BABY BABY BABY! ベイビィ ベイビィ ベイビィ!(2009)

2009-05-30 04:23:15 | Weblog
BABY BABY BABY! ベイビィ ベイビィ ベイビィ!(2009)

U.S. Release Date:

■監督:両沢和幸
■キャスト:観月ありさ/松下由樹/斉藤由貴/吉行和子/神田うの/伊藤かずえ
■音楽:鴨宮諒
■字幕:
■お勧め度:★★★

 「TV・劇場版共に好評を博した「ナースのお仕事」シリーズのスタッフ・キャストが手掛ける観月ありさ主演のコメディ・エンターテインメント。一夜限りの相手との間に思い掛けず子を宿してしまったキャリア・ウーマンのヒロインを中心に、様々な事情で出産に臨む妊婦たちのドタバタ奮闘ぶりを笑いと感動を織り交ぜ描く。共演に「大奥」の松下由樹、「ハンサム★スーツ」の谷原章介。監督は「Dear Friends ディア フレンズ」の両沢和幸。
 30代で未婚の佐々木陽子は大手出版社の編集者として働き盛り。新雑誌の編集長への昇進も決まり、順風満帆なキャリア人生を歩んでいた。だがそんな中、たびたび吐き気を催し、生理も遅れていた彼女は、もしや、と薄々感づきながら産婦人科のドアを叩くことに。そこには、40代にして4人目を妊娠中のベテランやその妊婦仲間、ワケありセレブなどの個性的な面々のほか、不妊治療中の夫婦も訪れていた。そして陽子は産科医から、やはり妊娠2ヶ月と診断される。相手はベトナム取材で一緒だったフリー・カメラマンの工藤哲也。その時酒の勢いで寝てしまった挙げ句、この結果をもたらしたのだった。こうして陽子は、哲也を呼び寄せ、無念の退職を決意し、いざ未知なる出産の道に突き進むこととなるのだが…。」(allcinema.net/より。)

好きなドラマだったので「弁天通り」ではなくてこっちを優先したが、そこそこ楽しめる作品。最近の邦画の好調ぶりというのは、こうしたテレビドラマなみの作品でも、一応は映画と言えるレベルに達していることだろう。「ナース」では主演といってもヘマばかりの観月ありさもかなり女優として成長して、痴呆症役の吉行和子といい勝負できるまでになった。これがメインだろう。斉藤由貴もかなり女優っぽくなって、産婦人科医。「ナース」ではむしろ主演級だった松下由樹が、出番は多いものの、むしろこの3人のサポート役に徹したことは作品の構成上、よかっただろう。コメディとか笑える映画作品というより、主に観月ありさと斉藤由貴の女優としての成長ぶりを描く事に重点を置いたような気がする。その意味では楽しめるが、作品自体はそれほどのものではないだろう。テーマ的にはキャリア・ウーマンとして生きることしか知らない佐々木陽子(観月ありさ)が不本意な妊娠に最初は戸惑い、拒絶しながらも、胎児が育つにつれて「女らしい」?生き方に目覚めるというような事だろうが、妊娠をきっかけに会社をやめてしまうという筋書きは、ちょっと作為的かもしれない。とは言ってもこれがなかったら作品として「分裂症」になるのでしょうがない選択だっただろう。洋画だと女の社会進出というのは、あたかも当然の事のように描かれるが、果たしてそうなのかというのもテーマ。むしろ元の「ナース」とは逆のテーマ、というと大袈裟になるが、両方、あってもいいのじゃないか。妊娠して子供を産めるというのは女だけの特権なので、それを美化して描いても、だから女はダメだという事には繋がらない。この点は、少しばかり経験不足の産婦人科医の母親である痴呆症の吉行和子が、最後の大変な事態になった所で回復して手腕を発揮するという筋書きで充分、カバーしている。実質的にはフジTV単独製作なので、これ以上のものを望む方が無理だろう。映画作品としてはこちらが上。ドラマとしては「ナース」の方がはるかに面白いだろう。どちらを取るかは観る方の選択だろう。観月ありさは、これから女優として、かなり期待できそうだというのが最大の収穫。元々は、演技どころか歌もまともに歌えないアイドル歌手だったことを考えれば、女優として頑張って欲しいし、その素質はあるだろう。こういうガッチリタイプというのは邦画界ではあまり居ないし。


ヒアリング度:
感動度:★★★
二度以上見たい度:★★
劇場で見たい度:★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

60歳のラブレター (2009)

2009-05-23 09:23:07 | Weblog
60歳のラブレター (2009)

