チャンソーマン読了しました:理屈・お題目より内なる声(良心)に従うべし

2021-09-30 11:16:16 | 本関係

 

元々予定してた記事を清書する作業にあまり気乗りがせず、さて何を書こうかと思っていたら、「チェンソーマン」のレビューをまだ作成してないことに気づいた。

 

え~結論として、読了はしました。さらに言えば2周読みました。で、あれこれ思うところはあるんだけど、その感触をまだ上手く言語化できてない状態で止まっている。正直に書いてしまえば、この前に同じ作者の「ファイアパンチ」を一気に読んでおり、その衝撃があったために「チェンソーマン」を読み終えた最初の感想は「ああ、なるほどね」というものだった。

 

「ファイアパンチ」=ジャンプ+で描いた生々しく殺伐とした世界が「チャンソーマン」=少年誌だとこうなるのか~(こう工夫して表現されているのか~)と思いながら読んだというのが正直なところであり、それもあって今は「ファイアパンチ」の強すぎる印象に(自分の中では)吞まれてしまっている、という感じかな(「チェンソーマン」の名誉のために書いておくが、これは同作が大したことがないのではなく、「ファイアパンチ」が座右の書と思えるほど素晴らしい作品であり、そこで示された方向性・作家性の理解を「チャンソーマン」が超えることはなかった、という意味だ)。ただ、藤本タツキの作家性というか表現の志向性は、より明確に見えたと思う。

 

まあこれからアニメ化もするので一応ネタバレ抜きで箇条書きするなら、

1:お題目を信じない
大きな正義をそのまま信用などできない。実際、「守るべき」人間社会も大変「クソ」なものとして描かれる。「銃の悪魔」にまつわる欺瞞などはその一例。

2:理屈よりも内なる声(=良心)を信じる
1とリンクするが、「ファイアパンチ」第1巻の惨劇といい「チェンソーマン」といい、高尚に聞こえるご立派な発言をする人間こそ、その観念によって人を大量殺戮する存在として描かれている。

一方、特にデンジがわかりやすいが、最初こそただ欲望に忠実な(≒仲間からは信用できない)アンチヒーローとして描写されるが、ある意味そのような性質ゆえにお題目で丸め込まれず、最終的に己の内なる声=良心に従う存在(これは陽明学の件で触れたことがある)となっていく点は極めて重要だろう(例えばパワーに対する彼の心情変化を想起したい)。

3:何気ない日常の尊さ
これは次に述べる「愛」の話にもつながる

4:「愛」とは何ぞや
いささか我田引水ではあるが、これは最近よく扱っている「絆」の話につながると思っている(同じテーマを扱ったものとして、「鬼滅の刃」「ひぐらしのなく頃に業」などがある)。1で述べたような形で両作品とも社会やシステムへの不信(より正確には、それを妄信することへの忌避感)が繰り返し描かれているが、一方それだからこそ「大切に思う存在を守りたい」という意思が明確に描写されている点が重要に思える(これは2とリンクする)。このような特徴があればこそ、主人公が最後にとる事態解決の手段は、能力云々の問題はあるにしても、テーマ的に理解できるものだと読んでて思った次第。

5:特異な世界状況についてきちんと説明がなされている
ネタバレ回避のため詳細は割愛。

6:死と再生
これも詳細はあえて割愛。

7:映画的視点
通常とは違う命の観念を持っている(持たざるをえなくなった)存在が共通して映画に言及している。これはその人物の特異さの描写であるとともに、藤本タツキ自身の作家性でもあるのだろう。

といった共通点があると感じた。

 

これに加え、「チャンソーマン」では

(A)恐怖による支配

(B)ノイズ排除とその病理

(C)何も考えないことは幸福か?それとも不幸か?

といった点が終盤で前景化しているところが特徴的だろうか(ただし、「ファイアパンチ」にも閉鎖的コミュニティと禁忌、そしてそれを背景にした他者への暴力は何度となく描かれている)。このテーマについては、自分のブログでもAIやVRといったテクノロジーの発達と、地盤沈下する社会へのルサンチマンを逸らすシステム設計という観点で何度も書いているのでなじみ深いのだが、藤本タツキ自身がそれをどのように捉えているかについてはもう少し検証が必要なように思える・・・

 

てな感じですかねえ。ともあれ、この作者の作品は今後も引き続き追っていくつもりだ。まあ差し当たって、「チェンソーマン」をもう一度読み直して納得がいくレビューを作り、それから「ルックバック」に移りたいと思う。

 

ほな今日はこの辺で。


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