フクダーダ「サクラチルサク」

2010-08-21 18:43:11 | 不毛漫画
世の中には、どこまでが計算なのかはわからんが、作品がそれ自体で批評になっているようなものが存在する。


エロ漫画家フクダーダの「サクラチルサク」は、そんな作品の一つである。
ごくごく簡単に内容を説明すれば、大学で同じゼミの後輩がゼミの教授と付き合っているらしいという話から始まり、帰り際にその後輩から誘われて実は関係が破綻したことを知り、そのままヤッて、動機づけが別れた教授への当てつけだという話になり、色々自己嫌悪に陥る彼女を励まして終わり、というものだ。


まあそれだけ聞けば別に目新しいところのない話だが、ポイントはストーリー性と濃密な(?)エロを両立させようとした結果、肉付けをする余裕がなく骨格だけが残り(まあ18ページだからね)、それによって作者がどういった点を押えようとしたのかがよくわかるようになっている。


まず最初のコマで、教授の隣にいる後輩が出てきて、それを遠巻きに見て「女という生き物は…」的な話をしたり、就職厳しい云々と嘆いている男連中の姿が次に描かれる。ここでは、女性=高嶺の花(遠い存在)で、自分はイケてないという図式が表現されている。男連中の発言や立場が読者の「感情移入」を意識してのものというのは言うまでもないだろう。


で、遠い存在だと思っていた後輩が、突然次のページで向うから言い寄ってくる。自分からはアプローチせず、なのに向こうからありがたくも言い寄っていただける(笑)というのは、「恋愛ADVの主人公が鈍感である理由」を想起させる。まあ要は、失敗するのは怖いし努力するのもメンドくさいけど、好意はもたれたいし想いは成就してほしいという何ともはやな願望の結晶が、「果報は寝て待て」な描写というわけですね。マケなさい。


で、ページもないのでいきなりヤルとwここで読者が感じる展開の唐突さは、路上でいきなりキスしてきた後輩と主人公の姿を見る道行く人の好奇の目と重ねあわされる。で、ホテルに着いたら服を脱ぎながら教授と別れた件についてのやり取りを1ページで。おいおいそんなに慌てなさんなと言いたくなるが(笑)、エロも必要だからページに余裕なんてないのですよ。


さてヤるシーンになると、まず胸から攻めるわけだが、ちょっと手で触って少し吸ったらあっという間にイッてしまわれます。そんなに敏感だと日常生活で困らないかい、という突っ込みはとりあえず置いておくわけですが、ここには必ず感じさせ(イカせ)ないといけない、という(エロ漫画の)傾向がよく表れております。で、お返しにフェラで射精となるが、その間に名字じゃなくて名前で呼んでくださいと言われたりなんたり。何でこの喋りにくいであろうタイミングでわざわざそれを言うのかはちと不思議ですがwまあ限られたコマは大切にしなければならん、ということでしょうかwちなみに半分皮が被っておりますが、それも「皮かむりもカワイー(はぁと)」の一言で無問題とwなお、管見の限りでは、エロ漫画の女性はチンカスを好む傾向にあるようだ。これは汚いものを綺麗なものが求めるという二項対立的描写が(以下略)


次は挿入シーンとなるが、ここで主人公が童貞であることをカミングアウト。後輩からはそんなもんマルっとお見通しだと言われ、その根拠として「女の子と接する時、腫れ物触れるみたいにおっかなびっくりでしょう」「噛んだりどもったり かと思えば浮かれて口数多くなったり」とマシンガンジャブを喰らうことになるwしかし、その話は微妙にスルーされ、めでたく挿入。2ページですでにアクメ寸前で3ページ目にて仲良く絶頂。次のページには感じすぎて「ひゅ~」「ひゅ~」と呼吸がヤバい感じになっている後輩の姿がデカデカと描かれる。まあこれ簡単にまとめると、自分のダメな点を指摘はされるがそれで拒絶されることはなく(承認され)、しかも童貞なのに何を戸惑うこともなくいきなり相手を感じさせ、アクメらせるという展開なわけで、つまりは「童貞でも大丈夫!」という親切設計なわけですなwそれにしても、童貞云々のところで「欠点」をあえて描いた上でそれをスルーさせるあたり、どうやってご都合主義の批判(醒めた感覚)を回避するかの配慮がうかがわれます。


行為の後、実は教授への当てつけだったとココロの隙間を明かされる。このままだと単に利用された感じでアレなので、「必ず就職の面接受かってくるから」と何か方向性間違った発言(笑)で相手を励まして終り。


という感じ。
ここまで描写の意図が明らさまだと、逆に最後は付き合うことにしちゃう超展開の方が、ご都合性が際立ってよかったのでは?と思うが、まあ読者が醒めないようにという配慮が所々見られるので、おそらくそれは作者の望むものではないのだろう。「ハニーブロンド」のように続きものとなることを見越しての中途半端さなのかもしれないが、とりあえずエロかストーリーのどっちかにフォーカスした方がいいよね。まあもっとも、一般誌進出の伏線(実験)であるなら、ちょっと話は変わってくるけど。


いずれにせよ、骨格がむき出しになったこのエロ漫画からは、読者の巻き込みや自己肯定の埋め込みがいかに行われているかがよくわかるようになっているということである。マケなさい。

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