第二次世界大戦であれ何であれ、ある日突然戦争が勃発するということはない。そこに到るまでには不信やヘイト、あるいはそれに基づく小競り合いが発展し、戦闘状態に突入するのである(その意味で、たとえばハルノートやABCD包囲網だけを見て太平洋戦争勃発の原因をあれこれ議論するような姿勢は愚の骨頂と言える。日本側だけ見ても、たとえば筒井清忠の『昭和期日本の構造』で語られるような土台があって、それが世界恐慌や外交関係の諸々の変化の中で時に現実の勢いに流され、時に元々の構想に固執する中、あの戦争にいたっている)。
では今回のウクライナ侵攻において、ロシア側はどうようにしてウクライナ、というかその背後にいると彼らが考える西側諸国への不信が醸成・拡大していったのか?それを説明した動画を紹介したい。
例の如く詳細は動画を見てもらうとして、興味深いのは、冷戦集結後にロシアが西側諸国(主にアメリカ)から「軽く」扱われているという認識であろう。
今のロシアの軍事費や動員可能兵数、そしてそれが長い国境線で分散せざるをえない事情を数字で具体的に聞けば、アメリカの反応はさもありなんという印象を受ける(冷戦時と同じであろうはずもない)。
さりながら、冷戦は西側諸国に戦って敗れたのではないという認識、こちらが歩み寄ろうとした核軍縮をあしらわれたり、杜撰な対応(核にまつわる取り決めがA4のペーパー1枚!)をされたという不信感、そして旧東側諸国(はっきり言えばロシア)を仮想敵とするNATOが解散もせず、むしろロシアの喉笛まで迫ってきているという危機感etc...これらが相まって、「あいつらとはわかりあえない」という認識が醸成され、ネオ・ユーラシア主義などもそれをブーストして今日のようなマインドが形成された、ということなのだろう。
ロシアが国防白書の中で「(軍事同盟に入っていないがゆえに)主権を持てる国」としてインドと中国を例に挙げ、ロシアはその二国とは対等なパートナーシップを結べるとおそらく考えているであろうが、両国とも今回の侵攻に対するロシアへの国連非難決議から距離を取っているのは興味深い。
こういった背景と国内の統制状況、そして強まる制裁の締め付けを考えるとき、やはり容易に今回の侵攻は解決をみないと思わざるをえないが(よくまあ簡単に降伏せよなどと言えるわな)、ともあれ情勢判断の一助として、紹介した次第である。
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