ワルキューレ Valkyrie 2008
U.S. Release Date: 2008
■監督/製作:ブライアン・シンガー
■キャスト:トム・クルーズ/ケネス・ブラナー/ビル・ナイ/トーマス・クレッチマン他
■音楽:ジョン・オットマン
■字幕:戸田奈津子
■お勧め度:★★
「トム・クルーズと「ユージュアル・サスペクツ」のブライアン・シンガー監督が初タッグを組んだサスペンス・アクション。実話を基に、非人道的なナチス政権の暴挙に疑問を抱き反乱分子となったドイツ将校が同志と手を組み、ヒトラー暗殺計画に及んでいく過程とその顛末を緊迫感溢れるタッチで描く。共演に「から騒ぎ」のケネス・ブラナー、「ラブ・アクチュアリー」のビル・ナイ。
第二次大戦下、劣勢に立たされ始めたドイツ。アフリカ戦線で左目を失うなど瀕死の重傷を負いながら奇跡の生還を果たしたシュタウフェンベルク大佐。純粋に祖国を愛するが故にヒトラー独裁政権へ反感を抱いていた彼は、やがて軍内部で秘密裏に活動しているレジスタンスメンバーたちの会合に参加する。そんなある日、自宅でワーグナーの<ワルキューレの騎行>を耳にしたシュタウフェンベルクは、ある計画を思いつく。それは、国内の捕虜や奴隷がクーデターを反乱を起こした際に予備軍によって鎮圧する“ワルキューレ作戦”を利用し、ヒトラー暗殺後に政権及び国内を掌握する、という壮大なものだった。同志たちと綿密に計画を練り、暗殺の実行も任されることになるシュタウフェンベルク。こうして、過去40回以上に渡る暗殺の危機を回避してきた独裁者を永遠に葬り去る運命の日がやって来るのだが…。」(allcinema.net/より。)
ハリウッド作品にしては出来のいい方だろう。「ワルキューレ作戦」実行過程はかなりサスペンスっぽいし、細部に気を使っているし、名前が分からないが傍役にかなりの豪華メンバー。内容的にも上の解説どおりで、「顛末」まで。トム・クルーズも適役だろう。ただしつまらない。
これ、観ているうちに感じたのは、白黒時代の超大作、「日本のいちばん長い日」(1967年、岡本喜八監督)のバクリだろう。ネタ切れハリウッドとしては。ヒトラー派を帝国軍部、反ヒトラー派を玉音放送を流すことで軍部を押さえて戦争を終わらせた木戸幸一(内大臣)派に置き換えれば。そして単なるバクリであるからして、サスペンス性は「日本のいちばん長い日」並ながら、色々な部分や要素が抜け落ちるというか描かれない。たとえばシュタウフェンベルク大佐(トム・クルーズ)は愛国心からヒトラーを倒すことを決意するが、その決意に至るまでの心理描写がほとんど無く、単に「ワルキューレ作戦」という、予備軍を利用して政権を奪取するという思い付きに終わってしまっている。「日本のいちばん長い日」では、軍部にしても木戸派にしても、各々の国を思う気持ちがふんだんに描かれ、愛国心と軍人としての責務や立場とかの矛盾や対立とかも描かれ、そうした部分が見所だった。本作品ではサスペンス性だけで、そうしたものが全く描かれない。単純な話が、本計画はヒトラーの悪運の強さで失敗した、それだけ。
言いたいことは分かる。いわゆる「ナチス・ドイツ」というのは、ヒトラーがボスのまま戦争が終わってしまったからで、当時のドイツにはヒトラーに反対する者も、それもかなり上層部まで居た。ドイツ全部がヒトラーを信奉していたわけでは無いという事だろうが、それを描いて何の意味があるのか。それも、本作での反ヒトラー派の何人かは、明らかに単に政権を奪取して自分たちが新政権のボスになりたいという月並みな動機で動いたように描かれている。これは事実だろうが、こうした描き方のせいでシュタウフェンベルク大佐の愛国心も吹っ飛んでしまっている。結果的には政権奪取を目論んだクーデターが失敗する過程を描いただけの作品。それもノンフィクションっぽく描いてしまったために更に内容が希薄になってしまった。
たとえば何故ヒトラーを倒す必要があったのかというと、史実にあるとおり、ドイツの東西分断、ベルリンの壁、東の貧困といった事態を避けるためだったろうが、その史実が分かっているのであれば、それを作品に盛り込めば、たとえ嘘でも作品としてのテーマは作れただろう。それを単なる政権奪取の野望みたいなものとして描いてしまうと、単なるノンフィクションで終わってしまう。これに比べると、「日本のいちばん長い日」では、木戸幸一らが軍部の抵抗をかいくぐって玉音放送を流すことで戦争を終わらせ、昭和天皇には戦争責任の無いことの一つの根拠を作り、それがあったために、戦争責任を主に軍部に押し付けることに成功し、結果として日本の南北分断が避けられた。玉音放送作戦が失敗して最後まで軍部が戦い続けていたら、南北分断どころか国自体がなくなっていたかもしれない。どうせパクるなら、ここまでパクって欲しかった。たとえば「ワルキューレ作戦」を反ヒトラーの象徴的なものとして描き、これやその他の暗殺計画を、少しは美化して描くか、あるいは動機に上のような史実を予測させるような部分を混ぜれば、大きなテーマとして描けただろう。ネタ切れ状態で裏で密かに日本やその他の外国作品を観てパクりたがるのは分かるが、付加的な工夫とかが無いと、ちょっと観れない。
ヒアリング度:★★
感動度:
二度以上見たい度:
劇場で見たい度:★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:
ムカつく度:
考えさせられる度:
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)
