ブラインドネス Blindness 2008

2008-12-20 23:37:59 | Weblog
ブラインドネス Blindness

U.S. Release Date: 2008

■監督:フェルナンド・メイレレス
■原作:ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』(日本放送出版協会刊)
■キャスト:ジュリアン・ムーア/ダニー・グローヴァー(ナレーション兼任)/マーク・ラファロ他
■音楽:マルコ・アントニオ・ギマランイス
■字幕:太田直子
■お勧め度:★

 「「ナイロビの蜂」のフェルナンド・メイレレス監督が、ノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説『白の闇』を国際色豊かなキャスト陣で描いたパニック・サスペンス。ある日突然失明する謎の病気が感染症のように世界中に蔓延していく中、隔離施設に閉じ込められた発症者たちが極限状況で露わにしていく様々な人間の本性を寓話的に描き出す。主演は「エデンより彼方に」のジュリアン・ムーア。日本からも「CASSHERN」の伊勢谷友介と「寝ずの番」の木村佳乃が参加。
 ある日、車を運転していた日本人の男が突然視力を失い、目の前が真っ白になる事態に見舞われる。しかし、彼を診た医者によれば、眼球に異常はなく原因は不明だった。その後、同様の患者が各地で続出、混乱が広がっていく。感染症の疑いが濃厚となり、政府は緊急隔離政策を発動し、発症者を片っ端からかつて精神病院だった隔離病棟へと強制収容していく。最初の患者を診た医者もやはり失明し、隔離病棟送りとなるが、その際、医者の妻は自分も失明したフリをして夫に付き添うのだった。彼女だけは、なぜか失明を免れていたのだ。こうしてただ一人、目が見えていながら隔離病棟内に入り込んだ医者の妻は、やがて想像を絶する惨状を目の当たりにするのだが…。」(allcinema.net/より。)

つまらなそうだったので後回しにしたが、「邪馬台国」を観た方がよかった。なんとか賞(アカデミー賞ではなく)を取りそうな映画人好みの作品。エンタテインメント性ゼロ。

なぜ失明したかという病気の謎は解明されず、ただひたすら、突然失明した人々の醜態を描き、なぜ一人だけ失明しなかったのかという事も説明無し。これはこれでいいにしても、見えないことの苦しみを、「ICHI」の一言、「目が見えないから何を斬るか分からないよ」を、2時間10分かけて描いた「労作」。色々とテーマはあるのだろうが、ベテランの盲人ならいざしらず、いわば素人の盲人が住み行動するために、収容所も町もゴミだらけ。これだけゴミの山を見たら、有るテーマも吹っ飛ぶ。

映画作品として出来がいいというやつだろう。収容所の醜態を、一人だけ見えるジュリアン・ムーアの視点を借りて見るという構成で、観る側はそれに引き込まれる。醜態の描き方にしても、まさに赤裸々に人間の本性を描き、リアリズム系のアートっぽい。かつ、目が見えないことで物を奪い合う様は、ゾンビ映画っぽいが、それを恐怖映画っぽく描くのではなくて、リアルに描くことで、ゾンビ映画のノリとは一線を画したいという意図も見られる。これに、いかにも映画人が好みそうな真っ白な画面や真っ黒な画面を入れて、テレビだったら間髪入れずに放送局に苦情の電話が殺到しそうな「工夫」が見られる。こういう作品が嫌いな場合の唯一の見所は、一人だけ見えるジュリアン・ムーアの活躍。わずかばかりの信頼のおける被収容者を助け指導し、家族っぽい絆を築く。

作品中、人名が一切、出てこないが、これは原作の小説を忠実に映画化したためだろう。むしろ作品よりか、小説では人物をどうやって描いたのだろうか、こちらの方に興味が湧く。まさかいちいち「医者の妻」とか書かないだろう。おそらくは人名をあえて使わないことで、誰が誰なのか分からないという、それこそ失明状態を小説自体に織り込んだ書き方がされたと思うが、映画では人物が見えるし判別できるため、この構想は水泡に帰している。その意味では原作に忠実に映画化した事で、むしろ原作の、おそらくは最大の読み所を無にしてしまった失敗作。ゴミと醜態フェチ以外は、観る価値の無い作品だろう。カナダ、ブラジル、日本共同作品。なんで日本語の台詞にそのまんまの字幕が付いているのだろうか。どうでもいい所で笑える作品ではあるが。


ヒアリング度:★★★
感動度:
二度以上見たい度:
劇場で見たい度:
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:
ムカつく度:★★★★
考えさせられる度:
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)