グループ化補助金1億3000万円不正受給 石巻の水産会社
2013.11.14 河北新報
加工設備の整備をめぐり、補助金不正受給の疑いが浮上した工場=登米市豊里町
宮城県は13日、石巻市の水産加工会社シンコーが、東日本大震災の被災企業を支援する国の「グループ化補助金」約1億3000万円を不正に受給したとして、交付決定を取り消して返還を命じたと発表した。同日までに補助金適正化法違反の疑いで、同社と丹野耕太郎社長を石巻署に告訴した。グループ化補助金の不正受給が発覚したのは全国で初めて。
県によると、シンコーは登米市豊里町に新設した豊里工場で、加工設備が納品されていないのに、取引先のメーカーに設備代約1億8000万円を支払ったように装い、補助金を不正に受け取った疑いが持たれている。
昨年12月、工事完了を確認するため県が実施した現地調査で、シンコーは設備メーカーに設備代金を支払ったとする通帳や納品書を提示したが、偽装や偽造があった可能性が高いという。
県によると、調査時点で工場に加工設備はなく、シンコーは「別の場所に保管している」などと説明し、設備の写真を提出した。加工設備はことし1月に納品されたが、現在もシンコーから代金が支払われていない。
ことし6月に匿名の情報が県に寄せられ発覚した。県新産業振興課は「復興のため国民にいろいろな負担をしてもらっている中であり、極めて残念だ」と話した。
丹野社長は取材に対し「不正受給をしていたという認識はなかった。仮に間違いがあったとすれば、責任は取らなければならない」と説明した。
シンコーは津波で石巻市の主力工場が被災し、旧豊里小跡地を登米市から取得して工場を新設した。グループ化補助金は「石巻水産業復興グループ」(199社)に参加して申請。2011年12月に11億325万円の交付決定を受け、12年6月と13年1月に計約7億900万円を受給した。
◎「被災企業の信頼低下も」/地元商工関係者、不安の声
多くの事業者がグループ化補助金を活用する石巻市では、被災企業全体のイメージ低下などを不安視する声が上がった。
国のグループ化補助金は、事業再建に向けてグループ化した企業に対して再建費用の最大4分の3を助成する。
石巻市では2011年12月、石巻商工会議所を取りまとめ役に水産加工業者約200社がグループを組んで申請し、補助金交付の決定を受けた。他の被災地に先駆けてまとまった受給にこぎ着け「先行例」と言われた。
商工関係者は「工場を再建しても震災で失われた販路の回復など本格的な再建はこれから。頑張っている他の企業にマイナスにならなければいいが」と心配する。
グループ化補助金で工場を再建した水産加工業者は「建設工事の人件費や資材費の高騰で見積もり段階より費用が増え、持ち出しが増えた企業がほとんど」と説明。「今後、補助金の審査が厳しくなる可能性もある」と影響を懸念する。
シンコーと工場の立地協定を結び、市有地を用地として売却した登米市の藤井敏和副市長は「市内で大規模な水産加工業者の立地は初めてで、期待感は大きかった。早期に信頼回復を図ってもらいたい」と話した。
被災企業の内陸移転続々(2013年4月9日 読売新聞)
震災後、登米市に建設されたシンコーの新工場
登米市の三陸自動車道・桃生豊里インターチェンジ近くの高台にある小学校跡地で、水産加工場の建設が急ピッチで進む。約1ヘクタールの真新しい工場は、石巻市の水産加工会社「シンコー」が震災後に建設を始めた。5月末の稼働を目指す。
石巻市渡波にあった本社工場は津波に襲われ、1階天井まで浸水した。生産設備の9割以上が流され、被害総額は約6億円に上った。「いつ津波が来るかも分からない。ここでは再開できない」と丹野耕太郎社長(63)。
建設業者の紹介で、移転して24億円かけて新工場を建設することを決めた。「内陸に進出して批判も受けたが、人口も内陸に移っているのが現実。国には現地再建より、内陸の開発に力を入れてほしい」と訴える。
震災で被害の少なかった登米市には、隣接する石巻市や南三陸町から水産加工、電子部品など被災企業8社の進出が決まっている。内陸の登米市に水産関連の企業が進出するのは、震災前には無かったことだ。市新産業対策室は「これだけのペースで進出するとは」と驚きを隠さない。
被災企業の内陸移転が相次いでいるのは、津波の危険性がある地域を避けただけではない。沿岸部での現地再建には時間がかかり、遅れによって競合相手に市場占有率を奪われることへの不安もある。
こうした動きを受け、登米市の企業誘致には、沿岸部への意識がにじみ出る。布施孝尚市長は2月の施政方針演説で、「ハブ(拠点)都市としての役割を担える」と述べ、産業面で県北沿岸部と内陸部をつなぐ役割の強化を打ち出している。
一方、石巻市は企業流出対策として、2014年度末までに内陸部に20ヘクタール規模の産業団地を建設する独自の施策を打ち出した。市内21か所の候補から建設先を選定中だ。
市が昨夏に行った被災企業627社を対象にした今後の企業活動に関するアンケート調査で、食品加工、機械製造など比較的大規模の8社から、津波被害のない内陸部への明確な移転希望が寄せられたためだ。他にも現地再建した企業を除く100社が元の場所からの移転を希望している。市は今後詳しい調査を行い、内陸への移転希望の有無に応じて造成面積を増やす。
市産業推進課は「産業用地の確保が遅れれば、企業の市外流出につながりかねない」と危機感を募らせる。
一日も早い再建を目指す被災企業の焦りに、立地自治体がどう応えるのか。自治体間の綱引きは激しくなりそうだ。
第31回宮城県水産加工品品評会受賞品
宮城県知事賞
めかぶ美人(株式会社シンコー)
株式会社シンコー豊里工場
電話
0225-98-8918
住所
宮城県登米市豊里町蕪木67-3
水産加工(冷凍魚切り身加工)、水産品輸出入
株式会社シンコー TEL. 0225-24-3245
切り身魚(タラ、カレイ、金目鯛等)・貝類(カキ、アサリ等)を主力製品とする水産加工業者 主要得意先は外食産業、生協、経済連で、仕入面は有数の漁港である地元の利を生かしながら、着実な業容拡大を図っている
〒986-2135 宮城県石巻市渡波字下榎壇84−3
[TEL]
0225-24-3245
[FAX]
0225-24-3247
[設立年月]
1987/08
[資本金]
131百万円
[従業員数]
51名
[事業内容]
水産加工(冷凍魚切り身加工)、水産品輸出入