文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

天声人語…「古びた大艦巨砲主義にしがみついた日本」を嘲笑っていた…こんな嘘を子供に筆写させる愚を何とかしたい。

2022年07月07日 09時52分55秒 | 全般

以下は本日発売された週刊新潮の掉尾を飾る高山正之の連載コラムからである。
本論文も彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであることを証明している。
日本国民のみならず世界中の人達が必読。
敵地攻撃
日露戦争のヤマ場は東郷平八郎率いる聯合艦隊とその三倍大きいバルチック艦隊がぶつかった日本海海戦だった。
橋下徹なら「負けは見えている。東郷は逃げるべきだ」と言うだろう。
ニューヨーク・タイムズもそう思った。
なぜなら双方の戦艦は欧州製の規格品かそのコピーで、主砲の口径も装甲の厚さもほぼ同じだった。
となれば勝敗は戦艦の数で決まる。
三倍の艦数を持つバルチック艦隊が三倍有利に思えた。
それに貧弱な方は海戦慣れしていない非白人国家だったし。
しかし編集局に届いた第一報はバルチック艦隊主要艦12隻が沈没」し、一方の東郷艦隊はまったくの無傷だという。
あり得ない話だ。
それで第一報に添えて「露艦隊で水兵の反乱が起きキングピンを拔いて自沈させたという情報もある」と書かせた。
そういう逃げを打ちたくなるほど第一報は信じがたいものだった。
やがて詳報が届き、バルチック艦隊はホントに消滅したことが判った。
その事実以上に欧米諸国は東郷の戦法に衝撃を受けた。
海戦はギリシヤの昔から艦首を相手艦の横腹に突っ込ませて沈めるのが形だった。
そのために戦艦の舳先にはアントニオ猪木の顎のようにせり出し、吃水線下には相手の船腹を抉る突起(衝角)を備えていた。
しかし東郷は露艦隊と一度も接触しないで遥か数キロ先から正確な砲撃を加え続けた。
それも西欧の三倍の破壊力のあるピクリン酸砲弾を使い、分厚い鉄の鎧を着たオスラビアがまず炎に包まれて沈んでいった。
欧米には鉄に触れたら即爆発するピクリン酸を砲弾に詰め込む技術はなかった。
英観戦武官ペケナムは戦艦朝日からそれを目撃した。
彼の詳細な報告を受けて英国は東郷の戦法に敵う三連装の主砲を二段組みにした戦艦「ドレッドノート」を生みだした。
衝角で戦う時代は終わった。
新しい大艦巨砲時代の幕開けを告げる弩級戦艦の誕生だった。
英国は海軍国の名誉をかけ、より強い戦艦を目指し弩級を凌ぐ超弩級を、さらにその上の超超弩級戦艦プリンス・オブ・ウェールズまで進水させた。
同艦はF・ルーズベルトの要請で大西洋から急ぎシンガポールに入った。
真珠湾攻撃の6日前だった。
解読した暗号では日本軍は真珠湾と同時にマレーも襲う。
その出鼻を叩くのが任務だった。
日本が手本を見せた大艦巨砲の威力をその日本相手に披露してやる。
高揚して待つフィリプス英東洋艦隊司令官の前に現れたのは戦艦ではなく96式陸攻機の群だった。
無敵のはずの同艦と僚艦の装甲巡洋艦レパルスは雷撃と水平爆撃を食らって間もなく沈んだ。
もはや大艦巨砲の時代ではないことを日本が実戦で教えた。
日本は海戦の形をまた変えたのだ。
物量の米国は辛うじて日本が更新した海戦方式に追いつき、ミッドウェーでは逆に日本の空母群を潰す幸運にも恵まれた。
航空戦力の足場を失った日本はアジア解放を果たすと膝を屈した。
海戦の歴史を二度書き換えた日本の栄光は終わったと思われたが、終戦から間もなく、米軍は三陸沖で巨大な潜水艦「伊401」を確認、拿捕した。
それは今、米が目下建造申のバージニア級攻撃型原潜と同じ大きさだった。
そして司令塔下の格納庫には3機の爆撃機「晴嵐」が格納されていた 
伊号はその性能から米東海岸にも行ける。
米領海内から晴嵐を発進させ、ペンタゴンですら破壊できた。
米国は三たび驚き、ここから原潜を深海に潜ませてミサイルを発射する戦略原潜構想が生まれた。
やっと日本人の知恵に追いついたところだ 
先日の天声人語は沖縄に片道切符で出た戦艦大和をネタに「古びた大艦巨砲主義にしがみついた日本」を嘲笑っていた。
こんな嘘を子供に筆写させる愚を何とかしたい。





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