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ゴースト・エコノミクス…中国企業をもてはやす日経…中国移転を働きかけた日本経済新聞の報道はつねに疑うべきである。

2022年01月12日 21時47分23秒 | 全般

以下は、中国解体、2021,日本人のための脱チャイナ入門、と題して2020年10月31日に出版された宮崎正弘の著作からである。
彼は、知的生産量において、梅棹忠夫を凌駕したと言っても過言ではない。
日本国民のみならず世界中の人達が必読。
p154~p158
ゴースト・エコノミクス 
中国財政省によると、2019年の新規地方債起債は4兆3244億元(約66兆円)だった。
また、2020年上半期については、民間金融会社によると起債額はすでに2兆3700億元(37兆円弱)。
この資金は、無理矢理強行している土木建設工事にまわされ、それは必然的に鉄骨、セメント、建材の生産増につながり、コンクリートミキサー、ショベルカー、クレーン、ブルドーザーなどがフル稼働し、現場労働者、運転手、資材管理などに雇用を生む。
したがって、統計上のGDPの増大につながり、「第2四半期は3.2%成長、中国は『V字回復』だった」という政治宣伝に直結した。
しかし、小売りが激減し、外国企業の投資が激減しているのにV字回復という、大本営発表を信じる中国人はいない。 
このスキームは、すでに多くのエコノミストも追認してきた事実だ。
中国各地のゴーストタウン、誰もいないショツピングーアーケード、進出企業のない工業団地、車より熊が出没することの多い高速道路などに化けてきた。 
立ち退かされた農民の悲劇も繰り返されてきた。
2020年5月の全人代で李克強首相が認めた数字は「月収が1000元(1万5000円)以下の国民が6億人」。
まさに「国進民退」という衝撃的な数字が、なによりも雄弁に中国経済の裏の実態を物語っているのではないか。 
中国の経済政策には原則がない。コスト無視。
ひたすらGDP拡大のために、ノルマを課して、いずれ積み上がる不良債権のことなど、誰も責任を取らない。 
コロナ禍によって、日本では、優秀企業とまでいわれたJR東海が赤字転落となった。
もちろん、前述したように中国の新幹線も第2四半期は巨額の赤字だった。 
国内プロジェクトを拡大する理由は、GDP成長率をプラスにもっていく工夫でもあり、同時に現在の従業員や関連企業の雇用維持、下請け産業の倒産防止である。 
もう一つは、海外の新幹線プロジェクトが軒並み破綻したことだ。
その象徴はインドネシアだが、トルコのイスタンブールーアンカラ間高速鉄道など、少数の例外を除いて失敗に終わり、海外需要が望めなくなった。
こうした融資はAIIBなどを通じて行われるが、プロジェクトの失敗によって回収不能となり不良債権化する。
鳴り物入りのアディスアベバージブチ間の鉄道も乗客が少なく採算に見合っていないから、いずれ不良債権となるだろう。 
たとえば、ファーウェイは西側から排斥されたため、中国国内で強引にスマホ販売を強化しているように、幽霊マンション、飛行場、新幹線なども、債務を度外視したGDP増大という考え方であろう。
中国企業をもてはやす日経 
ポンジスキーム(ネズミ講とか詐欺的手法)の典型となった悪例は、中国ラッキンコーヒーのナスダック上場だった。
しかし上場廃止により、時価総額110億ドル、90%が蒸発した。 
日本ではまったく無名の珈琲チェーン、ラッキンコーヒーは中国ではドトールコーヒーより有名で、一時はスターバックスコーヒーを超える勢いだった。
2019年初に世界で1189店舗だったチェーンは、同年末に4500店舗に拡大していた。
スターバックスコーヒーより20%安く、サービスは迅速だとされた。
もともと創業者は福建省慶門のクルマのレンタル業から、未知だったカフェ業界に飛び込んできた人物だ。 
ラッキンコーヒーはフランチャイズでまたたくまにブームをつくりだし、2019年5月にニューヨーク証券取引所の二部ナスダックに上場を果たした。 
しかし、米国証券取引委員会は内部告発などにより内偵を続けていた。
一日の売り上げが過剰に水増しされており、あたかも儲かってしかたがないという演出がされていたこと、二つの子会社との曖昧な取引。
そして、関連する23の金融機関との照合など、捜査は大詰めを迎え、2020年4月1日に上場廃止が決まった。
最大株主は厦門の創業家一家だが、シンガポールの政府系ファンドGIC、カタールの公的ファンドなども大株主となっていた。 
このラッキンコーヒーのスキャンダルを契機に、米国に上場している怪しげな中国企業の実態が浮き彫りとなり、新規上場はほとんど不可能になった。
そればかりか、中国企業の上場廃止、米国株式市場からの撤退が続き、同時に米国の投資家の中国企業を見る目が変わった。 まさにポンジスキームの典型だったのだ。 
米国はウォール街に上場している中国企業の排斥に乗り出し、アリババ、京東集団(JDドットコム、網易(ネットイース)などが標的だといわれた。
新興の中国企業は、米国でも規制のゆるいナスダックに狙いを定め、いきなり上場して膨大な資金を集めてきた。
ところが、アメリカ政府は経理報告など、ずさんかつでたらめな内容に以前から業を煮やしていた。
そのうえラッキンコーヒーは香港に重複上場し、中国投機筋の資金の受け皿的役目も果たしてきた。 
この種の企業を「ユニコーン企業」ともてはやし、日本企業と比較して賞賛していたメディアには猛省をうながしたい。
ラッキンコーヒーについて、「スタバを脅かす『ラッキンコーヒー』に日本人が学ぶべき教訓」(「日経XTREND」2019年1月28日付)はその典型である。
中国移転を働きかけた日本経済新聞の報道はつねに疑うべきである。 
ナスダックでは、古株のウェイボー(微愽)を経営する新浪もMBO(経営陣買い取り)を駆使して非公開を検討するとした。
これらの動きは米政府がナスダックの規制強化を鮮明にしているためで、中国企業は従来のような手軽さでウォール街での資金調達はできなくなった。

 


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