水産業界事件記録

水産業界で発生した事件の報道記録

宮城県議 仁田和広容疑者(72)逮捕 あっせん利得容疑 「仁田案件」県庁内で警戒

2022-10-02 13:24:44 | 日記

 

2022年10月06日 河北新報
[「報酬目的ではない」 逮捕の県議、容疑否認 金銭授受は認める 宮城・あっせん利得事件]
被災企業支援のグループ補助金を巡るあっせん利得処罰法違反事件で、宮城県警に逮捕された自民党県議仁田和広容疑者(72)=宮城県七ケ浜町吉田浜=が金銭を受け取ったことを認めつつも容疑を否認していることが5日、関係者への取材で分かった。同法は、あっせんの見返り目的での金銭授受を禁止しており、県警は動機面を詳しく調べている。
関係者によると、仁田容疑者は同法違反(利益供与)の疑いで逮捕された会社役員の男(61)=塩釜市=から「50万円は受け取った」と供述する一方で、「報酬目的ではない」と語り、寄付など別名目での授受だったと主張している。
グループ補助金は2021年の宮城、福島両県で最大震度6強を観測した地震の被災企業が対象で、会社役員が経営する水産加工会社は十数億円の補助金を申請したが、宮城県に被害実態に見合わない過大申請とみなされ、受理されなかった。
仁田容疑者の逮捕容疑は、補助金が申請通り交付されるよう会社役員から口利きを依頼され、1月上旬、議会庁舎で審査担当の県職員に「本会議で問題にする」などと語って交付を働きかけ、同月中旬に会社役員から報酬として現金50万円を受け取った疑い。

 

2022年10月03日 河北新報
[宮城県議会の議場。一般質問では議員が執行部に県政課題をただす]
OB「聞きたくない」
「聞きたくない言葉だね。ぞっとする。かつて上司に『こんなつまらないことで本会議に質問を出させるな』と怒られたことを思い出す」
70代の県OBが30年近く前の出来事を振り返る。
「本会議で問題にする」は、県議会の本会議で一般質問をすることを指す。議員が住民を代表して知事ら県の執行部に、行政サービスや将来の方針、課題などについて、直接質問することを意味する。
職員は質問に答えるため答弁書を作り、担当部長や知事への説明を経て、本会議に臨む。質問の通告を受けてから一般質問の日まで期間が短く、担当課の職員の負担は大きい。
70代OBは「半信半疑の内容を質問されると、徹底して調べるのに時間がかかった。痛くもない腹を探るような質問を受けることで、逆に知事から疑われるのも嫌だった」と話し、「事前の根回しで、本会議で変な質問をさせないことが評価された」と打ち明ける。
現役「どうぞどうぞ」
一方、現役世代は受け止め方が違う。「『質問する』と言われたら、『どうぞ、どうぞ』というのが正直な気持ち」と40代職員。答弁書作りが負担になることには同調しつつ「それが本業。当たり前過ぎて、脅しや『影響力の行使』だとは思わない」と語る。
県庁内の変化の背景には、知事が逮捕された1993年のゼネコン汚職事件や県職員が県議に公共工事の予定価格を漏らした2001年の競売入札妨害事件がある。両事件を受け、県庁内で政治家との接触歴を一部記録するなど、不当な圧力を排除する動きが強まった。
接触歴オープンに
東北大大学院情報科学研究科の河村和徳准教授(政治学)は「脅し文句に効き目があると思っていたのは本人だけだったのではないか。いまだに残る政治家に頼めば何とかなるという雰囲気が議員の権力の源泉にもなっている。議員と職員の接触歴を全部記録に残し、オープンにしていけば、政治圧力を使った事件は減っていくだろう」と語る。
逮捕容疑は、仁田容疑者は、宮城県塩釜市の水産加工会社社長(61)からグループ補助金を満額で受けられるよう口利きを依頼され、審査担当の県職員に「本会議で問題にする」などと語って交付を働きかけ、1月中旬に社長から現金50万円を受け取った疑い。補助金は交付されなかった。


2022年10月02日 河北新報
[逮捕の宮城県議と水産加工会社役員 震災後に関係深めたか あっせん利得]
被災企業支援のグループ補助金を巡るあっせん利得処罰法違反事件で、宮城県警に逮捕された自民党県議仁田和広容疑者(72)=宮城県七ケ浜町吉田浜=と、水産加工会社役員の男(61)=塩釜市=が東日本大震災後に関係を深めていたことが1日、関係者への取材で分かった。
複数の関係者によると、会社役員は震災後、仁田容疑者の県議選(多賀城・七ケ浜選挙区)に関わるようになり、後援会関係者として事務所開きなどにたびたび顔を出した。
仁田容疑者が8選を果たした2019年選挙の事務所開きで、会社役員は周囲に「震災からの復興でお世話になった」と話していた。その前後に多賀城市のホテルであった県政報告会でも登壇。塩釜市の水産関係者は「選挙区外の塩釜の社長がなぜあいさつするのかと不思議だった。2人は特に関係が深いと思った」と話す。
一方、震災前の付き合いは薄かった。仁田容疑者の選挙に20年以上関わる多賀城市の会社社長(70)は「会社役員の姿は震災後しか見たことがない」と強調。後援会幹部の70代女性も「昔からいるイメージはない」と強調する。
会社役員自身、震災前は政治と関わりが薄かったとみられる。震災前まで水産加工会社に勤務していた男性は「一匹おおかみ的な会社役員は誰かを頼ることもなく、後援会に入ったり、政治家のパーティーに行くこともなかった」と語る。
この水産加工会社は東日本大震災後、13年1月~19年12月に計4件、総額約8億円のグループ補助金の交付決定を受けた。21年2月の福島県沖地震でもグループ補助金の交付を受けようとして、役員の男が仁田容疑者を頼ったことが今回の事件の端緒になったとみられる。
仁田容疑者の逮捕容疑は、会社役員からグループ補助金が申請額で交付されるよう口利きを依頼され、議会庁舎で1月上旬、審査担当の県職員に「本会議で問題にする」などと県議の影響力を使って交付を働きかけ、同月中旬に報酬として現金50万円を受け取った疑い。会社役員は報酬を支払った疑い。

