地下鉄の階段を抜け出た時の視界に広がる光景はいつでもドコでも感動する。
木の椅子がステキなカフェでエスプレッソを飲みながら。
「 さて今日は何をしよう 」
パリに来たのだから観劇でもしようかな。
やはりムーランルージュか、パリといったらそのイメージしかない。
男性1人では入場は難しいようだ。
ではと旅行を手配してもらった代理店まで出向きチケットを取ってもらう。
「 他の日本人と一緒になるがいいか? 」
「 いいよ」
送迎、食事、で120ユーロ、高いのか安いのかよくわからんがまあいいか。
会場はモンマルトルの丘の上にあり風車が回るオブジェが目印だ。
ドレスコードがあるらしい。
スーツは黒なのでOK、タイとシャツはかなり派手だが単色だから問題ないだろう。
ステージは横に広く、客席はディナーショーのようなレイアウトだ。
自分ら日本人10人程のテーブルはなんと最前列。
やはり日本人は大枚はたきのお得意さんなのだろう。
前半は生バンド演奏で何故かアメリカ音楽、そのほうが聴きやすいが。
続いてサーカスショー、TVとかでよく見る中国雑技団のイスとか板を積み上げてその頂上で倒立したりするやつ。
しかしフランスっぽくないなあ。
食事はブレッド、トマトムース、胡瓜とポテトのスープ、薄めのローストビーフ、デザートにアイスクリーム、
ワインは1杯だけ。
酒が足りないよ、ハーフワインを別途注文するがうまく伝わらず 「 フルでいいよ 」 となってしまう。
45ユーロ、ゲゲゲ、しかし後には引けず、がんばって飲むぜ。
メインのフレンチカンカンのショーはモデルのような容姿の女性十数人がトップレスな衣装で脚を振り上げる。
エロティックな感じは全くしない、むしろそのシンクロは芸術的と言える。
彼女らはヨーロッパの経済的に貧しい国からチャンスを求めてこのパリにやってきてプロダンサーになったのだろう。
そしてこのショーを経て更なる社交界への進出、あるいは実業家男性に口説かれ玉の輿に乗ることを
夢見ているのだろうか。
勝手に物語を作ってしまう私だが実際当たってるのではないの?
同席した日本人の中に強烈な存在感の女性がいた。
いかにもパリずれした感じで真っ赤な衣装に身を包み日本語、英語、仏語と3ヶ国語を交えながら喋るんだ。
それもアクセント付けすぎで、もう長嶋茂雄の比ではない。
他の日本人はドン引きしていたが私には相当面白かった。
私と同じに連れが居なかったが、その後、誘う気にはなれなかった。
とにかく普通じゃないんだ、何か異様な世界を持つ雰囲気を発していた。
送りのバスから先に降りる女性はドアを抜ける瞬間、ふと私に視線を投げかけた。
その目は中世のおとぎ話に出てくる魔女のようだった。
そしてパリの夜のカーテンに包まれるように消えていった。