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ひぐらしへの評価が厳しくなる必然性

2006-01-24 23:32:12 | ひぐらし
ひぐらしの公式HPで掲示板を見ている人ならわかると思うが、そういったところに書き込む人間からもかなりひぐらしの批判が出ている(特にこのスレッドでは突っ込んだ意見交換が行われている)。そこに書き込むほど熱心ではないプレイヤーの反応は推して知るべし、というところだろう。

その評価について、ひぐらし=「推理モノ」という見方を受け、他の推理モノはどうだったか?「ノックスの十戒」は守られているのか?推理の正解率は?といった視点が提示された(No.37979)。これは、推理モノとしてひぐらしが批判されている以上、その「推理モノ」という基準はどれほど凡庸性があるものかを考えさせた点で重要な指摘である。がしかし、ひぐらしは他の推理小説などよりも厳しく評価される必然性が実は存在しているのだ。

まず第一に、「正答率1%」という煽り文句。こんな言い方すれば必死に推理・予想するし、よほどしっかりとした謎がくみ上げられているのだろうと期待もする。そして、罪編あたりからようやくわかることだが、そもそも話を推理する枠組みそのものが推理の対象であったということ。それは当然、様々な解釈を生み出すわけだが、それに一編につき六ヶ月という製作期間=推理する時間があったことが拍車をかけた。それ故、プレイヤーは便宜的にでも例えば「人為100%」といった立場を取らざるを得なかったのである。緻密な内容への期待ゆえに上のような立場を取るというミスを犯してしまった人もいるだろうが(話の推測から理論的に人為説に至ったわけではないということ)、「お疲れ様会」での議論などから、自分の立場を固定する必要に迫られていたのは事実だった。ここで重要なのは、「推理の枠組み」自体が推理の対象であったという事実を公表するタイミングが悪かったということだ。いきなり話が飛躍した罪編の後で「実は…」といったようなことを語られても、すでに多くのプレイヤーが「え~!?」という反応を示しており手遅れだった。しかも、その後が「枠組み推理できてもこの内容はねえだろ!」というような展開が皆殺し編で見せられたわけで、ここまでやられて何の怒りも覚えないプレイヤーこそ(私にとっては)不思議である。

そういった枠組みを提示するタイミングのミスとともに、『私的捜査ファイル』が誤解を加速させてしまった要因のように思える。『私的捜査ファイル』発売は、解答編発売前というタイミングを考えれば、真剣に推理しているプレイヤーの不安を上手く突いたものとして商業戦略的には評価できる。だが当然のこととして、「それだけのものを買わせるからには…」という意識的・無意識的な思いがプレイヤー達には醸成されたことだろう。そこに出てくる内容に、少なくともオカルトじみた内容は無い。ならば当然、プレイヤーの意識は人為という方向に行く。そして目明し編の内容がコンボで入れば、多くのプレイヤーは人為での見事な事件内容を想像するのは至極当たり前のことである。そういう流れを作っておいて、先に書いたように唐突なオカルト・SFの流れを出すのなら、プレイヤーは戸惑うか怒るかする。真剣に推理していた人であればあるほどそうだろう。何が言いたいかというと、一つの柱であるはずの「推理の枠組み」自体にまで解答編(=目編)を通してミスリードを仕掛けたことである。しかもそのミスリードは、ゲームだけしかやってない人間よりも多くのお金と時間をかけた人間(=本を買った人)のほうがかかり易いものになっていた。そうやってやり込んだ人間の方に不利益が出るような仕組みにしたこと自体が失敗だったと思う。

煽って買わせる?大いに結構。それは商業戦略の基本ですらある。だがそれなら、買った人間が利益を被るようにすべきだし、煽るに見合った本編の内容を作り上げるべきであった。なのに、重要な推理要素「推理の枠組み」の提示のタイミングが悪かったばかりか、それを明らかに誤解させるような流れを自らが作っていた。その意味で、今回の皆編の批判は作品的な必然性という不可避の理由以上に、全くの自業自得であったと言える。


※「推理の枠組み」もまた重要な推理対象と言うのなら、より早い時期にそれをわかり易い形で提示すべきだった(全部ではないにしても)。個人的には、オカルト・SF抜きで解釈するのが可能(と思われる)な目編あたりでこそ出すべきではなかったかと思う。そうすれば、本編とのギャップという効果もあるし、ここまでオカルト・SF否定が加速することもなかっただろう。

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