2022年10月01日 河北新報
[「仁田案件」宮城県庁内で警戒 県議口利き 以前も対応困難な要望か]
被災企業支援のグループ補助金を巡るあっせん利得処罰法違反事件で、逮捕された自民党宮城県議仁田和広容疑者(72)=宮城県七ケ浜町吉田浜=が過去にも、被害実態に見合わない補助金申請を仲介したり、対応困難な案件を働きかけたりした可能性があることが30日、県関係者への取材で分かった。
仁田容疑者が県職員を呼び、口利きをするのに使ったとみられる県議会庁舎の応接室
複数の県関係者によると、仁田容疑者が持ち込むのは公平性をゆがめる恐れのある補助金や許認可の申請もあり、「仁田案件」として県内部で慎重に検討するよう情報共有していた。
県関係者は「仁田容疑者と心中したくはない。仲介する案件は絶対に受けるなと部下に言っていた」と証言。面会を希望する水産業者に「仁田容疑者を県庁に連れてこないでくれ」と求めたという。
仁田容疑者から働きかけられた際の対策も取っていた。「『仁田案件』は危ない。言った言わないの水掛け論になるリスクがあり、それなりの役職の職員が単独ではなく複数で対応した」と元県幹部。現職の県幹部は「補助金や許認可が絡む無理難題を言ってくる。若手を面会に行かせることはできなかった」と語る。
警察も働きかけ把握
事件でも、逮捕された水産加工会社役員の男(61)=塩釜市=が申請しようとした補助金は十数億円と被害実態に見合わない過大な額だったとされる。仁田容疑者は交付決定が難しい会社役員に対する補助金について、満額交付を県側に働きかけたとみられる。
県警も仁田容疑者が県に働きかけを繰り返していたことを把握しており、事件との関連を調べる。
仁田容疑者の逮捕容疑は、会社役員からグループ補助金を申請する金額で交付決定が受けられるよう口利きを依頼され、議会庁舎で1月上旬、審査担当の県職員に「本会議で問題にする」などと県議の影響力を使って交付を働きかけ、同月中旬に報酬として現金50万円を受け取った疑い。会社役員は報酬を支払った疑い。

2022年10月01日 河北新報
[「グループ補助」104回言及 あっせん利得事件 仁田容疑者の県議会発言分析]
被災企業支援のグループ補助金を巡るあっせん利得処罰法違反事件で、河北新報社は30日、宮城県議会会議録検索システムを使い、逮捕された自民党県議仁田和広容疑者(72)=七ケ浜町吉田浜=の過去の発言を分析した。事件のキーワード「グループ補助(金・事業)」は約100回登場。仁田容疑者が県職員に口利きしたとされる1月以降の発言を人工知能(AI)で分析すると、「国土強靱化(きょうじんか)」などの単語の出現が目立った。
口利き疑いの1月以降「国土強靱化」強調
「グループ補助(金・事業)」の出現頻度は全ての県議会定例会、臨時会、各種委員会を対象とし、委員長としての発言を除外して調べた。仁田容疑者は2012年7月の保健福祉常任委を皮切りに21年9月の環境福祉常任委まで44回の会議で計104回言及した。
年別では12年10回、13年22回、14年6回、15年3回、16年16回、17年2回、18年15回、19年5回、20年17回、21年8回だった。主な発言内容は次の通り。
「グループ補助金も宮城県が窓口になって中小企業庁が出しているけれども、結構審査が厳しくて何度もはじかれています」(18年4月・環境生活農林水産常任委)「例えば、グループ補助金。知事の言っている創造的復興で、県が全部却下している部分もあり、グループ化できないとか、ほとんど進んでいないんだよ」(16年1月・大震災復興調査特別委)
一方、仁田容疑者が今年1月以降、県議会で発言した内容約4万5000字については、特徴的な言葉を大きく表示する「ワードクラウド」の手法で分析を試みた。データ分析を手がけるユーザーローカル(東京)のテキスト分析ツール「AIテキストマイニング」を利用した。
最も多かった単語は「予算」で119回。建設企業常任委所属とあって「国土強靱化」「港湾」「仙台港」など土木、港湾関連への言及が目立った。「補助事業」は12回で、「どうですか、部長」などと繰り返し答弁を迫る場面も複数あった。対象期間中に「グループ補助(金・事業)」は出てこなかった。


