ハッピーフライト 2008

2008-11-23 03:29:51 | Weblog
ハッピーフライト 2008

U.S. Release Date:

■監督/脚本:矢口史靖
■キャスト:田辺誠一/時任三郎/綾瀬はるか/寺島しのぶ/岸部一徳/他
■音楽:ミッキー吉野/フランク・シナトラ『カム・フライ・ウィズ・ミー』
■字幕:(欠落)
■お勧め度:★★★

 「「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」の矢口史靖監督が航空業界の舞台裏を題材に描くエンタテインメント・アンサンブル・ドラマ。飛行機1回のフライトに携わる多種多様なスタッフそれぞれにスポットを当て、空の安全を陰に日向に支える“空のプロフェッショナル”たちが織りなす様々な笑いと感動のエピソードを、ANA全面協力の下、リアルかつ臨場感いっぱいに描き出す。主演は「スクールデイズ」の田辺誠一、共演に時任三郎、綾瀬はるか。
 機長昇格を目指す副操縦士の鈴木和博は、いよいよ乗客を乗せた実機での最終訓練に挑もうとしていた。そんな彼が乗り込む飛行機は、ホノルル行き1980便。ただでさえ緊張しているところへ、試験教官が威圧感バリバリの原田教官に急遽変更となったことで、その緊張は早くも頂点に。一方、同じ便にはこれが国際線デビューとなる新人キャビンアテンダント、斎藤悦子の姿も。そんな中、空港カウンターではグランドスタッフの木村菜採が乗客のクレーム対応に追われ、さらに整備場でも若手整備士が離陸時刻に遅れまいと必死のメンテナンスを続けていた。他のすべてのスタッフもまた、1980便を定刻に離陸させ、ホノルルまで安全に運行できるよう、それぞれの持ち場で懸命に仕事をこなしていたのだが…。」(allcinema.net/より。)

最初の5分か10分で、これはヤバイと思ったら、そのノリで最後まで行ってしまった。題名とチラシに騙された。ANAの宣伝とは言わないまでも、「全面協力」というのは、「全部紹介」の事で、上にも書いてあるが、1)キャビンアテンダント、2)操縦士、3)グランドクルー、4)整備士、5)航空管制官、6)気象関係の部署を「公平」に描いた寄せ集め作品。これに航空機パニックを加えたマジコメディー(プラス美人(「ミス」ではなく)コンテスト)。キャスト的にも主演、助演とかの「差別」も無し。そうひどい作品ではないものの、絶対的に劇場で観る価値は無い。ANAさんがマジで「協力」してくれたのは分かるし好感が持てるが、素人じゃ分からない技術的な事が説明無しの連続技。「速度計が出ない」とか「エアブレーキで降下を止める」とか言ったって、普通は分からないだろう。大型旅客機のコックピットに居るパイロットには、自機の速度が、速度計が無いと分からないという説明すら無い。特に着陸する過程では、ゲームでシミュレーターを散々、やった経験でも無いと、何がどうなっているのか全く分からないだろう。それにヴォイスレコーダーの件で、パイロットの会話は重要な部分は全て「英語」なので、字幕が無いと分からないだろう。おかげでリアル感は出ているが、たとえば航空機が横風をくらったら、機首が風上にヒネられる理由が分からないと、そのリアル感すらも湧かないだろう。そしてこの部分が最後の見せ場になっているという、笑いたいのか怒りたいのかも分からない作品。せっかくここまでリアルに描くのだったら、ちょっとした図解を入れてくれても良かっただろう。それにある意味では超豪華キャストだが、上の1)から6)までを、すべからく公平に描くのに重点を置いたため、せっかくのキャストが殆ど死んでいる。キャラ的な面白さを追求したという意味では「コメディー」。しかし印象としては、ほとんど単なる美人コンテスト。1位、チーフパーサー役の寺島しのぶ。2位と3位は顔と名前が一致しないので(調べるのがめんどくさい)「匿名」、4位に綾瀬はるか。これは年齢と役者としての経験順でもあるので、なんらかの意図があった事は想像できる。これは本物だろうが、ANAの制服が一番、似合っているのが(大工事を敢行したと思われる)寺島しのぶで、女優として今まで観たうちでは最高に魅力的、というのが最大(唯一)の印象。

邦画に関して分からないのは、製作がほとんどテレビ会社で、どの局が作ったかで作品の出来をある程度、予測するというような癖すらついてしまっている。本作品にしても、フジテレビなので、ある程度、期待していたが、問題はそういう事ではなくて、今も存在している映画会社は何をやっているのだろうか。配給会社に鞍替えしてしまったのか。テレビドラマと映画では、作り方が、かなり違うだろう。本作品にしても、テレビドラマとして観れば、面白い方だが、うるさい事言って映画として評価したら、最低の部類に属すだろう。テーマは無いしキャストは出ているだけの演技無し、筋書きは単なる航空パニック物の出来損ない。おまけに見せ場は説明不足で分からない。ついでに字幕も無し。

それとリアルに描くというのはいいにしても、これはANAの宣伝的な作品なのでしょうがないにしても、今の大型旅客機をいくら撮っても、映画作品に求めるような美は描けないという事を考えなかったのだろうか。キャビンは、どうリアルに描いてもセットの域を出ないし、そもそもジャンボ機に限らず現代の民間商用機というのは、機能だけで美やその他、余計と思われる事は何も追求していない。それがあるから、たとえば宮崎駿の描く航空機がどの作品でも思いきりデフォルメされているわけで、リアルに描くこと自体になんらかの価値が有るとは言えないだろう。ちょっと古くなるが「ローレライ」(2005年)で今でも印象に残っている名シーンで、東京に原爆を落とすために離陸した直後のB29戦略爆撃機を機関砲だったかで撃ち落とすシーンがあるが、これにはB29自体が、その目的から威圧的なデザインだったこと、この後、この日本潜水艦は「消息不明」になる事など、ロマンがあったが、同じように羽田を飛び立つジャンボ機を見ても、撃ち落としてみたいというような願望すらも湧かない。理由はジャンボ機がそれに値しないダサいデザインだからというのが大きい。この事を巧く利用したのが、ジャンボ機の残骸だけを描いた「クライマーズ・ハイ」という事になる。あの作品では、実機を描くより、残骸だけを描いた方が、事の悲惨さを描けるという考えがあっただろう。なにかちょっと考えた後が感じられない作品。決してつまらなくはないが、劇場で公開するような作品ではないだろう。


ヒアリング度:★★★★★(パイロットの台詞が分かったら、英検2級は取れるだろう)
感動度:★★★
二度以上見たい度:★★★
劇場で見たい度:★★★
ビデオ/DVDで欲しい度:
ビデオ/DVDで見た方がいい度:★★★
ムカつく度:
考えさせられる度:
(「ヒアリング度」は英語のヒアリングの勉強になるかどうかの度合)