U.S. Release Date:

■監督:深川栄洋
■キャスト:中村雅俊/原田美枝子/井上順/戸田恵子/イッセー尾形/綾戸智恵/(石黒賢/佐藤慶)
■音楽:「ミッシェル」(ギター&歌:イッセー尾形)/森山良子(エンディングテーマ)
■字幕:
■お勧め度:★★★★(★)

 「2000年から毎年行われている人気応募企画で、これまでに8万通を超えるはがきが寄せられたという“60歳のラブレター”をヒントに、人生の節目を迎えた3組の夫婦の愛と人生を描いた感動ドラマ。出演は中村雅俊、原田美枝子、井上順、戸田恵子、イッセー尾形、綾戸智恵。監督は「真木栗ノ穴」の深川栄洋。
 仕事一筋で家庭を顧みず、挙げ句に若い愛人までつくって好き放題の孝平と専業主婦で家族に尽くしてきたちひろは、孝平の定年を機に、離婚を決意するが…。魚屋を営む正彦と光江は、口げんかが夫婦の潤滑油。正彦の糖尿が見つかってからというもの、光江は食事療法にウォーキングと、正彦の健康管理に気を配る日々だったが…。5年前に妻を亡くし、高校受験を控える娘と2人暮らしの医師、静夫。海外小説の医療監修を依頼された彼は、そこで出会った翻訳家の麗子といつしか恋に落ちるが…。」(allcinema.net/より。)

3組の夫婦プラス1(文芸翻訳家、戸田恵子)を扱った、一部、30年に渡る人生ドラマ。2000年から60歳を引くと1940年代。主人公たちはいずれも戦後生まれの戦後育ちで、成人ないし結婚してからの30年をどう生きてきたか、あるいは今、どう生きているか、これを30年というスパンで描いたオムニバス作品。解説の「仕事一筋で家庭を顧みず、挙げ句に若い愛人までつくって好き放題」は勝手な解釈だろう。戦後生まれの孝平(中村雅俊)は、ほとんど何も分からないまま、戦後の復興期と、後の高度経済成長期を、せいいっぱい生きて来た人間。「仕事一筋で家庭を顧みない」のが当たり前だった時代。その妻(原田美枝子)も、孝平が働いていた建設会社の社長だかの一人娘で、これも当時としては普通だった親の意による結婚。そうした二人の仲が破局するのは、二人のせいというより時代の結果、産物だろう。という事を明確に描いて、それに打ち勝つ二人の姿を描く。魚屋を営む正彦(イッセー尾形)と光江(綾戸智恵)は、同じく時代の結果として今はしがない魚屋だが、上の二人とは対照的な仲のいい夫婦。3組目の静夫(井上順)は、研究が成功せず、今は細々と暮らす医師。それが、表面的には成功者だが、仕事以外は何もできない翻訳家(戸田恵子)と出会い、死んだ妻とは全く違うタイプの女に新境地を見い出すような形で惚れる。これに抵抗する娘。この筋書き、というより作品構成、オムニバス性、人物描写というのが面白いし、オムニバス性に関しては、かなり微妙なタイミングで切り替えている。はっきり言って劇場で観る作品ではないものの、これをテレビで観たら、コマーシャルの関係で何が何だか分からない作品になるだろう。「劇場で観る作品ではない」と言っても、かなり作り込んだ作品だろう。30年というスパンから来る浅さと、部分部分でかなり深い人物描写を微妙にバランスさせた後が見られて、かなりサスペンス性もある。大会社を本人の意志で退職して離婚して生活力の無さを暴露することになる孝平(中村雅俊)はかなり笑えるし、離婚して初めて本当の夫婦、というより人間として付き合えるようになるこの二人は感動ものだし、ちょっと驚いたのはイッセー尾形が弾き歌う「ミッシェル」が凄くいい。この二人は、そもそも妻の方が彼の追っかけをやっていて、当時の「ミッシェル」(ザ・ビートルズ、ポール・マッカートニー)に惚れたというのも伏線としては効果的。