[グループ補助金]地震や津波などで被災した中小企業を対象に、施設や設備の復旧費用を補助する制度。地域の復興に役立つことが条件で、2社以上のグループ単位で認定する。東日本大震災をきっかけに2011年度に創設された。
企業グループが復興に向けて共同で取り組む事業計画を作成。県の認定を受けた後、補助金を希望する参加企業は個別に申請する必要がある。国と県が最大で4分の3を補助する。
宮城県内では東日本大震災と19年の台風19号、21年の福島県沖地震、22年3月に宮城、福島両県で震度6強を観測した地震がグループ補助金の対象となった。今回の事件で焦点となった補助金は、21年の福島県沖地震で被災した中小企業などを対象としている。
仁田和広容疑者 過去の県議選結果
仁田和広容疑者は1991年、宮城県議選多賀城・七ケ浜選挙区(定数2)で初当選した。2期目途中の96年、衆院選宮城4区に旧新進党公認で立候補し、落選。99年、県議に返り咲き、現在8期目。これまでの選挙結果は以下の通り。
▽1991年4月 県議選(多賀城・七ケ浜)
当 14,473 仁田 和広 自新
当 11,166 安住仁太郎 自現
   4,426 吉田 瑞生 社新
   2,751 山田 弘次 無元
▽1995年4月 県議選(多賀城・七ケ浜)
当 15,198 仁田 和広 自現
当  9,110 菊地健次郎 無新
   7,948 竹谷 英昭 無新
▽1996年10月 衆院選宮城4区
当 75,196 伊藤宗一郎 自前
  59,436 仁田 和広 進新
  18,813 菅原 国夫 共新
  14,887 佐藤 芳博 社新
▽1999年4月 県議選(多賀城・七ケ浜)
当 12,692 仁田 和広 無元
当 10,038 菊地健次郎 自現
   8,396 安住 政之 自現
   4,014 斉藤 規夫 共新
▽2003年4月 県議選(多賀城・七ケ浜)
当 11,188 仁田 和広 無現
当  9,149 菊地健次郎 自現
   8,984 安住 政之 自元
   3,623 斉藤 規夫 共新
▽2007年4月 県議選(多賀城・七ケ浜)
当 12,138 仁田 和広 自現
当 10,275 寺沢 正志 自新
   6,403 小林 立雄 共新
▽2011年11月 県議選(多賀城・七ケ浜)=無投票
当        寺沢 正志 自現
当        仁田 和広 自現
▽2015年10月 県議選(多賀城・七ケ浜)
当  9,812 深谷 晃祐 無新
当  6,255 仁田 和広 自現
   5,710 寺沢 正志 自現
   4,778 戸津川 永 共新
▽2019年10月 県議選(多賀城・七ケ浜)
当 10,968 深谷 晃祐 自現
当  6,761 仁田 和広 自現
   6,327 藤原 益栄 共新

2022年09月30日 河北新報
[あっせん利得の仁田容疑者、補助金継続へ「省庁詣で」 政務活動費で頻繁に上京]
被災企業支援のグループ補助金を巡るあっせん利得処罰法違反容疑で、逮捕された自民党宮城県議仁田和広容疑者(72)=宮城県七ケ浜町吉田浜=が同補助金の継続や拡充に向け、政務活動費を使って中央省庁に要望活動を行っていたことが29日、分かった。仁田容疑者が県議会に報告した文書によると、2017~21年度の5年間で少なくとも省庁幹部と68回、国会議員とも18回面会した。
県警もこうした事情を把握。仁田容疑者が国と地元とのパイプ役として「省庁詣で」を繰り返し、被災企業などへの影響力を強めたことも事件の背景にあるとみて詳しい経緯を調べる。
省庁幹部と新年に会食も
同補助金に関する政務活動の内訳は表の通り。面会は18年度の33回が最も多く、新型コロナウイルス下の20年度が25回、21年度が13回と続いた。
省庁幹部や国会議員との面会場所は東京・霞が関や衆参両院議員会館で、目的は「事業の延長と拡充について要望」「問題点を協議し解決策を探る」などと記載。省庁幹部と新年に会食した例もあった。省庁や幹部、国会議員の具体名は記されていなかった。
18年には塩釜市で加工会社役員と事業の問題点を協議し解決策を練ったほか、仙台市青葉区の県議会庁舎で同補助金を申請した企業幹部や県幹部と協議したとの記述もある。
「2、3年は延ばさないと」
仁田容疑者は21年2月の県議会自然災害対策調査特別委員会で、県担当者らを前に「補助金が採択されない企業や自らの金が用意できない企業がいっぱいある。2、3年は延ばさないと事業完遂にはならない」と強調。「震災などで疲弊した人を助けたいというのが国の方針。はっきり言うと、中小企業庁と農林水産省の考え方だ」と言及した。
同補助金は東日本大震災を契機に創設された。県内では19年の台風19号、21、22年の福島県沖地震でも適用された。逮捕された会社役員の男(61)=塩釜市=が社長を務める水産加工会社は13年1月~19年12月に震災で計4件、総額約8億円の交付決定を受けた。
仁田容疑者の逮捕容疑は、会社役員から同補助金を受けられるよう口利きを依頼され、県議会庁舎で今年1月上旬、審査担当の県職員に「本会議で問題にする」などと県議の影響力を使って交付を働きかけ、同月中旬に報酬として現金50万円を受け取った疑い。会社役員は報酬を支払った疑い。

2022年09月30日 河北新報
[過大な補助申請に宮城県が難色 役員の男、事態打開へ仁田容疑者に口利き依頼か]
被災企業支援のグループ補助金を巡るあっせん利得処罰法違反事件で、逮捕された会社役員の男(61)=宮城県塩釜市=が経営する水産加工会社の補助金申請額を宮城県が過大と判断していたことが29日、分かった。県警は事態打開を図るために自民党県議仁田和広容疑者(72)=宮城県七ケ浜町吉田浜=に口利きを依頼した可能性もあるとみて、経緯などを調べている。
申請額は十数億円にも
会社役員が経営する水産加工会社を含むグループ5社の事業計画は認定を受けていたものの、結果的に同社の補助金申請だけは受理されなかった。
関係者によると、会社役員の男が申請しようとした額は十数億円に上っていたといい、同業者から「あり得ない」という声が上がっていた。県関係者によると、県の現場調査でも申請額に見合った被害は確認されなかった。
今回のグループ補助金は昨年2月に宮城、福島両県で最大震度6強を観測した地震で被災した中小企業が対象。県によると、役員が経営する水産加工会社は他の5社とグループを組み、同7月に事業計画の認定を受けた。その後、各社が宮城県側に補助金を申請する手続きに入ったが、役員経営の会社の申請だけが最後の交付先決定となった今年1月下旬までに受理されなかった。
仁田容疑者の逮捕容疑は、会社役員の男からグループ補助金を申請する金額で交付決定が受けられるよう口利きを依頼され、議会庁舎で1月上旬、審査担当の県職員に「本会議で問題にする」などと県議の影響力を使って交付を働きかけ、同月中旬に報酬として現金50万円を受け取った疑い。会社役員の男は報酬を支払った疑い。県警は両容疑者の認否を明らかにしていない。

