引き出しの中のラブレター (2009)

2009-10-17 06:16:38 | Weblog
引き出しの中のラブレター(2009)

U.S. Release Date:

■監督:三城真一
■キャスト:常盤貴子/中島知子/仲代達矢/林遣都/八千草薫/片岡鶴太郎/萩原聖人
■音楽:吉俣良
■字幕:
■お勧め度:★★★★(★)

 「伝えたくても伝えられずにいた大切な想いを、ラジオを介して届けることでつながりを取り戻していく人々の物語を、複数のエピソードを巧みに交錯させながら紡ぎ上げた感動のヒューマン・ドラマ。主演は「20世紀少年」の常盤貴子。監督は多くのテレビドラマで演出やプロデューサーを務める三城真一。
 ラジオ・パーソナリティの久保田真生は、4年前に父親と衝突して絶縁してしまい、修復できないまま父親は2ヵ月前に他界してしまう。その遺品の中には、投函できずに引き出しの中にしまったままの真生宛の手紙があった。そんなある日、番組に北海道の高校生・直樹から“笑わない祖父を笑わせるにはどうしたらいいか”という投書が届く。さっそく、笑わせる方法を募集する真生だったが、その祖父が直樹の父親と絶縁状態にあると知り、自分と父親の姿を重ねてしまう。やがて、そんな心の引き出しにしまい込んだままの大切な想いを、ラジオがリスナーの代わりとなって送り届けるという番組を企画する真生だったが…。」(allcinema.net/より。)

これ、もしかして70~80年代の深夜放送の回顧的映画版?今のラジオ放送は分からないけれど、こういう事はやってないだろう。そもそも「引き出しの中のラブレター」というのが当時のノリっぽい(「紫葵のカトリーヌ」)。これ、検索しても出て無い。という事は、この作品の製作者は当時の深夜放送を聞いていた50歳代?なら分かるけど。当時の主流だったTBSとかじゃなくて六本木のJ-WAVEを選んだのは、今のラジオ放送と音楽の批判か。最初はこれ、テレビ局作品だと思ったが、実は松竹。確かに怪しいところはあった。風景とかが綺麗すぎるし、役者を完全に無視して作品構成だけに重点を置いている。こういうのはテレビ局では真似が出来ない。常盤貴子を主演に選んだのも映画会社の強みだろう。「20世紀少年」であれだけインパクトのある演技を見せた女優に演技をさせていない。おまけに題材的には3組の親子と夫婦の切れた絆を描くというテレビドラマなみの物。テレビ局作品が良くなった事に対する完全な挑戦か。まあ「釣りバカ」のレベルと言えないことも無いが。しかしあの頃の深夜放送を知らない世代はこの作品をどう見るのだろうか。おそらくはラジオ放送というのは型だけで、ヒューマン・ドラマの部分がメインだと思うだろう。当時の深夜放送を知っていて、音楽の歴史と役割の変化も知っていて、90年代以降のラジオ放送がどういう末路を辿ったかも知っていれば、本作品のテーマなり筋書きは分かるだろうが、そうでない場合は嘘っぽい感じがするのじゃないだろうか。その危険をあえて犯してまでこの作品を作ったのは何故だろうか。単に製作者の懐古趣味だけじゃないだろう。この作品が今の世相と音楽とラジオやテレビ放送の批判だと分かれば、作品の持つ意味は分かるだろうが、そうでない場合は。例を挙げてみると、愛川欽也がやっていた深夜放送で、愛川が留守の時に、よく遊びに来ていた永六輔が2時間、日本国憲法を読み上げた。黒柳徹子にいたっては、当時日本を訪れたエリザベス女王陛下の通訳をやってイジめた話しを何の「検閲」もなくしゃべくり回していた。今はあまり良く思われていないらしいが、当時は素敵だった、あべ静江が、若いにも係わらず愛川たちの大人の話に必死で食らい付いていた。関係無いような例だが、ラジオ、それも深夜放送だから話せる本音、そうした本音を、世代を越えて打ち明ける機会が少なくなっているのではないか、この作品はそれを描きたかったのかもしれない。しかしこれを分かれというのは難しいだろう。それと当時の深夜放送が繁栄した最大の理由はリスナーからの投稿で、高校生にも係わらず、そこらの小説家のはるか上をいくような文を書いていた。放送する側と聞く(単に「聴く」じゃなくて)側が一体だったような感じで、中には親や友人とかよりも深夜放送を身近に感じていた学生もいただろう。それが悪いというのじゃなくて、身近に感じられる存在がいるというのが大事で、それが親や友人だろうと深夜放送だろうと関係なく、今はそうした身近な存在、本音を言える相手がいないというのが作品のテーマかもしれない。この事は単にそうした存在がいないというだけではなくて、そもそも本音を言う能力が欠落している場合が多いのじゃないか。なんかやたら感動したのは、そうした事を、ほんとにさりげなく描けてしまった作品の力量だろう。それも、ありふれた題材を選んで役者には殆ど演技をさせず、風景の綺麗さだけが目立つような作品にしたのは、作品を作るにあたってなんの野望も無いという事を証明したようなもの。これで松竹まで復活するとなると、今後の邦画は予測もできないほど発展するのだろうか。当時の深夜放送を知りたかったら「ナッチャコパック」で丹念に検索すれば、CD-R、50枚、みつかる。あまり宣伝する事は避けるが。


ヒアリング度:
感動度:★★★★★
二度以上見たい度:★★★★
劇場で見たい度:★★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:★
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★★★★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)