なんで30年、60歳かと言うと、ある程度、歳とると、30年というのはあっという間のことで、「仕事」「主婦」「商売」とかしていると、それだけで過ぎてしまう。同じ生きるといっても、先週の「余命1ヶ月の花嫁」で若い二人が一日一日を大事に必死に生きたのに比べると、10年ぐらいの単位で過ぎてしまう。それは一種の壁で、年老いた者が背負うハンディでもあるし、人生経験という事からすれば若者には無い強みでもある。元の企画はNHKらしいので、どういう意図だったか分からないが、作品はおそらくそれとは別のオリジナルだろう。最初のシーンから謎の関西男が動き回っている。実は彼が二人の仲を、というようなミステリーっぽい部分もある。三種三様の夫婦ないし結婚像を見て、結婚、恋愛、夫婦の絆とかを考えるには、いい作品。ただし出てるやつが原田美枝子以外は、ほとんど元アイドルか、お笑い系だという問題はあるが。それが必死に演技しているのは、むしろ笑える。戸田恵子のファンは(そんなの居るか?これ、書いてるやつ以外)、声優以外のいつものケバいチョイ役以外にも、かなり出番を貰えたので、これだけでも観る(見る)価値はあるだろう。製作:テレビ東京/松竹「フィルム・パートナーズ」。これも「余命1ヶ月の花嫁」とは違った意味で残る作品。30年間、知らずに夫を愛し続け、30年前のラブレターで、夫に惚れられる原田美枝子っていうのも。(「いい女」と書くと誤解されそうなのでやめとく)


ヒアリング度:
感動度:★★★★★
二度以上見たい度:★★
劇場で見たい度:★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★★★★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

余命1ヶ月の花嫁 (2009)

2009-05-15 03:48:18 | Weblog
余命1ヶ月の花嫁 (2009)

U.S. Release Date:

■監督:廣木隆一
■キャスト:榮倉奈々/瑛太/手塚理美/安田美沙子/柄本明
■音楽:大橋好規 主題歌:JUJU『明日がくるなら』
■字幕:
■お勧め度:★★★★★

 「ドキュメンタリー番組としてテレビで放映され大きな話題を集めた実話を、「瞳」の榮倉奈々と「アヒルと鴨のコインロッカー」の瑛太の主演で映画化した感動ヒューマン・ストーリー。監督は「ヴァイブレータ」「きみの友だち」の廣木隆一。イベントコンパニオンの千恵は、ある展示会場で太郎と知合い、交際を申し込まれる。しかし、その時すでに乳がんと診断されていた千恵は素直に喜べない。病気のことを隠して交際を始めたものの、数ヵ月の後、ついに乳がんであることを告白し、自ら別れを告げるのだった。その後、千恵を追って屋久島までやって来た太郎は、“一緒にがんばろう”と強い覚悟を伝え、千恵も改めて太郎と生きていこうと決意するのだったが…。」(allcinema.net/より。)

ちょっと違うでしょう、解説が。二人が付合い始めた時は、まだ千恵の乳がんは発症していない。だから付合い始めたわけだし、その頃が一番、幸せだったという背景があって、その後の発症後の二人やその友人その他の関係が本題だろう。「病気のことを隠して交際を始めた」と言ってしまうと、本作品の最大のテーマが誤解される。このテーマというのは死に至る過程ではなくて、その過程で生きる事とはどういう事なのかを、若い二人が学ぶ事だろう。したがって内容的には悲劇ながら、観た印象としてはとても爽やかで清清しいものすら感じる。確かに闘病生活が主ではあるものの、その中で必死に生きようとする二人がとてもリアルというか本物っぽく描かれている。これにはかなり工夫があって、特に千恵の重要な台詞はアドリブだろう。榮倉奈々というのは全く知らないので女優だか歌手だか分からないが、少なくとも女優が演技しているといった感じがしない。行動や台詞にすごい自然さが感じられる。これが上の本物っぽさに繋がり、生きる事を描くことにも繋がっている。女優が台本どおりに演技していたら、この作品は単なる闘病物の悲劇に終わっていただろう。おそらくは重要な台詞は、特に千恵の場合は筋書きどおりの状況に、暗示をかけるとかして追い込んで、本人自身を実話の「千恵」にして、その千恵だったらどういう台詞を言うか、これを榮倉奈々の力量に任せた。このために演技臭さや、榮倉奈々には悪いけど、女優としての演技力の無さを綺麗にカバーしている。ここらへんの作品製作上の巧さは、かなり古いが似たような作品である「ある愛の詩/Love Story」(1970年)と比べれば歴然としてくる。あれはまさに悲劇性で客を引き付けて話題となり、彼女役にわざわざブスのアリ・マッグローを使ったが、次の作品に出ただけで消えた。ついでに音楽で取り繕って、おそらく「Love Story」という曲は知っていても、筋を覚えている人は少ないだろう。本作品の場合は、そもそもこれを映画作品として完成させようというような目論見すら排除して成功している。これが二人の仲を自然に描くことに繋がり、作品を単なる悲劇に終わらせず、むしろ生きること、生きていることの素晴らしさを描くことに成功している。ちょっと乳癌防止といった観点からは逆効果なような気がするが。むしろ作品を観て、こうした死に方に憧れるオバカな....も出てくるのではないか。というのはしかし横道で、作品の素晴らしさのたとえ。 榮倉奈々、瑛太というキャスティングもいいし、千恵の父親役の柄本明もベテランになって作品のテーマや意図を良く分かったような演技。千恵の友達役の子たちもいいサポート。特にネイリスト役の、もちろん若いので名前は分からないが、これもちょっとしたキー役で、これは女優としては有望な気がする。先週の「GOEMON」が見るだけ作品だったせいか、むしろ映画作品としては本作品の方が出来が上のような。福次的なテーマとして「恋」と「愛」というのがある。これは書くと長くなるのでやめとくが、「初恋」と言って「初愛」とは言わない、という事だけ。