2022年09月29日 河北新報
[宮城県議 仁田和広容疑者(72)逮捕 補助金 口きき一因か]
被災企業支援のグループ補助金を巡るあっせん利得処罰法違反事件で、逮捕された会社役員の男(61)=宮城県塩釜市=の水産加工会社だけが、6社でつくるグループのうち唯一、交付決定を受けていなかったことが28日、分かった。宮城県警捜査2課は、補助金交付の停滞が自民党県議仁田和広容疑者(72)=宮城県七ケ浜町吉田浜=に口利きを依頼した一因とみて、経緯を調べている。
対象となったグループ補助金は昨年2月に宮城、福島両県で最大震度6強を観測した地震で被災した中小企業支援が目的。宮城県によると、会社役員が経営する水産加工会社(塩釜市)は、他の5社とグループを組み、昨年7月に事業計画の認定を受けた。5社は補助金交付が決まったが、役員の会社のみ未交付だった。
昨年の地震のグループ補助金は、最後の交付先決定が今年1月下旬。県警によると、仁田容疑者の県職員に対する働きかけと報酬受領は1月上旬から中旬にかけてとされる。会社役員は交付決定の遅れに焦って口利きを依頼した可能性もあり、県警は慎重に捜査している。
仁田容疑者の逮捕容疑は、会社役員からグループ補助金を受けられるよう口利きを依頼され、議会庁舎で1月上旬、審査担当の県職員に「本会議で問題にする」などと県議の影響力を使って交付を働きかけ、同月中旬に報酬として現金50万円を受け取った疑い。役員は報酬を支払った疑い。
県は未交付理由を明らかにしていない。グループ補助金は、同じ地域や業種の企業など複数の事業者でつくるグループが復興事業計画を県に提出し、計画が認定された後に各事業者が補助金を申請し、県の審査を経て交付される。昨年の地震のグループ補助金では27グループ202社が計画の認定を受け、約57%が交付決定を受けた。

2022年09月28日 河北新報
[宮城県議 仁田和広容疑者(72)逮捕 あっせん利得容疑]
ともに東日本大震災の沿岸被災地が地元で、国政にも挑んだ宮城県議会の重鎮と水産会社の役員。2人が災害復興の補助金申請に絡み、あっせん利得処罰法違反容疑で逮捕された。事件の知らせを受けた地元の熱心な支持者は嘆き、水産関係者は業界への影響を心配した。
「申し訳ない」。27日夕、県議仁田和広容疑者(72)=宮城県七ケ浜町吉田浜=の親族から、後援会関係者に謝罪の電話が入った。
20年以上支援してきた多賀城市の70代女性は「政治家として曲がったことはしない人だと信じてきた。こんなに悔しい話はない」と涙ぐんだ。
同じ頃、県警捜査員10人が県議会庁舎に家宅捜索に入り、仁田容疑者が所属する会派の控室などから書類を押収。27日夜には仁田容疑者の自宅前に報道各社が詰めかけた。
仁田容疑者は1991年に初当選。96年には衆院選宮城4区で当時の新進党公認で立候補し、落選した。県議に返り咲いて当選8回を重ねる。七ケ浜町の70代の無職男性は「当選を重ねていくうち、心が緩んでしまったのだろうか。後継者とみられていた親族がかわいそうだ」と残念がった。
水産会社には27日午前、役員の男の親族から「出社できない」と連絡があったという。同社社員は「現時点で誰も詳細が分からず、コメントのしようがない。何も聞かされておらず、びっくりしている」と話した。
[宮城県議会、衝撃広がる 仁田県議逮捕 県庁動揺、情報収集に奔走]
昨年2月の福島県沖地震で被災した中小企業を支援するグループ補助金を巡るあっせん利得処罰法違反事件で、現職宮城県議の仁田和広容疑者(72)が27日、逮捕された。9月定例会開会中の県議会には衝撃が広がり、県議の権限を利用して業者から金銭を授受した容疑を批判する声が上がった。
仁田容疑者が籍を置く県議会最大会派自民党・県民会議の佐々木幸士会長は27日夕、報道陣の取材に応じ「事件の一報に大変驚いている。所属議員の逮捕は誠に遺憾で、心より深くおわび申し上げる」と謝罪。「事実関係が明らかになり次第、厳正に対処したい」と述べた。
仁田容疑者は1991年4月の県議選多賀城・七ケ浜選挙区に自民公認で立候補して初当選。2期目途中で辞職し、96年10月の衆院選宮城4区に旧新進党から立候補して落選した。99年4月の県議選で再選され、現在8期目。
同会派所属の県議によると、県の土木・港湾行政に熱心に取り組み、性格は「わが道を行くタイプ」。県議会本会議では原稿を携えず一般質問に臨むなど、ベテランらしい一面ものぞかせていた。
第2会派みやぎ県民の声の石田一也氏は「1期目の私に議会での振る舞いを教えてくれたり、『いい質問だった』と褒めてくれたりした」と驚きを隠せない様子。共産党県議団の金田基氏は「県民の相談を県の担当課につなぐのは普通の議員活動。それを超えて、お金をもらったのが事実だとすればあってはならないことだ」と強調した。
グループ補助金で被災事業者を支援してきた県庁内にも動揺が走り、職員は情報収集に追われた。県幹部は「最近は官公庁での政治への忖度(そんたく)が問題視され、行政機関内部でも違法・不正行為を通報する仕組みが整いつつある」と困惑する。
村井嘉浩知事も談話を発表。詳細を把握していないとしつつ、被災事業者支援の補助金である点を踏まえ、「県民や復興に向けて必死に頑張っておられる事業者を裏切る行為。議員自らが実態の解明に向けて説明責任を果たしていただきたい」と指摘した。


