グレー色、セピア色の大小あらゆる形で無造作に転がる岩石だけだ。
何故かそれらをアーティスティックに感じながら物思いにふける。
ポルトガルの街路が石畳なのは土地に岩石が多いからなのだろうか ..。
変わらぬ光景をぼんやりと見つめながらどれだけ経ったか。
白く大きな橋にさしかかった所で唐突に視界に飛び込んできた光景に思わず身を
乗り出してしまう、窓に頬を当てるほどに。
その橋は ” ドン・ルイス1世橋 ” でドウロ河の高い位置に渡している。
そこから見る光景はスケールは大きくないが私的にはまさに絶景。
青く澄んだ水と緑の川淵に並ぶ色とりどりの建物が構図を造りシャッターチャンスを 誘う。
バスを降りたら、さあ、宿探し。
まずはガイドブックに載ってるツーリストインフォを探そう。
こっち方向か、やけに坂が多いなあ。
おわっ、凄い上り坂。
鼻歌1曲で超えるぜと吹いてはみたが足ガクガク、バッグが肩に食い込むし、
早いトコたどりつかなければ。
地図通りに歩いても全然見つからず。
ついに「 I'm lost 」
この旅で初めて道に迷う。
少し休憩をとろかとパン屋に入り、グレープフルーツジュースとクロワッサンを注文。
ああオアシス。
店の主人に尋ねたらたどたどしい英語だったが丁寧に教えてくれた、何とか到着。
キレイなポルトガル嬢が2人 「 いらっしゃ~い 」
とは言わんが ..。
経済的な宿はと尋ねると、坂を少し上った所にいいホテルがあるわと教えてくれた。
行ってみるとバス付ツインで18ユーロ。
「 very good 」
街歩きは坂の多い街中は避けてドウロ河沿いに始まる。
河の辺から望むドン・ルイス1世橋もまたとても壮観な感じがして思わず。
「 う~ん、絵になりますねぇ 」
とシャッターを押す。
景観はドコを見てもドコから見ても何から何までキレイ。
人も少なく時間がゆったりと流れる雰囲気のあるこの街はとても幸せな気分にさせる。
ケーブルカーに乗ればキレイな運転士が微笑みかけてくれる。
河で魚釣りをする無垢な目をした少年達。
その隣では人生を悟ったかのような表情でチェアーに揺られる初老が手招きをする。
河の終わりは視界いっぱいに大西洋が広り
気持ちも開放感いっぱい。
ポルトワインを飲んでみたい。
ワイン工房が近くにあるとやらなので行ってみよう。
バス停に行ってみると見慣れた雰囲気の女性が立っている。
日本人だ、何故かわかる、何でかな、俺もそうか。
「 こんにちは 」
「 えっ、こ、こんにちは 」
「 お一人? 」
「 はい 」
「 観光なの? 」
と、お決まり会話。
彼女もワイン工房へ行くとやら、場所がわからなくてどうしようと思っていたのだと言う。
こちらはガイドブックに載ってるからわかるよと、一緒に行く事になる。
工房は時間制で客を案内するようになっているらしく入場までは時間があるので
「 あそこのカフェでお茶でもいかが 」
女性は1986年のマリリンをショートカットにした感じでとてもかわいらしい感じ。
兵庫出身のアイルランドへの留学生でポルトガル語を専攻していて長期休みを
利用して語学がてらポルトガルを周遊しているとやら。
日本語で話すのは久しぶりでとても嬉しいと言う。
そんなん聞いた俺はもうデレデ。レ
鼻からコーシーすすってしまうよ。
時間になりワイン工房へ入る。
「 う~ん、干しぶどうのにおいがするね 」 と私。
あっ、干しぶどうって言っちゃった、レーズンって言えよ。
大きな樽が並び、ポルトガル語と英語でガイドが説明してくれる。
かなり早口なので理解できなかったな。
女性はポルトガル語堪能なので余裕な感じ。
ひと通り回った後は、ワインの試飲。
通のマネして香りを嗜み。
「 うむ、南部産の雨季だね 」
とおバカなギャグを一発 .. 言うべきではなかった。
ワインはおいしくてマリリンはかわいいし、大満足。
工房を出てからはキレイな河と街並みをバックに写真を撮った。
「 この後、どこへ行くの? 」
女性は行きたい場所があるらしい。
自分もどうしても行きたい場所があった。
この街での滞在は短いしそこへ行かないわけには ..。
とても残念だったがメール交換し、別れる。
その後、モヤモヤ。
何故、夜の食事の誘いをしなかったのだろうか。
何故だ?
一人旅の人間同士は互いの旅の行程に立ち入らないようにする考えが定着している。
実際、私もあまり立ち入られたくない、故に人の目的に立ち入らないようにしている。
この時もその考えが行動に表れたってことか。
しかし、後悔先に立たず ..。
マリリン
クリリン
ロンリーチャップリン
そんな夜はターキーステーキで一人パーチーだ。
ホワイトワインにビール、コニャックも飲んだ。
もうベロベロ。
気付いたときはホテルのベッドだった。
サックス吹きのパフォーマーから楽器取り上げて訳のわからん演奏をした記憶が
脳裏に残っている。
次の目的地への出発まで時間があったので丘の上の教会を目指す。
階段で最上階まで上がったときの光景は胸のモヤモヤを体外へ放出し
乾いた風がポルトの空にそれを散りばめた。