最近の邦画の好調ぶりというのは、質にとどまらず量でも証明されている。最寄りのシネコンが松竹系なので他は分からないが、14作品のうち洋画は2本だけ。ほんの1年前と比べると完全に逆転。それと「GOEMON」もそうだったが、本作品も、「製作委員会」というのが消えて、製作会社のみの表記となっている。「製作委員会」というのは隠れ蓑みたいなもので、責任逃れでもある。それが消えたという事は、作った作品の質に自信があるという事だろうし、その通り。昔は欧州映画が一つのジャンルまで形成していたが、今は消えた。同じように消えていた邦画が主役となってもおかしくは無い。むしろおかしいのは、日本の映画館なのに、上映される作品の大半が洋画だったという事だろう。今後も楽しみな邦画が続いている。こうなったらもう落ちぶれた洋画、特にハリウッド作品は観る必要も価値も無いところまで追い込んで欲しい気がする。願わくば観る方が昨今の邦画の好調ぶりを知って映画館に来てくれる事。そうすれば製作者の努力も報われるだろうし、歴史でも初めて邦画が主流になる時代も来るだろう。それに映画が育てば大物役者も自然と育つ。金城武なんて、ほとんど「レッドクリフ」で育ったようなものだろう。


ヒアリング度:
感動度:★★★★★
二度以上見たい度:★★★★
劇場で見たい度:★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★★★★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

GOEMON (2009)

2009-05-10 00:29:22 | Weblog
GOEMON (2009)

U.S. Release Date:

■監督/原案/脚本:紀里谷和明
■キャスト:江口洋介/大沢たかお/広末涼子/ゴリ/要潤/奥田瑛二/伊武雅刀/寺島進/平幹二朗
■音楽:松本晃彦 主題歌:VIOLET UK「ROSA」
■字幕:
■お勧め度:★★★★

 「「CASSHERN」で鮮烈なデビューを飾った紀里谷和明監督の長編2作目。戦国の世を舞台に、大泥棒・石川五右衛門をはじめ歴史上の人気キャラクターたちが繰り広げる奇想天外なストーリーが、時代劇の枠にとらわれない大胆かつ斬新なヴィジュアルで綴られるアクション・エンタテインメント。主演は江口洋介、共演に大沢たかお、広末涼子。
 1582年。天下統一目前の織田信長が明智光秀の謀反に遭い本能寺にて非業の死を遂げた。その悲報を受け、信長の右腕・豊臣秀吉はすぐさま光秀を討ってとり主君の無念を晴らすとともに、自ら天下統一を果たし、ここに豊臣の治世が始まった。しかし、それなりの平安は訪れたものの、格差は広がり、庶民の困窮ぶりはひどくなるばかり。そんな時、彗星のごとく現われた天下の大泥棒・石川五右衛門。金持ちだけを狙って盗みを働き、貧しき者に分け与える義賊行為で一躍庶民のヒーローに。ある夜、五右衛門が紀伊国屋文左衛門の屋敷からたまたま盗み出した南蛮製の箱。やがて五右衛門は、石田三成が配下の霧隠才蔵を使い、その箱の行方を血眼に追っていることを知るのだが…。」(allcinema.net/より。)

邦画界に中国なみの予算があったら凄い作品ができるだろうと書いた矢先、凄い作品でした。どうやら予算はあるようだ。なんだかんだ考えるようなテーマらしきものは無いものの、壮大なCGとスケールの純粋娯楽作品。