かっぱ事件 かっぱ社長 田辺公己容疑者(46)逮捕 不正競争防止法違反容疑

2022-10-02 09:05:20 | 日記

2022年10月07日 日本経済新聞
[かっぱ社長逮捕1週間 営業秘密持ち出し、浮かぶ構図]
「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト元社長、田辺公己容疑者(46)ら3人が逮捕された不正競争防止法違反事件で、田辺元社長が競合する「はま寿司」の営業情報など多数のデータを持ち出していた疑いがあることが6日分かった。田辺元社長が転職前に秘密保持の誓約書に署名していたことも判明した。逮捕から7日で1週間。警視庁は田辺元社長が違法性を認識していた可能性があるとみて調べている。
者によると、幹部人材を募集していたカッパ・クリエイトの親会社、コロワイドに人材仲介会社から田辺元社長の紹介があったのは2020年7月中旬。2度の面接を経て、8月26日に採用の内定を通知した。
田辺元社長は9月中旬、ゼンショーHDに退職の意向を伝え、同月下旬から有給休暇を取得。職務で知った情報を外部に漏らさないとする秘密保持の誓約書に署名していた。元部下にはま寿司の内部データのファイルを外部サーバーにアップロードさせたのは、同月末ごろだったとされる。
データはその後、USBメモリーに移され、田辺元社長の手に渡ったとみられる。カッパ社への入社は11月1日だった。
元部下がアップロードしたデータには、営業に関する情報など多数のファイルが含まれていたという。警視庁はこの中で営業秘密と認定した仕入れに関する2つのファイルが不正競争防止法違反にあたると判断したもようだ。
田辺元社長は転職後、同社商品企画部長で同法違反容疑で逮捕された大友英昭容疑者(42)とデータを使い、商品原価を比較した表を作成するなどした疑いがある。
データの持ち出しが発覚したのは、田辺元社長が別ルートで情報を入手していたことがきっかけだった。ゼンショー側は、元社長が20年11~12月に元部下からはま寿司の売り上げデータをメールで受け取った疑いがあることを把握し、21年2月に警視庁に相談。社内調査の過程で営業秘密にあたる仕入れデータの持ち出しも浮上した。
関係者によると、田辺元社長は逮捕後の調べに対し、仕入れデータの取得などを認めたうえで「不正競争防止法はよく知らなかったが、社内ルールに違反していることは認識していた」などと話しているという。
検察当局は今後、田辺元社長だけでなく、法人としてのカッパ社についても社内の共有状況などを調べたうえで、起訴するかどうか判断するとみられる。
「かっぱ寿司」元社長を巡る不正競争防止法違反事件
警視庁は9月30日、「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトの元社長、田辺公己容疑者(46)や同社幹部ら3人を不正競争防止法違反容疑などで逮捕した。
田辺元社長の逮捕容疑は、ゼンショーホールディングス(HD)に在籍していた2020年9月末ごろ、過去に取締役を務めた子会社、はま寿司の内部データを不正に取得し、カッパ社への転職後に業務で使用するなどした疑い。
データは食材の仕入れ価格や取引先に関するもので、警視庁は「営業秘密」にあたるとみて捜査。カッパ社にも両罰規定を適用し、書類送検した。
不正競争防止法は企業の営業秘密を不正に取得して持ち出す行為などを禁止している。不正な利益を得る目的で営業秘密の持ち出しなどをした場合、懲役10年以下か罰金2千万円以下、またはその併科となる。