U.S. Release Date: 2008
■監督/製作:ブライアン・シンガー
■キャスト:トム・クルーズ/ケネス・ブラナー/ビル・ナイ/トーマス・クレッチマン他
■音楽:ジョン・オットマン
■字幕:戸田奈津子
■お勧め度:★★
「トム・クルーズと「ユージュアル・サスペクツ」のブライアン・シンガー監督が初タッグを組んだサスペンス・アクション。実話を基に、非人道的なナチス政権の暴挙に疑問を抱き反乱分子となったドイツ将校が同志と手を組み、ヒトラー暗殺計画に及んでいく過程とその顛末を緊迫感溢れるタッチで描く。共演に「から騒ぎ」のケネス・ブラナー、「ラブ・アクチュアリー」のビル・ナイ。
第二次大戦下、劣勢に立たされ始めたドイツ。アフリカ戦線で左目を失うなど瀕死の重傷を負いながら奇跡の生還を果たしたシュタウフェンベルク大佐。純粋に祖国を愛するが故にヒトラー独裁政権へ反感を抱いていた彼は、やがて軍内部で秘密裏に活動しているレジスタンスメンバーたちの会合に参加する。そんなある日、自宅でワーグナーの<ワルキューレの騎行>を耳にしたシュタウフェンベルクは、ある計画を思いつく。それは、国内の捕虜や奴隷がクーデターを反乱を起こした際に予備軍によって鎮圧する“ワルキューレ作戦”を利用し、ヒトラー暗殺後に政権及び国内を掌握する、という壮大なものだった。同志たちと綿密に計画を練り、暗殺の実行も任されることになるシュタウフェンベルク。こうして、過去40回以上に渡る暗殺の危機を回避してきた独裁者を永遠に葬り去る運命の日がやって来るのだが…。」(allcinema.net/より。)
ハリウッド作品にしては出来のいい方だろう。「ワルキューレ作戦」実行過程はかなりサスペンスっぽいし、細部に気を使っているし、名前が分からないが傍役にかなりの豪華メンバー。内容的にも上の解説どおりで、「顛末」まで。トム・クルーズも適役だろう。ただしつまらない。
これ、観ているうちに感じたのは、白黒時代の超大作、「日本のいちばん長い日」(1967年、岡本喜八監督)のバクリだろう。ネタ切れハリウッドとしては。ヒトラー派を帝国軍部、反ヒトラー派を玉音放送を流すことで軍部を押さえて戦争を終わらせた木戸幸一(内大臣)派に置き換えれば。そして単なるバクリであるからして、サスペンス性は「日本のいちばん長い日」並ながら、色々な部分や要素が抜け落ちるというか描かれない。たとえばシュタウフェンベルク大佐(トム・クルーズ)は愛国心からヒトラーを倒すことを決意するが、その決意に至るまでの心理描写がほとんど無く、単に「ワルキューレ作戦」という、予備軍を利用して政権を奪取するという思い付きに終わってしまっている。「日本のいちばん長い日」では、軍部にしても木戸派にしても、各々の国を思う気持ちがふんだんに描かれ、愛国心と軍人としての責務や立場とかの矛盾や対立とかも描かれ、そうした部分が見所だった。本作品ではサスペンス性だけで、そうしたものが全く描かれない。単純な話が、本計画はヒトラーの悪運の強さで失敗した、それだけ。
言いたいことは分かる。いわゆる「ナチス・ドイツ」というのは、ヒトラーがボスのまま戦争が終わってしまったからで、当時のドイツにはヒトラーに反対する者も、それもかなり上層部まで居た。ドイツ全部がヒトラーを信奉していたわけでは無いという事だろうが、それを描いて何の意味があるのか。それも、本作での反ヒトラー派の何人かは、明らかに単に政権を奪取して自分たちが新政権のボスになりたいという月並みな動機で動いたように描かれている。これは事実だろうが、こうした描き方のせいでシュタウフェンベルク大佐の愛国心も吹っ飛んでしまっている。結果的には政権奪取を目論んだクーデターが失敗する過程を描いただけの作品。それもノンフィクションっぽく描いてしまったために更に内容が希薄になってしまった。
たとえば何故ヒトラーを倒す必要があったのかというと、史実にあるとおり、ドイツの東西分断、ベルリンの壁、東の貧困といった事態を避けるためだったろうが、その史実が分かっているのであれば、それを作品に盛り込めば、たとえ嘘でも作品としてのテーマは作れただろう。それを単なる政権奪取の野望みたいなものとして描いてしまうと、単なるノンフィクションで終わってしまう。これに比べると、「日本のいちばん長い日」では、木戸幸一らが軍部の抵抗をかいくぐって玉音放送を流すことで戦争を終わらせ、昭和天皇には戦争責任の無いことの一つの根拠を作り、それがあったために、戦争責任を主に軍部に押し付けることに成功し、結果として日本の南北分断が避けられた。玉音放送作戦が失敗して最後まで軍部が戦い続けていたら、南北分断どころか国自体がなくなっていたかもしれない。どうせパクるなら、ここまでパクって欲しかった。たとえば「ワルキューレ作戦」を反ヒトラーの象徴的なものとして描き、これやその他の暗殺計画を、少しは美化して描くか、あるいは動機に上のような史実を予測させるような部分を混ぜれば、大きなテーマとして描けただろう。ネタ切れ状態で裏で密かに日本やその他の外国作品を観てパクりたがるのは分かるが、付加的な工夫とかが無いと、ちょっと観れない。
ヒアリング度:★★
感動度:
二度以上見たい度:
劇場で見たい度:★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:
ムカつく度:
考えさせられる度:
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)