郷が杜備忘録

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運命の人(四) 山崎豊子著

2020-03-14 | 読書
読み終えてから大分時間が経ってしまった。このところの新型コロナウイルス騒ぎで、読書もブログもちょっと気がむかなかった。

さて、この「運命の人」は単行本を上梓してから早い段階で文庫化がされたが、それは著者の山崎豊子さんが多くの読者に読んでほしいと出版社にお願いしたからだと

あとがきで語っていた。著者は、戦時中軍需工場で働いた経験があり、沖縄のひめゆり学徒兵に特別の思い入れがあったからだという。

そして、次作として第4の権力である新聞マスコミを考えていたところ、考え至ったのがこの外務省機密漏洩事件であったという。

この事件の内容は先にブログにも書いたが、密約をつかみ、糾弾した新聞記者は逮捕され、最高裁で有罪が確定した。

この事件は著者の出身である新聞社の出来事であり、健在であった当の新聞記者にも話を聞いたという。

主任弁護士を務めた先生にもお会いして、母校に寄贈してあった裁判記録を閲覧することができたという。

一方、外務省関係の取材は、当事者であった方々は、密約を否定したり、取材拒否の態度であったという。

また、沖縄への取材も続けたが、日本で唯一の地上戦が行われた土地であり、本土並みの復帰といわれながらも、現在も在日米軍基地が集中しており、

四六時中、危険にさらされており、沖縄は本土の犠牲になり続けているという。

そして、基地問題はいまだに明るい兆しはなく、普天間飛行場移転問題ももめ続けている。

沖縄は、日本の外交、防衛のありようが集約されている。



運命の人(四)は、有罪が確定した新聞記者が、地元に帰り父の事業をうけ継いだが廃業に追い込まれ、自暴自棄になり死場所をさがし彷徨の旅を続け

鹿児島港からたまたま乗った船が沖縄へ向かい、船上で声をかけてくれた人に助けられ沖縄で生活するようになった。

そして、自分がかかわった沖縄返還の実態を調べ、地元の人たちの戦争時代の苦しみ、そして占領された後の米軍との危険な共存、

さまざまな矛盾に気づき、その実態を書いて知らせていこうとする姿を描いている。




この作品が文藝春秋に出たのは2005年、単行本が出たのは2009年であった。

そうこうしているうちに、2011年の東日本大震災がおこり、災害が続き、このウイルス騒ぎとなっている。

この小説の発端となっているのは、佐藤栄作首相が行った「沖縄返還」という政策だったと思う。

しかし、その裏側には東西冷戦というものもあったと思う。冷戦自体は1991年のソ連邦の崩壊により、

終わったが、米軍の沖縄駐留は変わらなかった。

この間日本の外交は変わらなかった。沖縄の内実も変えられなかった。

この度のコロナショックで、2011年の震災からの復興はまた忘れられていくかもしれない。











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