HACHI 約束の犬 (2008) Hachi

2009-08-23 03:33:07 | Weblog
HACHI 約束の犬 (2008) Hachi

U.S. Release Date: 2009??

■製作:フジテレビ
■監督:ラッセ・ハルストレム
■キャスト/声:リチャード・ギア/北大路欣也/ジョーン・アレン/真矢みき
■音楽:ジャン・A・P・カズマレック
■字幕:
■お勧め度:★★★★(★)

 「長年日本人に愛されてきた感動の実話“ハチ公物語”を、本作の製作にも名を連ねるリチャード・ギア主演で映画化。監督は、リチャード・ギアとは2006年の「The Hoax」でも一緒に仕事をしている「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」「サイダーハウス・ルール」の名匠ラッセ・ハルストレム。
 遠い日本からアメリカへと送られてきた秋田犬の子犬。駅で迷子になってしまったその子犬を大学教授のパーカーが拾い上げる。受取人も見つからなかったことから、放っておけずに家へと連れ帰るパーカー。妻のケイトは最初は反対したものの、やがて子犬は家族の一員に。子犬は首輪のタグに刻まれた漢字から“ハチ”と名付けられ、パーカーに愛情いっぱいに育てられる。そしていつしか、ハチは毎朝駅までパーカーを見送りに行き、夕方5時には駅でパーカーの帰りを待つようになる。そんな強い絆で結ばれたパーカーとハチの姿は、駅で働く人々の心も和ませたいた。誰もがその幸せな光景がいつまでも続くものと思っていたが…。」(allcinema.net/より。)

これ、吹き替え版しかやってなかったので観たくなかったが、「トランスポーター」は変な時間にやっているので他に見るものが無いのでしょうがないかと思ったら、出掛けに調べたら北大路欣也がリチャード・ギアの声をやっているというので意外と面白いのじゃないか、それに製作はフジテレビという純然たる邦画だし。ついでにパーカーの同僚の教授は日本人か二世か、アフレコは自分でやっている。こういう吹き替えっていうのは面白い。そもそも声優ではない北大路欣也なんていう大物俳優が吹き替えているので特に最初の方は、口の動きと台詞が全くシンクロしていない。プロの声優がやるとシンクロしている事もあって、日本語から元の台詞を推測できるものだが、これが北大路さんの場合は出来ないという面白さがある。それに北大路欣也といったら、よく出ている役所広司や渡辺謙より数枚、格が上だろう。なぜ出てないのだろう。役所広司だって最初の頃は殆ど英語は喋べれなかった。はっきり言ってリチャード・ギアの場合は、わざわざ台詞を聞くような価値はないので、この作品は吹き替え版の方が面白いだろう。どっちみち主役はHACHI だし。

HACHIの描き方が、さすが邦画だなという感じ。彼はなぜ帰らないパーカーを待ち続けたのだろうか。ある意味でものすごくよく分かる。彼は結局子犬の時にアメリカに送られ、親兄弟も知らないし、最初に見てくれたのがパーカーで、理由は分からないけれどパーカーを気に入ってしまった。秋田犬の習性というのは知らないが、少なくとも人間に媚びるタイプじゃないだろう。おそらくは自分が気に入った人間以外には全く興味が無い。パーカーの妻やら娘もHACHIをかわいがるが、有り難迷惑そう。そしてパーカーがいなくなると、おそらくは帰って来ないという事は知っていても、その帰りを待つ以外、生きる道を知らなかったのじゃないか。駅や町の人々も彼をかわいがるが、彼からすると、こういう事はどうでもいい事で、生涯、パーカーの帰りを待つというのが彼の生き方だった。それ以外の生き方は、そもそも無かっただろう。ハチ公の話しというの戦前の事で、やれ忠犬だとかで軍部やらに勝手に意味付けされたが、本作品では、それらを綺麗に否定している。二君に仕えるとかいうのもその例で、HACHIからすれば、そもそも「仕える」という感覚も無かっただろう。早い話が、好いた人間はパーカーだけで、彼がHACHIの生き甲斐の全て。こういう描き方をしてくれたために、駅で待つ理由も分かるし感動する。HACHI役には3~4匹、使っただろうか。最後の方で老衰してかなりやつれた姿のHACHIが、おそらくは見えなくなった目で駅を出る人々を見る姿が一番、感動的。自分の生き方、生き様を一番よく表現している。好きな者のためだけに生きる。これも言ってみれば反戦作品。こういう型での反戦作品というのも初めてじゃないだろうか。忠君愛国とかの完全な否定になるわけだし。逆に言えば徹底した個人主義。しかしこの点は分かるのだろうか。徴兵制度とかが当たり前の国で。むしろ個人主義が当たり前の国だと、この作品のテーマは気付かないだろう。しかしさすがフジテレビ。出来の良さは、これだけでも観る価値はある。

反戦問題はさておいて、自分で選んだ人間ただ一人を好いて、帰ってこなくなっても生涯、待ち続ける。すごい生き方。そういう女がいたが、忘れようとして正反対のタイプの女と同棲した経験からすると、HACHIを尊敬してしまう。この同棲はもちろん、というか当然にも失敗した。HACHIを見習うべきだったのかもしれない。過去を引きずるというのは問題あるにしても、現在に過去を超えるものが無い限り、過去には最大限に執着するべきなのかもしれない。


ヒアリング度:
感動度:★★★★
二度以上見たい度:★★★★
劇場で見たい度:★★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:★★★★
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)