
ロンドン入り初日は雨だ。
お気に入りのジャケットを濡らしたくないとかセコイことを考えながらホテルに到着する。
はぁ、バッグ重かった、冬の旅行は荷物が多くなっていけない。
とりあえずメシ食いに行くぜ。
しかしロンドンで何食うんだ?
やはりFish&Chipsか。
道すがら看板にでっかとそう書いてある店がある、ここでいいや。
白身の魚を思いっきり油で揚げたのと大盛りのフレンチフライで3ポンド ( 650円 )。
好みでトマトソースをかけるようだ。
食べてはみるが油多すぎ、白身の魚の味は淡白なので油の味しかしないよ。
ペーパーでも皿に引いてくれたら少しは切れるのだろうがもうべチャべチャ。
ああ、無情。
丁寧に衣を剥いだ後、魚に塩をかけて食う。
店のオヤジは ” あの日本人は何してるのだろうか ” とか言う顔してるが
” お前こそなんて食い物作ってんだ ” と言う顔をしてやる。
イギリスは食文化がないと言うがExactly
初日から洗礼を受ける、滞在期間の食事はどうなることやら。
日の入りが早いので夜が長く、する事といったら酒飲むのみと目にとまるPUBに入る。
ビールを食らうぜ。
イギリスに来たらばGUINNESSですねと飲んではみるがあまり美味しくないのね、
まあ、ラーメンとかと同じで人の好みだろうが。
この店はスポーツバーらしく大型スクリーンにプレミアリーグを映していて、客は中年
あたりが多い。
皆静かに観戦するんだね、白髪の老人が話しかけてきて、と言うより一方的にサッカー
について喋るという感じ、黒ビールの味も手伝って少し気分が下がるよ。
ロンドンは少し歩けばすぐにPUBがある。
店の形態は変わらないが客層が異なるんだ、いくつか渡り歩くとお気に入りが見つかる。
バカでかい用心棒 ( この言い方も古いが .. ) が入り口でにらみを効かせていて
「 入っていいかい? 」
「 もちろん 」
とドアを開けてくれる、話せば優しい。
翌日の夜もその店に向かう、結構路地裏にあるのでバスストップからは歩きだ。
レンガを照らす街灯がシブイなとか考えてると50m程先にあるガレージの前で少年達
がたむろしている。
なにやら危険なにおいがするなあ。
近づくにつれますますデンジャラス。
あそこを通るのか、どうする引き返すか?
いやその方が不自然だ、行くしかない。
第2次世界大戦時、ジブラルタル海峡を通過するドイツの潜水艦Uボートの気分だ。
気配を消して通過しようとすると彼らの動きが一瞬止まる。
何なんだ、いったい。
映画:グーニーズで出てるような顔の少年が声をかけてくる。
「 日本人か? 」
「 そうだよ 」
「 ビジネスか? 」
「 いや、旅行だ 」
「 ホテルはドコだ? 」
「 アイビスだ 」
「 そうか、タバコ吸うかい? 」 と差し出してくる
何だコレは? ホントにタバコだろうか? タバコだとしても吸わないし ..。
「 いや、結構 」 ( やんわりと )
「 ?! 何故だ 」 ( 大袈裟に )
何故って ..コレは断ったことに驚いているのか、あるいは単に吸わないことに
驚いているのか、どっちだ?
「 タバコは吸わないんだ 」
「 吸わないって? 何故だ? 」
「 健康に気を遣ってるんだ 」
「 健康だって? 」 と周囲いっせいに大笑い。
何がおかしいのかね、と思うが一緒に笑う。
「 そうか、そうか、健康か、それは良い事だ 」 と肩を叩かれる。
「 じゃあ、行くよ 」
「 OK、旅を楽しんでくれ 」
はあ、なんとか通過した、振り向いて手を上げたりするが
全く何てヤツラだ、何もとられなかったのが不思議なくらい。
あのたまり場を ” Garage of the Gang ” と勝手に名づけよう。
滞在最後の夜はミュージカルを観ようとか思う。
ウェストエンドあたりを通るとそんな気分にさせられるよ。
チケットぴあならば当日売りが安くなるとやらで
「 ” レ・ミゼラブル ” を一枚 」
「 はあ? もう無いわ 」 と、若い女性店員、何この態度?
「 Oh Well 」 こっちもそっけなく
あっちの黒人男性の方が話がわかりそう、同様に訊くと
「 残念ながら売り切れだよ、他はまだ残ってるよ ” オペラ座の怪人 ” はどうだい? 」
「 悪くないわね 」 と美川憲一のマネ ..って、それはさそり座!
32ポンド!?
「 Oh Well 」 再び
ハー・マジェスティーズ・シアター
ゴージャスな外観、ライトアップされた建物を観るだけでも楽しいな。
ドレスコードとか気にしたがみなカジュアルで安心、席もミドルの2列目、上等ですよ。
カメラを向けているとスタッフが 「 NO! 」 と、すごい剣幕。
こちらは 「 Oh,No 」 でもsneak shot
オープニング大きなシャンデリアを揺らしステージに叩きつける演出にド肝を抜かれる。
ダンスはクラシックバレエの動きが主体で妖精のような白い衣装の数人女性が舞う
息のあったターンには目を奪われる。
音楽は各演出にマッチしていてボルテージの上がる部分の効果は鳥肌ものだった。
日本人がやったら大袈裟すぎる演技でも濃い顔立ちの英国人役者にかかれば
絵になり華になる。
どれもこれも芸術的で素晴らしかった。
フィナーレも盛大で席を立つタイミングを失うが人の流れに身を任せる。
ほどほどに熱を得た体と高揚した気分のままに館外に出ると
ロンドンの夜の外気が一瞬にそれを冷却した。