2022年10月06日 日本経済新聞
[かっぱのガバナンス空転 1年遅かった社長辞任]
「こんなデータ見せられたって、何の足しになるのか。誰がありがたがって見るのか」。回転ずしチェーン、「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト社長(当時)、田辺公己容疑者(46)による営業秘密のデータを不正に持ち出した疑いのある不正競争防止法違反事件。データを見せられたかっぱ寿司の幹部は首をかしげ、こんな感想を抱いたのではないだろうか。「それで『何かしろ』というのか」と。
■ネタの相場観は共通
報道によると、田辺容疑者は、かつて取締役を務めたはま寿司の食材の仕入れ価格、仕入れ先の情報などを当時の部下などを通じて不正に入手したという。営業に関するデータを社外に持ち出し、競合する企業で活用することは断じて許されないが、そもそも喉から手が出るほどのデータなのか、疑問が残る。
というのも、すしの原材料は主にコメとネタ(魚介類)だ。どちらも農水産物で食材そのものに精密な工業製品のようなノウハウが詰まったものではない。飲食業界で仕入れを担当している人物ならば、各種ネタの相場観は肌感覚で持ち合わせる。と同時にそれがないと仕事ができないからだ。
はま寿司の出店形態は小型店やビル内店舗が多い一方、かっぱ寿司は郊外型店舗が主体だ。両社の物流や店舗オペレーションは異なる。仕入れ価格を知っても、各社それぞれの運営コストが違うから入手したデータは参考程度にしかならない。田辺容疑者もほんの手土産的な感覚でデータを入手したのだろう。ただ、メールのやり取りで足がついてしまった。ライバルの情報で本当に喉から手が出るほど欲しいのは、数年先までの出店情報だ。その情報を基にライバルの出店候補地を避けて出店することができるからだ。
■不正疑いの表面化後も続投
飲食業や小売業は新規参入も多く、人材の流動性は製造業よりも比較的高いといわれる。大手飲食チェーンや経営効率でならした小売りチェーンの幹部などに転職の誘いは日常的にある。だが、新天地で前職よりも大活躍しているという話はあまり聞かない。むしろ意図的ではないにしろ、新しい職場を混乱に陥れるケースすらある。トロイの木馬のように。
いくらその人物がピカピカのノウハウを持ち合わせていても、転職先の企業にそのノウハウを受け入れる社風や企業組織がないかぎり、小売業や飲食業独特の技術移転は難しい。異なる仕組みで回っている組織の中に別の仕組みを短時間で入れるのは至難の業だ。肩で風を切っていた新参者はいつしか居場所を失い、「こんなはずじゃなかった」と去っていく。そしてまた、別の居場所を探す。業界では一番長くいた会社の名前を枕詞(まくらことば)にして「〇〇くずれ」と揶揄(やゆ)される。
それよりも今回のことで驚いたのは、田辺容疑者によるデータの不正入手の疑いが表面化したのは2021年7月にもかかわらず、1年以上経過した10月3日になってようやく本人が申し出て辞任したことだ。そもそも21年6月に、はま寿司側の告訴を受け、不正競争防止法違反容疑で警視庁の捜索を受けた時点で、辞任か解任されてもおかしくない。
疑いをかけられて1年あまり。田辺容疑者本人もデータの入手を認めていたにもかかわらず、社長の座にとどまっていたのはなぜか。逮捕からの数日間、田辺容疑者は留置所から経営の指示を出し、営業報告を受けていたのだろうか。この会社にとっての社長とは何だったのか。
■軽量級にみえる社長職
カッパ・クリエイトを巡ってはここ10年ほどは経営不振に悩まされ、10年度に回転ずしチェーンの業界トップの座をあきんどスシロー(現FOOD&LIFE COMPANIES)に譲ったあとはズルズルと順位を下げ、現状は4位に甘んじる。地道な営業面での取り組みの決め手を欠き、M&A(合併・買収)による起死回生を狙うが、迷走を重ねた。
14年に現在の「牛角」などを手がけるレインズインターナショナル、大戸屋ホールディングスなどを傘下に持つコロワイドに駆け込んだ。そこからかっぱ寿司の社長は目まぐるしく代わった。それほど軽量級にみえる社長職でありながら、田辺容疑者はなぜ社長職に居続けたのか。営業秘密持ち出しは許されることではないが、社長に居座ったことのほうが不思議でならない。
カッパには指名・報酬諮問委員会があり、取締役会に答申でき、取締役会は代表取締役の選任・解任ができるはずだ。株主総会でも同様に選任・解任ができる。22年6月に同社は「当社取締役会の実効性に関する評価結果の概要について」を公表した。そこには「当社取締役会は、審議に適した規模、構成、多様性を備えており、当社にとって適切なものとなっております(中略)取締役会の実効性は十分確保されていると評価いたしました」とある。
ガバナンス(企業統治)ならぬ、カッパナンスは、いったい、どこを、何を見ていたのだろうか。おそらく長年の混乱により、消費者や社会の変化に敏感であるべき外食企業の本質が薄れているのだろう。そして親会社のコロワイドの責任も重いことを忘れてはならない。

2022年10月02日 日本経済新聞
[「かっぱ寿司」法人、異例の立件 営業秘密を組織利用か]
「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト社長、田辺公己容疑者(46)や同社幹部ら3人が逮捕された不正競争防止法違反事件で、警視庁は法人としてのカッパ社を2日に同法の両罰規定に基づき書類送検する方針だ。田辺社長が持ち込んだとされる競合他社「はま寿司」の内部データがカッパ社内で商品戦略などのために組織的に利用された疑いが強いとみて、異例の法人の立件に踏み切る。
田辺社長は2020年11月のカッパ社への転職前に、かつて自身も取締役を務めていたはま寿司の内部データのファイルを不正に取得したなどとする不競法違反容疑で逮捕された。警視庁によると、ファイルにははま寿司が扱う食材の仕入れ価格や取引先、商品の原価などに関する情報が含まれていた。同庁は営業秘密に当たるとみている。
田辺社長はカッパ社に転職後に顧問となり、商品企画部長の大友英昭容疑者(42)=不競法違反容疑で逮捕=にメールでファイルを送信した。
同部長は当時の商品本部の上司や部下の2人にファイルの情報を共有したほか、自社の商品原価と比較した表を作成。田辺社長にメールで送ったとされる。
外食業界でも回転ずしは原価率が高いとされ、仕入れに関する情報は収益に関わる重要なデータとなる。仕入れ先との価格交渉にも使える。警視庁はカッパ社が商品開発などに生かすため、競合するはま寿司の営業秘密を組織的に共有して活用していた疑いがあるとみて調べている。
不正競争防止法は不正の利益を得る目的で他社の営業秘密を入手したり、自社の業務に使用したりして侵害する行為を禁じる。加えて、流出先の組織で業務として営業秘密の開示や使用が行われた場合に両罰規定が適用される。
罰金は5億円以下(海外法人で使用されれば10億円以下)で、警視庁はこの規定をカッパ社に適用して書類送検する方針だ。
営業秘密侵害事件で法人が刑事責任を問われた例は少ない。「転職に有利になる」など個人的な動機で犯行が行われるケースが多いからだ。
警察庁によると、17~21年に全国の警察が摘発した営業秘密侵害事件は約100件に上る。このうち、両罰規定を使って法人も書類送検されたケースは1件だった。事件の詳細は非公表とされているが「大手の企業ではない」(同庁)という。
法人の刑事責任を立証するには、役員や社員が自社の業務に関して他社の営業秘密を活用したといえるかがポイントになる。今回は商品部門で複数の幹部らにデータが共有されているうえ、自社の商品原価と比較する表も作っていたとされ、警視庁はカッパ社の業務に営業秘密が使われたと判断したもようだ。
警視庁はカッパ社を巡る捜査で、社内でのデータの共有や活用状況の把握を進めている。田辺社長や大友部長らファイルを受け取ったとされる幹部らの認識を詳しく調べ、データを活用して利益を得ようとする目的があったことを裏付ける方針だ。

