エセ漢文とアーキテクチャ

2010-03-31 18:30:06 | ことば関連
このブログで掲載している数十単位のエセ漢文の意図は大きく言って4つある。


1.意味の二重(多重)化、当て字

2.ありきたり、当たり前の話が何だか重々しい内容に見えてくる

3.1&2に絡む暗号解読的要素

4.読む人に理解不能(It's Greek to me.)であることの表象


1の二重化は「鬼奇声轟処」の「満詩音」などで、これは行った場所が「マンション」であることと、「詩音で満ちている」ことを掛けている(まあ後者はひぐらしをプレイしていないと全く意味がわからないネタですがw)。また例えば「帰省七日目」では「婚活」の「婚」を「困、金、渾(身)」と表現してみたり仕事に戻る憂鬱な気分を「雨雨雨」=「ううう」といううめき声と表現して遊んでいる。ちなみに、「Innoent World」という記事でもいくつか説明を加えたことがある(余談だが、題名は「様々な角度から物事を見ていたら自分を見失ってた」という歌詞から取っている)。当て字に関しては「『天才』少女美羽」の「日美怒杯大地」=「デ(イ)ビッド・コッパーフィールド」、「奇声二日目」の「具礼奈岩天国料理店」=「(天元突破)グレナガン」、「リストランテ・パラディーゾ」などがある。


次に2だが、これは「大量殺戮」が典型的。内容自体は2ヶ月間放置してい流しの食器を一気に洗いました、というだけの内容を某ゲームと絡めつつ漢文にしたら怪しげな記事になった、というもの(cf.「腐海の奥からこんにちわ」)。また「ガラスのくつ」では「中性的女性称揚後試待受誤素炉利女。度々開魅了、通路戦士髑髏錯乱、更勃発オイディプス的反乱、直進歩行不可、即止。」とか書いているが、翻訳すると「中性的な女性を称賛した後で携帯の待ち受けをゴスロリ女にした(これもネタ)。すると度々携帯の画面を開いてその度に魅了されるようになってしまい、それはあたかもストリートファイターの(一番ひどい)ドクロピヨリのようであって、さらにムスコは父親を殺すべく反抗を開始したためまっすぐ歩くことさえ困難となり、すぐに待ち受け画像を変えた」というおバカな内容である。まあ漢文でもバカはバカなんだが(笑)、その場合堅苦しい印象のある漢文で頭の悪い内容というギャップがよろしいんじゃないかと思ったり思わなかったり…とまあそんな感じ。


3については書いてある通り。


4の数は少ないが、「魔界騎士陰愚理奴」はその一例。これは「対魔忍アサギ」という同人ゲームのスピンオフである「対魔忍ムラサキ」というゲーム中の、ヒロインではなく一キャラである「魔界騎士イングリッド」が主人公のエロアニメを扱っているのだが、まあ百歩譲って対魔忍アサギは同人ゲームの中では超メジャーだとしても、そのスピンオフのさらにスピンオフであるエロアニメのエロさがあーだこーだ言ってもわかる人はいねーよwという認識をそのまま文体にしてみました的な記事である。その他マニアックネタに当て字をしたものも(1,3も絡むが)4の一部であると言える。


とまあこんな感じだが、じゃあ最初からこういった意図をもってエセ漢文を始めたかと言えば全くそんなことはない。元々、自分は思いついたことを携帯にメモるクセをつけているんだが、文字数の制限が邪魔になることがある。大抵は内容を引き継いで二つ目の覚書を作るのだけど、ある時助詞を省いた方がストックの上では合理的なことに気付いた(自分自身にはそれでも意味が通じるため)。とはいえ、助詞を省くのを意識してメモを取るのは逆にやりにくいので、結局普通に文章でメモるのは変わらなかったのだ。


しかし2年前、GWに帰省した時全角で250字しか入らない携帯メールの不便さを改めて痛感していた(実は4年前にも帰省中に皆殺し編の批判記事を書いたのだが、やはたらぶつ切りになって批判のポイントや論理的な連続性を担保することが難しく、歯がゆい思いをした経験があった)。何とか短い中で多くの情報を盛り込めないかを考えた時、助詞を全て消し、それだけだと無味乾燥な単語の羅列になるのでいっそ漢文みたいな文体にしてネタ化しようと思い立った。それが「帰省二日目」の記事だったわけだが、要するに最初は苦肉の策だったわけだ。そして以降、短い文に内容を圧縮して詰め込む時にはよくエセ漢文を利用するようになる。


そのように考えると、ケータイ小説ではないがアーキテクチャーが内容や文体に与える影響はやはり大きいのである。その結果として、単に文章を圧縮する以上の様々な効果や使い方に気付いたことは大きな収穫であった。まあこれはもちろんブログにも言えるわけだが、それについては別の機会に考えてみたいと思う。
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