チャーリーから奇妙な話を聞かされる。それは、“地球の滅亡”が目前に迫っており、その事実を隠している各国政府が密かに巨大船を製造、ごく一部の金持ちだけを乗せ脱出しようとしている、という俄には信じられない内容だった。しかし、その後ロサンゼルスをかつてない巨大地震が襲い、チャーリーの話が嘘ではないと悟るジャクソン。そして、大津波や大噴火など、あらゆる天変地異が世界中で発生、次々と地球を呑み込んでいくことに。そんな中、ジャクソンはケイトと子供たちを守るため、巨大船がある場所を目指して必死のサバイバルを繰り広げるのだが…。」(allcinema.net/より。)


旧約聖書「ノアの方舟」そのまんま。

「パニック・サスペンス」というよりスペクタクル・ヒューマンドラマだろう。スペクタクル部分はかなり見応えある。特に最初の方のシーンで両側から崩れ落ちるビルの間をショボい双発(飛行)機で潜り抜けるシーンは圧巻。ただし全体的には、監督の趣味と思われる「ポセイドン・アドベンチャー」が半分ぐらい。内容的にも誰が生き残るかという事も含めて。こういう作品が好きな場合は、そこそこ楽しめるだろうが、そうで無い場合は他の部分しか観る所は無いだろう。

従来のパニック物と比べて傑出しているとすればヒューマンドラマ性を強調したことだろう。従来のパニック物というのはパニックとスペクタクル映像を見せるのが主で、ヒューマンドラマの部分は付け足しに過ぎなかった。本作ではヒューマンドラマがメインとまではいかないまでも、筋書きと噛み合っている。この点は見所。

ただし問題がいくつか。

「巨大船」を建造するのにお金がかかるのは当然だろうが、そのお金を億万長者から集めて彼等にだけ乗船券を配るという筋書きがある一方で、その他の乗船者はDNA鑑定で「優秀」と認められた者に限るというのがある。たしかに億万長者になるという事は何らかの素質があるからだとしても、そうした素質が必ずしも人類再興のために役立つ物かどうか、定かでは無いだろう。この点は製作者も認識しているようで、そのような筋書きになる。地球崩壊まで3年しか無い。政府や国家予算を投じればバレる危険性がある。それで億万長者からという事になるが、結果的に作ったのは単なる海上航行型の船。ならば政府や国家が作らなくても、億万長者に勝手に作らせても同じだろう。一般人用の船を作る余裕も予算もどっちみち無いわけだし。

船の建造場所は、わざわざ中国奥地。なんで?人件費が安い。現実的すぎるだろう。どっちみち洪水に襲われることが分かっているのだったら、全ての大陸の奥地で作った方が簡単でコストもかからないし、わざわざアフリカ等から動物のつがいを運んだりする必要も無いだろう。結果的には「ノアの方舟」を再現する事に重点を置いた時代錯誤の代物。

地球崩壊というより地殻変動で地表が予測不能な型で変化するというのがテーマ。だとしたら、3年もの余裕がある事から通常、考えられる事は、政府主脳と一部の科学者その他、必要な人材の大気圏外脱出だろう。エベレストにぶつかって壊れるような船を作っても、もたないだろう。

要するにどっちなのか。旧約聖書の物語りを再現したかったのか、太陽フレアで地球の中心の温度が上がり地表がその影響を受けるという科学的な説を描きたかったのか。後者にしても問題がある。地表が変化するほどまでに温度が上がったら、それだけで、まず最初に人類を含めて生物は絶滅するだろう。

というような問題に気付かずに観ていたので、最後に登場する船はどんな物だろうかとヒドい期待を抱いてしまった。結果はショボい単なる船、それもどこかの国のアニメやゲームで散々、見たような。

特撮部分ははっきり言って凄い。ヒューマンドラマの部分はかなり泣ける。それ以外は見る価値は無いだろう。特にテレビで観る予定がある場合はやめた方がいいだろう。


ヒアリング度:★★★★
感動度:★★★
二度以上見たい度:★★★★
劇場で見たい度:★★★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:
ムカつく度:★
考えさせられる度:★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)