基本的な手法として、思い出せないが洋画であった青っぽい白黒映像に、血とかの必要な部分だけ色を付けるというのが駆使されて、従来の時代劇とは似ても似つかない雰囲気を出している。これにアクションの特撮は、アメコミのそれ以上だろう。筋書き的に史実を少し変え、当時の実在の人物や伝説の人物を、史実や所属関係をかなり無視して独自の物語りにした。石川五右衛門の物語りであって実はそうではない。「GOEMON」の物語り。邦画でもこれだけの作品を作れるという事を証明した作品。誉めるのはこれで充分だろう。問題がかなりある。

GOEMONの親友であり宿敵でもある霧隠才蔵役の大沢たかお、彼はテレビ役者?「ICHI」では綾瀬はるかのいいサポート役を演じたが、GOEMON役の江口洋介がある程度、アクションが出来るのに対して大沢たかおはひどい。普通に歩いているシーンが一ケ所だけあるが、隙だらけ。ヤクザ/悪者役でおなじみの服部半蔵役の寺島進と比べるとひどい差がある。人物に関しての見所は、圧倒的に織田信長役の中村橋之助だろう。歌舞伎役者らしい舞いを見せてくれる。ただし映画俳優として見ると、歌舞伎役者というのは「型」を重視する必要があるしそれが持ち味なので、見るだけならいいにしても、映画俳優としての演技は期待できない。本作品での信長はむしろヒーロー的な人物として描かれるので問題とはならないが。ただし邦画の致命的な欠陥である大物役者の不在ぶりを補うまでには至っていない。これだけの大作となると、やはり大物役者の不在というのが、致命的。どうせフィクションだし、従来の時代劇とは違うことを強調したかったのなら、「レッドクリフ」でも分かるように、いくらでも居そうな、中国から本物のアクション俳優を借りてきてもよかっただろう。日本語は分からなくても台詞はなんとかなる俳優はいくらでも居るだろう。極端な話し、邦画なのだから、吹き替えでも構わない。少なくともCGのスケール的には「レッドクリフ」より上ながら、登場人物がどうしようもなく存在感が無い。これに加えて、上に書いた撮影手法、このせいでベテラン陣、特に平幹二朗、伊武雅刀が戸惑っているような印象すらする。本来の持ち味を出せたのは、出ずっぱりの奥田瑛二(豊臣秀吉)ぐらいじゃないか。それに筋書き的にGOEMONと茶々のラブストーリーっぽい部分があるが、なぜ茶々役に広末涼子なのか。「おくりびと」でも書いたが脚が綺麗なだけじゃないか。結果的にこの二人のシーンでは江口洋介が「出てるだけ」状態に押えるハメになっている。アイドルかどうか知らないが、映画作品として作るなら、他にマシな女優はいくらでもいるだろう。この役は往年の角川映画だったら文句無しに薬子丸ひろ子だろう。こうした問題を総括すると、この製作者ないし監督は、ビジュアル重視で役者の事をほとんど考えないでこの作品を作ったとも言える。これにテーマの無さを加えると、単なるビデオクリップ的な作品とも言える。それにフィクション化するにしても、脈絡が無いだろう。霧隠才蔵と、GOEMONに仕える猿飛佐助は真田十勇士の一員だろう。作品では霧隠才蔵とGOEMONは、史実では幸村の最大の敵、徳川家康の忍、服部半蔵の弟子という事になっている。おまけに猿飛佐助は家康に仕官したような結末になっている。なんか単に監督、製作者の趣味で、こうした人物をでっち上げたような感じがして、この点はかなり抵抗がある。とは言っても、これだけの作品に役者まで揃ったら、それこそ洋画、特にハリウッド作品は、後回しにするか、観ない方がいいような状態になるが。それにビデオクリップ的な作品として見るだけでも、充分、観る価値はあるだろう。変な意味で、これからの邦画にさらに期待を持たせるような作品。


ヒアリング度:
感動度:★★★★
二度以上見たい度:★★★
劇場で見たい度:★★★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:
ムカつく度:★★★★
考えさせられる度:★★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)

