「奢り＝福利厚生」って考えたら、色々話がクリアになりそうって話

 

 

 

 

「男は女に奢るべきか」という問題について、私は明確に反対側に立った。というのも、カテゴリー設定をせずに主語を大きくしたままでこれを当たり前のこととして主張し、まして「やらない人間は晒す」がごとき行為は完全に害悪だと考えるからだ(もはやそのレベルになると「たかり」＝脅迫罪で、それを肯定するような発言は犯罪教唆にすらなりうる)。

 

 

ただ、この動画でも述べられているように、あくまでそれを「奢るのと奢らないのは婚活という場面でどちらが生存戦略的に有利か」に話を絞るなら、奢る方が有利というのは頷けるところだ。

 

 

ここでは、婚活をその名の由来通り就活で喩え、「奢ってくれるか否か」を企業の福利厚生の充実度合いで考えてみるとわかりやすい(ちなみに知り合い→友人→恋人→結婚というような、信頼関係の醸成から恋愛関係に到る段階を踏むならともかく、婚活でのマッチングはお互いの条件が符合するかという「面接」的な意味合いが強くなるため、言わば「足切り」的な意識が働きやすいという点に注意を喚起したい)。

 

 

もし仮に自分が今すぐにでも職について糊口をしのがなければならず、条件についてとやかく言っている場合を除き、それなりに複数の選択肢から選べる状態であれば、より条件のよい会社を選ぼうとするのは当然であって、そこに住宅手当などの福利厚生も含まれることは言うまでもない(ごく正確に言うと、先に述べたような徐々に関係性を深めていくパターンはその限りではないが、婚活はそもそも目的が明確なので、相手がその目的合理性に適うかどうかのチェック意識が強く働く、ということ)。

 

 

そして気をつけるべきなのは、企業の福利厚生が充実してないのは、道徳的な問題でもなければ、まして法律的な問題でもなく、単にどちらが自分にとってメリットがあると感じるか、という点だ。よって、その内容がショボいからといって社会的制裁をすべきとでもいうような晒し行為を行えば、むしろ自分の不見識に対する社会の反論・反発を受けるのは必定だから、大人しく切っておけばよい(もちろん、最近話題になっているどこぞの企業のように、謳っている条件と内実が異なるのは問題だから、それは大いに告発すればよろしい)。

 

 

・・・と話はここで終わりである。つまり、単に「婚活ではより条件のいい方を選びたいよね～」という話であり、そこにおいて女性側の準備のコストがどうとか、男が女に奢ることを正当化するための(穴だらけ)理論をゴチャゴチャ並べ立て、あたかも一般的ルールにしようとするから、反論の余地が大量に生まれて話がややこしくなるのだ(ここで話がよくわからなくなったら、今一度「就活」と「福利厚生」の関係性を元に考えなおしてみませう)。

 

 

ちなみに、冒頭の動画の題名にもあるように、コスパ思考が広がっているというのは婚活に限らず様々な面で指摘されることである。そしてこの傾向が進んでいてけば、経済衰退はもちろん、成熟社会化による共通前提の減少＝他者の不透明化＝他者のリスク化・ストレス化の促進と相まって、ますます「恋愛や結婚はコスパが悪い」と考える傾向に拍車がかかるだろう。すると当然、それを選択する人間の割合も減っていくわけだ(言い換えると、この変化には複数の合理的理由があるため、これを精神論で何とかしようとしても無意味である。まして、出生率が下がっているなどと始めからわかりきった報道に今さら右往左往するのは、ネタに困るマスメディアの飯のタネを増やしているだけであり、愚の骨頂と言える)。

 

 

これは先の企業の喩えで言うなら、原資が減り人件費が高くなっていく中、AIなど「代替物」の性能は上がっていく状況と言える。すると多くの企業は、人手を集めるため福利厚生を充実させることにコストをかけるよりも、AIなどに投資するようになるだろう(その損益分岐点をどこに置くかは、もちろん企業によりけりだろうが)。

 

 

そのわかりやすい表象がVtuberやデジタルペットだったりする訳だが、こうしてそもそも人手を求める企業(＝婚活男性)自体が大きく目減りしていく中、10年後・20年後に福利厚生(＝婚活において奢りを条件化する)の要求がどのように変化しているのか、はたまたしていなのか、大変興味深いところであると言いつつ、この稿を終えたい。

 

 

 

 

【補足】

 

 

なお、今書いたことがただ動画内容の揶揄であったり婉曲的な否定と思われるのは意図に反するので、次の動画もあわせて掲載しておきたい(この動画から想起されるのはモラハラやDVだが、そういう攻撃性での表象なくてもパートナーが壊されていく事例として、『餓狼伝』のサクラの母親を思い出した)。