スワンナプーム空港の扉を出たとたん感じるこのフィーリング。
ああ、南国のにおいだ。
その瞬間にモードが切り替わる。
バンコクは1年ぶり。
去年は深夜の到着だったが今回はまだ薄明るい時間なので余裕だ。
バスで目的地へ向かう。
ルートが変わったのかモノレールターミナルで乗り換えだ。
車掌に乗り換え先を教えてもらったがよくわからんぞ。
人でごった返す中を歩かされるが何とか目的の番号を見つけた。
19時、カオサンロードに到着。
欧米人が多く多国籍なこの雰囲気、変わっとらんね。
とりあえずホテル探し、350B位を狙いとする。
GREEN HOTEL 名前がいいね、清潔そう。
部屋を見せてもらったがこの狭さはなんだ、圧迫感で寝られそうにない。
少し上乗せして広い部屋にしてもらった。
朝食付きで429B、まあいいや。
バッグを置いたらメシでも食いに行こう。
カオサンは夜になるほどゴミためと化すがそれが魅力的だ。
皆それがよくて集まってくるのだろうな、歩きながら思う。
しかし月日が経つのは早い、前に来たのがほんの数日前の感じがする。
この1年いろいろ感情が動き、アクセントな出来事もあったりもしたが
なんら変わってないような錯覚を起こす。
自身の生き方にマイナスな思考さえ湧いてでてくる。
おいおい海外旅行に来てまで何を反省してるんだ。
「 気持ちを開放しろ 」
タイ旅行の楽しみの1つはタイマッサージ。
整体マッサージで全身の筋や関節をゴリゴリグキグキやってくれる。
マッサージ師が1時間みっちりやってくれて180Bでっせ。
日本でよく利用するホテルで同じサービスをやっているが、たしかそこは8000円
だったと思う。
信じられん安さだ。
朝飯前に必ず行くようにしている。
師は、にいさん、ねえさん、おじさん、おばさんといるがおばさんが最も上手に思う。
タイ女性特有の鼻にかかったカン高い声も優しく耳に入る。
しかし、受けて思うが俺は体が固い。
筋肉は焼きすぎの肉のようで関節は樫枝のようだ。
師が 「 リラックス 」 と何度も言うがそんなに力入れてないんだけどな。
ボクシングでは体が固いと良い事はない。
打たれたら効くし。
パンチは体をしなわせる事によって強くシャープに打てる。
俺の左フックでナックルがうまく返らないのは体が固いためか。
バンコクにきたらやはり銃を撃ちたい。
場所は把握できているので路線バスで行けるよ。
バンコクのバスはわかりにくくとてつもなく揺れるが安い、5kmくらいのって7Bだ。
面白いのは車掌がどんなに揺られてもバランスを崩さない。
すごい平衡感覚、ファイティングポーズをとらせてみたい。
いつもの射撃場の店主、この男は一切金の交渉がきかない。
値切りを受け付けないヤツってのはファーストコンタクトの3秒位でわかる。
オート式2.5ダースで1600B
パンパン、当たらんなあ。
当たる事もあるがイメージがあまり残らないので続かない。
銃自体の照準はホントに合っているのか?
しかし銃の威力ってのは相当なもんだ、映画とかで体撃たれて体内に弾が残るとか
あるが骨とかに当たれば体内で止まるかも知れないが肉だけの部分ならばいとも
簡単に貫通してしまうのではないだろうか。
威力を調べたくて銃口に小指を少しだけ当てて撃とうとすると
「 何やってんだ? 」 とガイドのおっさん。
「 Just Jokking 」
南国ムード漂うオープンカフェのチェアの背もたれに思い切り身を投げ出し
午前というのにビールを食らう。
道行く観光客のいでたちを見たり。
屋台で調理するオッサンの手際のよさに感心したり。
隣のブロンド女性の可愛さを横目で見惚れたり。
最も面白かったのがノラ犬におばさんがポケットからエサを取り出そうとする。
犬はその仕草を分かっているらしくシッポをフリフリのハァハァ状態。
おばさんは思わせぶりにゆっくりと手を抜くと
なんとその手にはハンカチが。
なんて意地悪なおばさんなんだ。
犬は 「 チクショー、バカにしやがって 」 とその場を一気に走り出す。
その光景がとても滑稽で可愛らしくて。
バンコクにはノラ犬が多い。
見た目は狂犬病でも患っているのではないかと思えるような風貌だが
犬好きの俺は思わず手を差し伸べたくなる。
しかし旅行者ごときが余計な事をするものではない。
まあ、ノラ犬たちもこれで安息に生きているのだろう。
この旅は特に目的もなかったのでただのんびり過ごす事を心がける。
のんびりと言うよりはダラダラしたか。
ふとカフェに立ち寄ったりTシャツ売りやアクセサリー売りを冷やかしたり
昼も夜もそんな感じ。
星が光り始める夕刻時に3車線の排ガスバリバリ国道沿いのカフェに腰をおろし
ぼんやりと行きかう車と人の動きに目をやりながらビールを食らったりする。
ふと隣を見ると英国人らしいオールドミセスが似たような雰囲気もっていた。
ミセスはフルボトルの白ワインを1人で飲んでいてガラスの灰皿はマルボロの
タバコでいっぱい。
哀愁が漂っていてカッコいいなと思ったり。
人を待っているような感じではないな、1人で飲むのが好きなのかな。
あるいは退屈しているのか。
俺も同じような状況だが退屈はしていない、ミセスもそうだろう。
1時間くらい経ったかなミセスのワインが最後の一杯になる頃
「 excuse me 」 と、声がかかる。
「 えっ、私? 」
「 日本人? 」
「 ええ 」
「 あの道は日本人の飲み屋街でしょう 」
道を挟んで見えるその道は ” タニヤ通り ” といって日本のパブやスナックが
昔かたぎの看板で集まっている通りだ。
ミセスはそれに興味を持ってルーツなど聞きたかったのだろう。
残念ながらそんなに博識ではないし説明するほどの英語力を持ち合わせていない。
「 Sorry, I'm not sure 」
ミセスは 「 ああ、そう 」 と首をかしげワインを飲み干すとチェックを済ませ立ち去った。
さぞかしガッカリしただろう、退屈もしていたのか。
あるいは俺の知る限りの知識を可能な限りの単語をつなぎ合わせ話すべきだった
のかだろうか。
自分が人にガッカリさせられるよりも自分が人をガッカリさせる事のほうがヘコむ。
結局また反省だ。
しかしそんなシュチュエーションなどいくらでもあるだろう。
そんなんでいちいちヘコんでいたら何も楽しめない。
再度言い聞かす。
「 気持ちを開放しろ 」