他の方の読書ブログを読んでいてこの本に興味を持った。
この本も前に読んだ孫正義伝と同じく、三島由紀夫、本名平岡公威氏の祖父まで遡っての伝記であり、また、三島氏の作品を介しての、三島氏の内面を観察したものとなっている。
三島由紀夫の祖父、平岡定太郎は兵庫県の農民出身ながら東京帝大を卒業し、官僚となっている。その息子、梓(あずさ)も東京帝大出で、官僚になった。定太郎の孫が、作家の三島由紀夫、本名平岡公威(きみたけ)である。
三島氏も初めは大蔵省に入ったが9ヵ月で退官して、のち作家となった。三島の家系は官僚の家系でもあった。
祖父の定太郎は、平民宰相といわれた原敬に誘われ、樺太庁長官になった。ただし、その後紆余曲折があり、疑獄に襲われ、満州関係の事業にかかわったりする。
三島由紀夫についての私の知っていたことは、「金閣寺」の作者であるとともに、
昭和45年11月25日に陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で切腹、自害したことであった。
私は高校生であり、なぜそのような最後になったかについて、理解できなかった。
今回の猪瀬氏の著作は、そこに至る筋道について、三島氏の家系や本人の性格などを、三島氏の著作を通して説き明かしてくれた。
目次は、
プロローグ
第1章 原敬暗殺の謎
第2章 幽閉された少年
第3章 意志的情熱
第4章 時計と日本刀
エピローグ
となっている。
内容には、日本の戦前の歴史を交えながら、三島氏の交友関係などを通して書かれていて、歴史も勉強しながら読み進めることができた。
特に後半、「盾の会」などの設立に関して、明治時代の初期に熊本県で起きた士族叛乱、神風連の乱への、三島の傾倒があったことを知った。
三島氏の意識の内には、戦前の天皇制と戦後の民主主義との間にある違和感に、同調できない感覚があったのではないか、と私には思われた。
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