2022年09月30日 日本経済新聞
[かっぱ社長逮捕 価格競争背景に、仕入れ情報が要]
回転ずし業界で価格競争が激しい
回転ずし店大手「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトの田辺公己社長が競合の「はま寿司」の営業秘密を不正に持ち出した疑いで警視庁に逮捕された。かつては業界首位だったカッパだが業界4位に低迷している。回転ずし業界は1皿100円程度が多い。食材価格が高騰するなか価格競争も激しく、仕入れ情報は収益を左右する。
一般的に外食企業のデータには、立地ごとの集客状況や食材の仕入れ情報などがある。出店戦略やメニュー開発などに有用で外食業界の核となる。中でも回転ずし業界における仕入れ情報は重みがある。
回転ずし業界は1皿100円程度が多い。価格を維持しながら集客力を高めるためには、いかに品質の高い水産食材を安く仕入れられるかが勝負となる。各社とも独自のネットワークも駆使しながら調達ルートを開拓することに注力してきた。仕入れ情報が他社に流れると、「手の内がばれてしまう」(回転ずしの関係者)。
新型コロナウイルスの感染拡大のなかでも、回転ずし業界は好調が続いてきた。すしは家族や年代を問わず人気なうえ、「出前」や持ち帰りとも相性が良い。自宅で食事を取りたいという需要も取り込み、業界1位の「スシロー」を運営するFOOD&LIFE COMPANIESは2021年9月期に大幅な増益となった。
だが、現在は回転ずし業界に逆風が吹いている。水産食材のコスト高が経営を圧迫し、スシローと2位のくら寿司は10月から値上げを実施する。スシローは郊外型の店舗で1皿の最低価格を110円から120円に、くら寿司は115円にする。2社とも原材料高や円安を背景としたコストアップが吸収しきれず、長年守り続けてきた「1皿100円」(税抜き)が終わる。
一方、業界4位に低迷するかっぱ寿司は客離れを防ぐために110円の最低価格を据え置く戦略をとった。回転ずし業界で対応が分かれ、競争が激しくなっている。
世界的に水産食材の価格が高騰しているなか、コスト上昇が経営の重荷となっており仕入れ情報の価値は高まっている。外食産業は人材の流動性も高く、「ノウハウを持つ競合会社からの転職は重宝される」(外食関係者)との指摘もあるが、ある関係者は「情報は経営の根幹。データを持ち出したらクビどころではない」と語る。

2022年09月30日 日本経済新聞
[かっぱの田辺社長 外食の幹部歴任「強引な側面も」]
逮捕されたカッパ・クリエイトの田辺公己社長(46)は大学卒業後の1998年、外食ブランド「すき家」を運営していたゼンショー(現ゼンショーホールディングス)に入社した。昇進を重ね、2009年4月に経営企画室のゼネラルマネジャーに就任した。
その後はグループが運営する外食チェーンの経営幹部を歴任する。14~17年に「はま寿司」の取締役を務め、17年にファミリーレストラン「ジョリーパスタ」の社長に就任。18年12月には別の外食チェーンの運営会社社長に就いた。
ゼンショー関係者は手腕について「ビジネスの推進力や発言力、積極性があった」としつつ「強引な側面もあった」と証言する。20年11月にライバル会社のカッパ社顧問に転じると、ゼンショー側では「古株なのになぜ」と驚きが広がったという。
外食大手コロワイド傘下のカッパ社は東証プライム上場で、全国に約300店舗(22年3月末時点)を展開する。22年3月期の連結売上高は672億円。はま寿司は約550店舗(同)で、22年3月期の連結売上高は1300億円。

