文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

だが日本と日本人への警告だけは明らかになった。あらゆる意味で漢民族の支配を受け入れてはならない

2021年10月12日 17時36分27秒 | 全般

以下は2021年5月31日に発行された下記の本からである。
日本国民のみならず世界中の人達が必読である。
はじめに 櫻井よしこ 
本書を出版するために私たち、楊海英氏、楊逸氏と私の三人は長い時間をともに過ごし語り合った。 
私たちは会う度にお互いを少しずつ、前よりも知り、共感を深めていった。
三人は各々、まったく異なる環境で育った。 
楊海英さんは東京オリンピックの行われた1964年に南モンゴルのオルドス高原で生まれた。父親はモンゴル軍の騎馬兵だった。
父とその友人たちは子ども時代の楊さんにいつも「日本人のように正直に、公平に、規律正しく生きなければならない」と諭したという。
高校生のとき、日本の影響下にあったモンゴル自治邦の元役人から日本語を学び始めた。そのときの家族の喜びはいまでも忘れられないそうだ。
北京第二外国語学院大学で日本語学科を卒業し、1989年春に来日、2000年に日本国籍を取得した。
現在静岡大学で人文社会科学部の教授を務める。
モンゴル人が体験した迫害を一万五千ページに上る「モンゴル人ジェノサイドに関する基礎資料」にまとめ上げたが、楊海英さんの文化人類学的フィールドワークは他の追随を許さない。
モンゴル人の家族一人一人を訪ね歩き、その家族が受けた迫害を祖父母、両親、自分、子供、孫の幾世代にもわたって全て実名で記録した。
モンゴル人の体験は、現在ウイグル人が体験していることと変わらない。
中国共産党による民族浄化、ジェノサイドの苦しみである。
一連の研究に対して、私の主宰するシンクタンク「国家基本問題研究所」は2016年、楊海英氏に「日本研究賞」を贈った。 
楊逸さんはハルビンで生まれた。
1966年に始まり76年まで続いた文化大革命の暗黒の時代に育った世代だ。
一家は70年1月に農村に下放され3年半を過ごした。
幼い時代の体験から、楊逸さんは後に「汚い罵倒語を声高々と敵に浴びせるように批判しないと、子どもといえども思想問題になってしまう」と書いた。
だが、そんな灰色の日々の中、中学生の頃、日本に住む親戚が送ってきたカラーの家族写真を見た。
当時中国には一般にカラー写真はなかった。
楊逸さんのいとこたちが着ていた洋服は色とりどりでとてもお洒落で、一家が幸せそうだったので大変衝撃をうけた。
また日本の町々の佇まいは美しく、緑深く、瑞々しい。その中で、現代的な建築物が自己主張していたりする。古い街並みの中に、現代日本が息づいている。
一連の写真から日本に興味を抱いた楊逸さんは1987年に来日した。さまざまなアルバイトをしながら日本語学校に通った。
89年の天安門事件勃発のとき、25歳の楊逸さんは居でも立ってもいられず、天安門に駆けつけた。そのとき学生たちの表情は希望に満ちていた。
楊逸さんは学生たちに応援の言葉をかけながら、自分の中に思いがけずもこみ上げてくる感情の波の激しさに驚いた。
文革時代の暗黒の体験の記憶、澱のように溜まっていた感情が溢れ出たのである。
そして数日後、学生たちの希望は荒々しく粉砕され、悲劇へと変わった。
この天安門事件を、楊逸さんは19年後、『時が滲む朝』(文巻文庫)に著した。学生たちの苫悩と挫折の日々を描いた同作品は芥川賞を受賞した。
いまは小説を書き続けながら、日本大学芸術学部で創作を教えている。 
私は日本が敗戦した1945年に、ベトナムハノイの野戦病院で生まれた。
誕生前後の状況は、日本が凄まじい敗戦を体験し、史上初めて占領されるという大悲劇に満ちていた。
その後の私は、しかし、現行憲法に象徴される他力本願の平和な日本で育った。
そんな私にとってお二人の体験やお二人が骨身にまで叩き込まれた中国共産党や漢民族の考え方などについて聞くことは、胸に迫るものだった。
知っているつもりで知らないことが多かった。対話の中で楊海英さんが言ったことが心に残る。
「たとえ中国共産党が倒れて、支配されている民族が独立しようとも、それは決して明るい未来を約束するものではないのです。モンゴル国、ウイグル国、チベット国などという国を打ち立てたとしても、その国で我々の考える民主的な政治を行えばどうなるか。すぐに多数派となった漢民族の思い通りの政治が行われるのです。その中でむしろ我々異民族は今よりもっと酷い形で弾圧され虐殺されかねない」 
いまさらではあるが、私は雷に打たれたような気がした。そうなのだ。状況はそこまでいっているのだ。
こうした事実はすでに明らかなのに、私を含めて日本人の多くは想像が及ばない。そして無邪気に言うのだ。
中国共産党の独裁体制、が崩れて、チベットやモンゴル、ウイグルの人々が独立するのがよいと。 
楊海英さんは、独立しても悲劇が待っていると明言する。すでに遅いのだ。遅すぎるのだ。そのことを私たちは深く心に刻まなければならない。 
中国は、そして中国に支配されている異民族の人々はこれからどういう道を辿るのか、見えてこない部分が多い。
だが日本と日本人への警告だけは明らかになった。あらゆる意味で漢民族の支配を受け入れてはならない、と。
私たちは日本人として国土をきっちり守り、漢民族の度を越した日本への移住を警戒心をもって節度ある範囲に保ち続けなければならない。
そうすることで日本人は漢人の人々ともよい形で交流を続けることができる。 
共産党一党支配の中国で、一人一人が具体的にどのように生きているのか。
本書を通じてその実態を少しでもわかっていただければ幸いである。
お二人にはたくさんのことを教えていただいた。
深く感謝し、お二人のこれからの活躍を心から願うものである。
読者の皆様も二人の楊さんの体験を共有してくだされば、とても嬉しく思う。 
令和3年5月11日


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