グラン・トリノ Gran Torino 2008

2009-05-03 02:40:24 | Weblog
グラン・トリノ Gran Torino 

U.S. Release Date: 2008

■監督:クリント・イーストウッド
■キャスト:クリント・イーストウッド
■音楽:カイル・イーストウッド
■字幕:戸田奈津子
■お勧め度:★★★

 「「ミスティック・リバー」「ミリオンダラー・ベイビー」の巨匠クリント・イーストウッド監督が、自ら主演して世の中に怒れるガンコ老人を演じた感動の人間ドラマ。急速に様変わりしていく世間を嘆き、孤独に生きる人種差別主義者の偏屈老人が、ひょんなことから隣人のアジア系移民家族と思いがけず交流を深めていくさまをユーモアを織り交ぜつつ綴る。
 長年一筋で勤め上げたフォードの工場を引退し、妻にも先立たれた孤独な老人ウォルト・コワルスキー。自宅を常にきれいに手入れしながら、M-1ライフルと72年製フォード車グラン・トリノを心の友に静かで退屈な余生を送っていた。しかし彼の暮らす住宅街に、もはや昔馴染みは一人もおらず、朝鮮戦争帰還兵のコワルスキーが嫌ってやまないアジア人をはじめ移民の外国人ばかりが我が物顔でねり歩く光景に苦虫をかみつぶす毎日だった。そんなある日、彼が大切にする庭で、隣に住むモン族の気弱な少年タオが不良少年グループに絡まれていた。彼らを追い払おうとライフルを手にしたコワルスキーだったが、結果的にタオを助けることに。タオの母親と姉がこれに感謝し、以来何かとお節介を焼き始める。最初は迷惑がるものの、次第に父親のいないタオのことを気に掛けるようになるコワルスキーだったが…。」(allcinema.net/より。)

映画作品というより超低予算のテレビドラマ。とは言っても色々とクリント・イーストウッドらしさが出ていて楽しめるし、かんぐれる。

要するにこれって「ミリオンダラー・ベイビー」で(観客を無視して)アカデミー賞を取ったことに対する「ごめんなさい」作品。両作品のラストを比べれば分かる。同じかっこ良さにしても、「ミリオンダラー・ベイビー」のそれがモロ賞取りのためのそれだったのに比べ、本作品のは観客が感動するタイプ。似たような筋でもあるし。これだけの「巨匠」になると、こういう事は自由自在にできるのだろう。「硫黄島」(両方)とも関係あるだろう。「硫黄島」では現役兵士や戦争を客観的、分析的に描いたのに対して、本作品では朝鮮戦争で戦った兵士の「その後」を描き、人生を終えるに当たり自分がやった事の落し前のつけ方をどうするか、それを少年タオやその家族との交流を通じて考えるようになる。この歳になると異文化に興味を持つのだろうか。タオやその家族は、なんとか族という、国ではなくていくつかの国に散らばって住んでいる「民族」で、前2作では白人、黒人とか日本人とかと人種単位で描いたのに比べ、この民族の文化を描くことにも重点が置かれ、むしろそれと対照的にウォルト・コワルスキーという、ド・アメリカ人像を描いた。この事を(邦画を見倣ってか)グラン・トリノという車とか時代物のM-1ライフル(第二次大戦で使った歩兵用の銃)を使い補完している。多少は笑える作品でもある。コミュニケーションの成り立たない長男夫婦に老人ホーム入りを勧められた時のキレる寸前の表情は「圧巻」。とは言ってもクリント・イーストウッド自体、演技派ではないし、台詞が上手いわけでは無いので、こういう作品こそ吹き替え版で観た方が字幕を読まない分、気楽に観て楽しめるだろう。共演者と言っても特に大物は出てないし、タオはむしろ傍役。彼の姉きがむしろ助演で、偏屈老人と交流を図るという難しい役を演じている。彼女との交流を通じて異文化に興味を持ちはじめ、偏屈状態から抜け出して、自分にとってのベストな落し前のつけ方を見い出す、というような筋とも取れる。しかしなんだかんだ言っても、アカデミー賞を取るための作品を簡単に作って、巨費を投じた戦争映画では、それまでになかったような描き方をして、本作品では思いっきり低予算ながら、色々とかんぐれる作品を作れるというのは、やはり「巨匠」だろう。長いし。最初は白黒時代の西部劇系のテレビドラマじゃなかったか。それから「マカロニウエスタン」、それのマンネリ性を自分で批判したような、これは個人的に一番、好きな作品だが「アウトロー」(1976)。本作品では「ダーティーハリー」の45口径というかリボルバーをあえて使わず、そこらにあるようなオートマチック。これも小道具に凝る邦画に触発されたか。しかし本作品をクリント・イーストウッドの映画人としての長い歴史の一部として観れば分かるし楽しめるだろうが、そうでない場合は「駄作」として観てしまうかもしれない。


ヒアリング度:★
感動度:★★★
二度以上見たい度:★★
劇場で見たい度:★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)