2022年09月30日 日本経済新聞
[営業秘密、高まる漏洩リスク かっぱ社長逮捕]
回転ずし店「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト社長の田辺公己容疑者が30日、不正競争防止法違反の疑いで警視庁に逮捕された。転職前に在籍していた「はま寿司」の仕入れ情報を不正に持ち出した疑いがある。雇用の流動化が進むなか、同様の事件は増え、企業は営業秘密の「漏洩リスク」に直面する。海外でも機密情報の管理は厳格化の流れが強まっており、経営側と従業員側の双方で情報管理意識の徹底が急務だ。
データはすしの原材料となる魚介類の仕入れ値や取引先などがリスト化されていたとみられる。仕入れや価格戦略に直結する「手の内」で、競合先に渡ればコスト面で相手が有利になる可能性がある。
田辺社長がカッパ社に転じた2020年秋は新型コロナウイルスの影響で外食各社が苦戦を強いられていた時期に重なる。事件の背景に苦境や焦りがあった可能性があり、捜査はなぜ内部情報を持ち出したのかなど動機の解明が最大の焦点となる。
企業が秘密として管理する技術や営業の情報は「営業秘密」と呼ばれる。持ち出しが罪に問われるのは①秘密として管理されている②事業などに有用③公然と知られていない――の3要件を満たす場合だ。
警察庁によると、全国の警察が21年に検挙した営業秘密侵害事件は過去最多の23件。大手企業が絡む刑事事件は主に技術情報の流出だったが、今回のように事業に有用などの要件を満たせば営業に関する情報も刑事罰の対象となる。
営業秘密侵害の刑事罰が導入されたのは03年の不競法改正だ。以降、罰則引き上げなどの法改正を重ねてきた背景のひとつに雇用の流動化がある。
総務省の労働力調査によると、国内の転職者数は19年に過去最多の351万人を記録。転職希望者も21年に889万人で最多となった。一方で、情報処理推進機構(IPA)の20年の調査で、情報漏洩が発生したと回答した企業の漏洩ルートは「中途退職者」が36.3%で最も多く、前回の16年調査から7.7ポイント増えた。
営業秘密に対する厳格な対応は世界の潮流だ。グローバル化に伴う技術開発競争が激化し、営業秘密の保護は今や国際的な競争力に直結する。欧州連合(EU)は16年に営業秘密の保護を法制化する指令を採択。加盟国間でばらつきがあった営業秘密の定義や侵害行為の基準を定め、法整備を促した。
刑事罰を重視する米国は、経済スパイ法が営業秘密侵害を重犯罪として扱う。東京大の玉井克哉教授(知的財産法)によると、有罪となれば多くの場合、実刑判決は免れない。玉井教授は「雇用の流動性が高い米国では転職に伴う情報の流出に厳格に対処する環境が早くから整ってきた」と指摘。「日本でも会社側が対象情報を明確化し、従業員も理解を深めるなど相互にリスク管理の意識を高めていく必要がある」と話している。

2022年09月30日 日本経済新聞
[かっぱ社長を逮捕 営業秘密不正取得の疑い]
回転ずし大手「はま寿司」の営業秘密を不正に取得したなどとして、警視庁は30日、「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイト社長、田辺公己容疑者(46)ら3人を不正競争防止法違反(営業秘密領得)などの容疑で逮捕した。
競合企業の営業秘密を侵害したとして、上場企業の現職社長が逮捕されるのは異例。警視庁は持ち出された営業秘密がカッパ社内で共有、活用されたとみて法人としてのカッパ社も同法違反容疑で書類送検する方針。
田辺社長は外食最大手ゼンショーホールディングス(HD)出身で、子会社のはま寿司で取締役を務めた。2020年11月、外食大手コロワイド傘下のカッパ社顧問に転じ、副社長を経て21年2月に社長に就いた。
田辺社長の逮捕容疑はゼンショーHDに在籍していた20年9月末ごろ、はま寿司の仕入れ値などのデータファイルを外部サーバーにアップロードさせて不正に取得。カッパ社に転職後の同年11~12月に同僚に送信するなどして開示・使用した疑い。
不正競争防止法は企業の営業秘密を不正に取得する行為などを禁じる。不正な利益を得る目的で違反した場合、懲役10年以下か罰金2千万円以下、またはその併科と規定。法人への両罰規定もある。
カッパ社は東証プライム上場で、全国に約300店を展開している。22年3月期の連結売上高は672億円。
警視庁は21年6月にカッパ本社など関係先を家宅捜索し捜査を進めていた。
カッパ社は30日、田辺社長らの逮捕を受けて「多大なご迷惑とご心配をおかけし深くおわび申し上げる。捜査に全面的に協力していく」とのコメントを公表した。

2022年09月30日 読売新聞オンライン
[かっぱ社長 田辺公己容疑者(46)逮捕 不正競争防止法違反容疑]
すし原価など「秘密データ」部下使い外部送信…かっぱ寿司社長、持ち出し疑念避ける目的か
回転ずし大手「はま寿司」の営業秘密とされるデータが同業の「かっぱ寿司」に漏出した事件で、かっぱ寿司を運営する「カッパ・クリエイト」社長の田辺公己容疑者(46)(不正競争防止法違反容疑で逮捕)が、部下に指示してデータを外部サーバーに送らせていたことが捜査関係者への取材でわかった。警視庁は、退職時のデータ持ち出しを疑われぬよう部下を使った可能性があるとみている。
捜査関係者によると、田辺容疑者は、はま寿司の取締役などを経て親会社「ゼンショーホールディングス」の幹部をしていた2020年9月中旬~下旬、ゼンショーに退職を申告した。その後の同30日頃、当時の部下に指示し、すしの原価などに関する営業秘密のデータを外部のサーバーに送信させていた。
データは社内で閲覧制限がかけられていたが、田辺容疑者には接続権限が付与されていた。指示を受けて送信した部下には、かっぱ寿司側に不正に漏出させるという意識はなかったという。
だが、田辺容疑者は同11月1日付でカッパ社の顧問に転じ、その後、入手したデータをカッパ社幹部に提供していたという。
データは二つのファイルで、すしの原価のほか、食材の種類、ネタとして使う魚介類の仕入れ値などに関する情報が入っていた。カッパ社はこのデータをもとに、はま寿司と自社の商品原価などを比較する表を作成し、経営幹部らの間で共有していた。警視庁は、カッパ社側が不正に入手したデータをメニュー開発や価格設定の参考にしていたとみている。