花冠同人・多田有花の俳句ブログ

日々の俳句の備忘録

小満

2012年05月21日 | Weblog
はつ夏の子らに楽しき列車の風
親燕飛び交う下を溝浚え
金環食小満の朝空に

小満の野に咲き初めし姫萱草
竹皮を脱いで現る新しさ

蛇苺

2012年05月20日 | Weblog
単線が青葉若葉を走り来る
草刈の音の遠くで蛇苺
短夜や夢のなかより鳥の声

ジャーマンアイリスドレスのごとき襞を持ち
椎の花開山堂を取り巻いて

竹落葉

2012年05月19日 | Weblog
竹落葉散り敷く道に降る日差し
頂の主(ぬし)としてあり豹紋蝶
石段の常盤木落葉清められ

キショウブの色は注意信号の色
続々と睡蓮開く風の午後

青条揚羽

2012年05月18日 | Weblog
青条揚羽はばたきながら蜜を吸い
皮を脱ぐ竹の青さに触れてみる
歩み入る椎の花咲く香の中へ

河骨の下に広がる水の紋
寄り添うもまたよしドイツあやめかな

浮葉

2012年05月17日 | Weblog
夏草へ倒れし歌碑に蝶とまる
とりとめのなき考えも浮葉かな
夏の池王のごとくにやんまゆく

市川や若葉の山より流れ来る
はつなつの花を活けたる料理店

薫風

2012年05月16日 | Weblog
薫風に洗いしものを高く干す
古き木戸カラーの襟を際立てる
黄菖蒲を平たくしたり午後の風

白緑のつつじが開く薄暑光
芍薬や道ゆく人に揺れており

薄暑

2012年05月15日 | Weblog
窓開けて南へ走る薄暑かな
人を待つフロントガラスの若葉雨
かなぶんのぴたり身を寄す花の芯

集まりて寂しき光春紫苑
あやめ咲き初む境内の静けさに

若葉

2012年05月14日 | Weblog
豆苗は夏の光の来る方へ
一瞬の影のみ残し夏の蝶
尺八が若葉の寺に響きおり

鋭角を解きつつ薔薇の開き初む
ジャーマンアイリス虹色を身に集め

銀龍草

2012年05月13日 | Weblog
優嵐スケッチブック


葉桜が影なす小道歩きけり
しらしらと影を持たずに銀龍草
頂に揚羽の乱舞を見ておりぬ

夏菊や周りはきれいに草刈られ
じゃがいもの花に残りしうすむらさき

若葉寒

2012年05月12日 | Weblog
寝具一枚出して眠りし若葉寒
椎の花山を黄金に彩りぬ
春紫苑五月の風に揺れており

芍薬の秘めたる色や花の芯
新緑の彼方に六甲山高し