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琉球王朝の文書行政:近くて遠い世界の歴史から見えるもの

2024-04-20 11:34:59 | 歴史系

 

 

琉球史入門おもれー!!

 

例えば文書行政が「平仮名+漢字」で、年号は中国のものを採用しているとこなんかは単純にガラパゴスとも言えるけど、そもそも言語・文字に対する観念が、朝廷・幕府を頂点とする日本政府とは異なっていたのではないか?

 

例えば動画内では、鎌倉時代の『吾妻鏡』が和製漢文であったことが触れられているが、思い出されるのは、平仮名が「たおやめぶり」で漢字が「ますらをぶり」と言われたように、男性が牛耳る政治の世界においては、漢字・漢文がオフィシャルなものであったことだ(鎌倉初期における『愚管抄』のように、まるで戦前日本のような「片仮名+漢字」といった例外もあるが、こちらは読ませる対象に合わせての配慮と思われる)。これについて、時代は遡るが、『土佐日記』冒頭の「女もすなるにきというものを・・・」という記述などを想起することもできるだろう。

 

さて、そういった観点からすると、前述のように、「平仮名+漢字」で表記するというのは、そもそも言語・文字に対する観念が朝廷や幕府とは異なっていたのではないか?という理解が出てくるが、一方その場合、年号は中国(明)のものを採用していることが不思議に思えて来る。というのも、年号を採用するのは「その権威の承認」という意味が当然あるわけで、だとしたらなおのこと、中華王朝がオフィシャルなもの(中華の言葉≠夷狄の言語)として設定している漢文をなぜ用いないのか?という疑問が生じてくるからだ(この辺は海禁政策における琉球の「特別扱い」とも見える待遇と何か関係しているのだろうか?)。

 

とするなら、漢字というものの権威付けが、少なくとも琉球国内に対してはプライオリティの高いものではなかったか、あるいはもしかすると、漢字識字率の問題が、文書行政における合理性という観点でその使用を制限する要因となったのかもしれない。

 

こういった点で琉球王朝のあり方は大変興味を引くわけだが、さらに琉球が、貿易相手の世界観に合わせて名より実を取るしたたかな商業国家だったことも、冊封体制や「小中華思想」などとの対比でおもしろい(日本の神国思想とその変遷については、以前書いた「神国思想とその変遷:辺土から小中華へ」などを参照)。つまり、中華王朝に対しては朝貢国、日本政府に対しては来朝者、東南アジア諸国には対等(?)な貿易相手として振る舞い、要は相手が気持ちよく交易してくれるような自他理解に自ら乗っていったと言えるが、こういった外への戦略性とともに、それが琉球国内にはどうアピールされていたのか?という点が私には強く関心を引いた部分である。

 

つまり、
1:どのように琉球が周辺諸勢力に自己をアピールしたのか(これはカメレオン的である)

2:琉球内での言語的状況はどのようなものであったか(離島でまた異なるのかもしれないが)

3:琉球政府は自己の正当性を国内でどのようにアピールしたのか(統治方法・文書行政)

のように、政府間の関係性、国内の支配構造(正当性の担保)といった点で、琉球王朝のあり方は大変興味深いと思った次第(この前述べた北方遊牧民の「突厥」で言えば、唐の影響下に入った時に、唐の皇帝を天可汗としてテングリ=世俗を超えた領域の支配者として位置づけ、一方で自らを可汗=世俗の支配者として部族支配の正当性を維持しようとしたのではないか、という話につながる)。

 

琉球が薩摩の影響下に入っていわゆる「両属体制」になるのはもう少し後になるが、その世界理解や支配体制がどうなっていたのかという分析は、(以前自分も訪れた)対馬壱岐五島といった地域を理解していく際にも有益であるだけでなく、日本自体の自己像の客体化・相対化にも資するのではないかと思うのである(これはまさに村井章介が『中世日本の内と外』で述べたことでもある)。

 

その他、例えばモノカルチャー経済とソテツ地獄の話が出てきたが、奄美大島の黒糖については、黒糖焼酎の「れんと」が好きでよく飲んでいた身として、ここも興味を引かれる部分であったし、また来年GWの国内旅行は沖縄・奄美の可能性が高いため、その目的としてグスク巡りはやはり外せないと思った次第(以前は今帰仁城跡なんかを訪れたので、次はもっと色々なものを見てみたい)。

 

というわけで、琉球史の理解が深まっただけでなく、旅のモチベーションも大変上がるよい契機となったことに感謝しつつ、この稿を終えたい。


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