トランジットの台北桃園空港にて一旦入国する。
7時間の内、5時間程フリーとなるのでとりあえず街中に行こうと、その前にトイレの個室で着替える。
ジーンズを脱ぎ、短パンに換えていると足元に掌サイズの黒い物体が ..。
「 おわっ、ゴキブリか、台湾のは何て巨大なんだ 」 とか思わないが、コレってお財布じゃないスか。
まあ、手にとって中身を確認しますわな。2200元入ってる。
う~んラッキー、ってそれは違う!
誰も見ていないからと言って自身のフトコロにせしめようとでも考えるか?
私はそんな事はしない。する必要もない。
不道徳な事は他人が見てなく、バレなくても自分自身が見ているのだ。
もしそれをせしめたとしても何のお咎めも無いだろう。
しかしその行為が今後の自身の人生を苦しめる事となる。
実際、幼い頃の悪戯が今なお私を苦しめている。
現金以外にクレジットカードが2枚、また運転免許証が入っている。
良かった、落とした人の元に戻る事となるだろう。
ん、日本語だ、日本人の財布ではないの。
これはどうしたものか。
そう考える理由は、ここは外国であり、空港内の係りに渡しても主の元に戻る可能性は少ない。
主は空港で失くした事を認識していれば良いが、だとしても空港内に問い合わせるだろうか。
あるいはもう既に空港を後にしているかもしれない。
確実に主の元に戻せる方法は私が日本に持ち帰り、免許証の住所に郵送する事だ。
しかしそこまでする必要があるだろうか。
普段、人の事など気にも留めないこの私がそんなおせっかいなど。
すべき事はただひとつ、やはりこの財布を空港内の係人に落し物として届ける事だ。
それ以外に選択肢は無い。
インフォメーションカウンターへ行き、 「 この財布、トイレで拾ったよ 」
「 ええっと、ポリスに言って、あ、居た居た、ちょっとお願い 」
てな感じで女性警官が来たので財布を渡し、日本人の免許が入ってるよと告げると場内アナウンスをすると言う。
それは名案だ。
名前の読み方が判らないとかで教えると ” グ ” を ” ク ” ” ギュ ” ってダメだこりゃ。
女性がたどたどしい日本語で
「 お客様で○○さん、インフォカウンターまでお越しください 」
コレで判るかな。
主の来るのを待ってもしょうがないので 「 じゃあ、行くよ 」 と後にする。
市内へ行くバスの中で考える。
あの財布が確実に主の元に届くだろうか。やはりメモった住所に手紙を書こう。その経緯を。
主としても、もしも戻らなかったならばさぞ不安だろう。クレジットカードも入っていたし。
私としてもおせっかいではあるがすべき事はしておこう。
後のモヤモヤを残さない為にも。