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SURGERY NOW note

がん治療と外科手術に関する新しい情報や日常診療を通じて感じたことなどを紹介します。

中山先生を悼む

2005-07-31 | 雑感
 元千葉大学第2外科教授・東京女子医大消化器病センター名誉所長で、20世紀日本を代表する外科医と言われる中山恒明先生がさる2005年6月20日に永眠されました。享年94歳でした。謹んでご冥福をお祈りいたします。私は中山先生から直接ご指導を受けたことはありませんが、千葉大第2外科の後輩ですので、第2外科関係の研究会で何度か先生のスピーチや講演を聴いたことがあります。その中で「成功の秘訣はまず始めること、始めたら止めないこと」という先生の言葉は強いインパクトのある名言だと思います。その時、お話中に広げた先生の手のひらがとても大きく見えたことも強い印象として残っています。私なりに中山先生の最も優れていた点は何だったのかと考えてみますと、次々と新しい外科治療法を開発し、それを世界にアピールしたことだったのではないかと思います。具体的な業績としては、世界に先駆けて食道がんの手術法を確立し、当時手術後の死亡率が50%以上もあったと言われる食道がん手術の死亡率を10%以下にまで引き下げることに成功したこと、スターツルによる世界最初の肝臓移植に遅れることわずか1年後の1964年に国内初の死体肝臓移植おこなったこと、食道がんに対する外科治療に加えて放射線併用療法を行ったこと、胃切除用の中山式ペッツという器械を開発して標準的な胃がんの手術法を広めたことなどが有名です。またそれまでの日本は外国の医学を学ぶ一方だったのに対して、中山先生の手術は世界的に有名になり、世界中から多数の外科医が中山式手術を見学するために千葉に来たことも中山先生の大きな業績です。その他にも日本癌治療学会、日本消化器外科学会などの大きな学会を創設する上で中心的な役割を果たしたことも有名です。 7月23日に増上寺で開催されたお別れの会では、多くの写真が展示されていましたが、その中に教授回診の写真がありました。その写真の解説に、教授回診は朝早く終わらせたと書いてあったのには個人的にとても共感しました。現在私の勤務する国立がんセンターでも、外科チーム全員で勤務時間の前に短時間で回診しています。この方法であればそれぞれ自分の仕事(手術、外来、検査、処置等)に分かれる前に回診を終えられるため仕事の効率が非常に良いのです。反対に、ドラマの白い巨塔の様に大名行列よろしく勤務時間内に多数の医師、看護師が参加するスタイルで教授回診をすることは、仕事の効率が非常に悪いことが明らかです。私の考えでは、忙しい病院では白い巨塔式の教授回診をすることは非常に難しいのではないかと思います。当時の千葉大中山外科は多数の手術を施行するハイボリュームセンターであっただけでなく、中山先生自身も国の内外への招待講演や多くの役職等で多忙を極めていたでしょうから、効率よく仕事をすることは必要不可欠だったと思われます。もちろん中山先生が効率のためだけに朝早く回診を終わらせたのかどうかはわかりません。他に別の理由があったのかもしれません。ただ私個人としては、「朝早く回診を終わらせた」ことは今の私たちの回診のやり方に似ていたので大変共感した次第です。

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