文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

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過去20年間は中共の約束違反であふれていた。中共が唱えるウインウイン関係と相互尊重、平和共存の約束を信じる理由はない

2020年12月23日 23時13分30秒 | 全般
以下は、総力特集、習近平中国の暴走を許すな、と題した月刊誌Hanada今月号に掲載されている長谷川幸洋の論文からである。
中国との共存共栄は不可能 
衝撃の米議会報告
中国との共存共栄は困難 
米国のジョー・バイデン次期政権が本格的に動き始めた。
ドナルド・トランプ大統領は大統領選の無効を訴えて、法廷闘争を続ける構えを見せているが、一方で政権移行チームへの引き継ぎを容認した。 
新政権の骨格も固まりつつある。
外交・安全保障分野では、国務長官にバラク・オバマ政権で国務副長官などを務めたアントニー・ブリンケン氏、国家安全保障担当の大統領補佐官にはジェイク・サリバン氏が候補に決まった。 
両氏は、ともに国務省で要職を歴任したプロの外交官だ。
この顔ぶれを見ても、バイデン政権の外交政策は「米国ファースト」を掲げたトランプ政権とは対照的に、手堅い実務家が要を担う伝統的な同盟重視の国際主義外交に回帰するだろう。 
最大の焦点は中国である。 
私は先月号で、バイデン政権について「中国に宥和的であり、中国との共存共栄を目指す可能性すらある」と書いた。
理由は、バイデン政権が北朝鮮の非核化や気候変動問題で中国を頼りにする意向を示していたうえ、米国の核心的利益が脅かされない限り、武力を行使しない考えを示唆していたからだ。 
はたして、中国との共存共栄は可能なのか。 
結論を先に言えば、難しい。 
そんな見方を裏付けるような報告書が米国と欧州で相次いで発表された。
米議会の超党派諮問機関である「米中経済安全保障調査委員会」(USCC)が発表した年次報告、米国務省の政策企画スタッフが執筆した「中国の挑戦の要素」と題した報告、それから北大西洋条約機構(NATO)が発表した「2030年のNATO」報告である。
徹底的な中国批判 
日本では、大統領選の結果をめぐるトランプ氏とバイデン氏の争いに目を奪われて、どれもほとんど報じられなかったが、米欧の専門家たちは対中戦略のブラッシュアップに努めていたのだ。
バイデン政権はゼロからスタートするわけではない。
政権が発足すれば、これらの分析と提言も活用されていくだろう。  
そこで、三本の報告を紹介する。
まずは、USCC報告からだ。  
12月1日に発表された報告は本文が587ページ、要約も20ページに上ってい る。
中国の戦力投射能力をはじめ、中国は国際秩序をどう変えようとしているのか、などを分析したうえで提言をまとめている。
全体を貫くトーンは以下のように、全面的かつ徹底的な中国批判だった。 〈我々は委員会が設立されて以来、20年間にわたって中国の行動を追跡してきた。中国は世界貿易機関(WTO)に加盟して以来、選択的に経済と貿易、政治上の義務に従ってきたが、国際社会の懸念には応えてこなかった。いまや中国共産党は、彼らが築く新たな国際秩序の頂点に立つことを目指している。習近平総書記の下で、中共は国内的にも世界的にも、自分たちの利益を追求すると宣言しているのだ〉
〈かつて、中共は鉄鋼やアルミニウム、輸送といった伝統的な産業分野で支配強化を目指していた。だが、いまやバイオテクノロジーや半導体、人工知能、クリーンエネルギーといった最先端分野の支配が彼らの目標である。対象は変わったが、手口は同じだ。すなわち、外資企業に対する強制的な技術移転要求、国有企業に向けた膨大な補助金、サイバー技術による知的財産の窃盗などだ〉 
〈中国の国家安全法制は中国だけでなく、中国と犯罪人引渡し協定を結んでいる国に居住したり、旅行する人々をも脅かしている。外国のジャーナリストは、当局による拘束や追放に怯えながら暮らしている〉 
〈中国共産党は「中国人の利益を守る」と主張している。だが、真の目的は中共自身の存在維持と権力強化だ。香港の事態は、どんな小さな反対も許さない不寛容と国際的約束を尊重する意思の欠如を示した〉 
〈新型コロナウイルスへの誤った対応から香港への全体主義ルールの適用、南シナ海の軍事基地化に至るまで、中共は何度も自分自身の約束と国際社会の義務を破ってきた。それは中共の政策と行動に対する深刻な懸念を投げかけている。中共は軍事力やその他の強制手段を行使して、いずれ台湾を併合するだろう、という見通しが強まっている〉 
〈中共はアフリカ諸国との関係を「中国中心の世界秩序」構築の青写真にしている。アフリカにおける中共の活動は、遠く離れた地に中国の影響力とパワーを投射する雛形になっている。ジブチの軍事基地建設や中国軍の国連平和維持活動への参加は国連精神に反している。「一帯一路」構想に基づく中国企業による港湾や情報通信設備の整備は、「軍民融合」戦略のモデルだ〉 
人民解放軍は東アジアや東南アジア、インド洋での戦力投射能力を増強してきた。中共は台湾や南シナ海で大規模な軍事演習を実施して、周辺国を脅している。今年は半世紀ぶりにインドとの国境でインド軍と衝突し、死者を出した〉 
〈世界中の政策担当者は、中共の野望と戦術に気付いている。その証拠に、中国企業による第5世代移動通信システム(5G)に対して、多くの国が制限を課した。中共は息のかかった官僚を国連傘下の組織に配置してきた。世界保健機関(WHO)の事務局長が新型コロナに対する中国の対応を褒めちぎった事実によって、効果は如実に示された〉 
〈ウイグル人やチベットの少数民族に対する弾圧は人道に対する罪であり、虐殺だ。モンゴル人弾圧の懸念も浮上している。中共は国際機関を空洞化させ、国内の反対勢力を弾圧し、香港や周辺国で人々の自由を圧殺し、世界の経済資源を独占し、軍事力を投射している〉 
〈過去20年間は中共の約束違反であふれていた。中共が唱えるウインウイン関係と相互尊重、平和共存の約束を信じる理由はない。米国と同盟国の指導者たちが世界の自由と未来を構想するとき、安全保障と経済における中共の敵対的野望を正しく理解することが重要なのだ〉 
引用がやや長くなったが、米国がいかに中国を厳しく見ているかが分かるだろう。
これが議会超党派の対中認識なのだ。
バイデン政権が中国にソフトだったとしても、実際の政策は、こうした議会の強硬姿勢に制約されるのは間違いない。 
とりわけ、台湾について「中国が軍事力を行使して、台湾を併合する可能性」について記述した点は注目に値する。
先月号でも指摘したが、私はかねて2021年1月20日の大統領就任式の直前がもっとも危ない」とみてきた。
政権移行直前という「権力の空白期」を突いて、一挙に台湾を攻め落とす電撃作戦を展開する可能性があるからだ。
この稿続く。

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